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硝子戸の中 の商品レビュー

4.1

97件のお客様レビュー

  1. 5つ

    29

  2. 4つ

    38

  3. 3つ

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「不愉快に充ちた人生…

「不愉快に充ちた人生をとぼとぼ辿りつつある」漱石が、硝子戸の中から静かに世間を眺めて綴った随筆集。落ち着いた美しい文章で、しみじみします。

文庫OFF

漱石晩年の随筆ですが…

漱石晩年の随筆ですが、則天去私の真情に達した静かで穏やかな日々の暮らしが綴られます。

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 画家は眼と頭脳を鍛…

 画家は眼と頭脳を鍛えなければならないとセザンヌは言った。セザンヌのいう頭脳とは表現手段における論理を意味している。では作家における眼とは何か。身体の一つの器官でそれを表すには適当なものはないが、人間関係や普段の出来事を捕えるその力であることは間違いあるまい。本書はエッセイである...

 画家は眼と頭脳を鍛えなければならないとセザンヌは言った。セザンヌのいう頭脳とは表現手段における論理を意味している。では作家における眼とは何か。身体の一つの器官でそれを表すには適当なものはないが、人間関係や普段の出来事を捕えるその力であることは間違いあるまい。本書はエッセイであるから小説に比べれば漱石のそういった力を伺い知ることができる。もちろん巧みな文章もユーモアも健在である。手元においてたまに読みたい。そんな本である。いつかまた私の視線にこの本が入ってきたら、読み直してみようと思っている。

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体を弱くし自宅の硝子…

体を弱くし自宅の硝子戸の中にて平静に暮らす漱石が周囲に起きた出来事を随想する。写真のこと、犬のこと、寄席のこと、床屋のこと、泥棒のこと、病のこと、人との付き合いのことなど。漱石の思想を感じることのできる一冊。

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晩年の随筆。筆者はこ…

晩年の随筆。筆者はこれを執筆していたころ、長く病に苦しめられていた状態にあって、心が弱っていたためか、死が絡んでくる話題が多い

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当たり前のことなんで…

当たり前のことなんですが、ああこの人は実在の人物なんだよなと改めて実感した1冊でした。この時代の文体というか、会話の言い回しなんかが好きです。

文庫OFF

2023/11/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「私の罪は、もしそれを罪と云い得るならば、頗る明るい処からばかり写されていただろう。其処に或る人は一種の不快を感ずるかも知れない。然し私自身は今その不快の上に跨って、一般の人類をひろく見渡しながら微笑しているのである。今までつまらない事を書いた自分をも、同じ眼で見渡して、あたかもそれが他人であったかの感を抱きつつ、矢張り微笑しているのである。」

Posted byブクログ

2023/10/29

つい先日のことですが、知人を駅まで送った折に、駅ビルの本屋さんに立ち寄り……決して懐の寂しさを隠すためではなく……「ワンコイン一本勝負」として500円玉を握りしめて本棚の海を回遊しました……狙い目としては小説の文庫本ですね……流行りの作家や作品に関しては例え小品でも税込500円を...

つい先日のことですが、知人を駅まで送った折に、駅ビルの本屋さんに立ち寄り……決して懐の寂しさを隠すためではなく……「ワンコイン一本勝負」として500円玉を握りしめて本棚の海を回遊しました……狙い目としては小説の文庫本ですね……流行りの作家や作品に関しては例え小品でも税込500円を切るものを探すのは難しいと思ったので、新潮文庫の棚で古めの作品を探したのですが、これがなかなか難しい。詩歌や戯曲を読む気分ではないなぁなどと勝手なことを独りごちながら、本の厚みを目安に探して最終的に手に取ったのが本体価格340円(税別)の『硝子戸の中』(夏目漱石著/石原千秋解説/カバー装画:安野光雅/新潮文庫)でした。今、寝落ち本の中の一冊として枕元に置いてあるのですが、「寝る間際にちょっとだけ読む」のにちょうどよい内容ですね。一編一編が短い文章の随筆で、騒がず慌てず、ちょっとだけおかしく、ちょっとだけ妙で、ちょっとだけ侘しく。普段の暮らしの中のリアルというものは、こういった「際立った"オチ"のある筈のないもの」でしょう。とてもいい。

Posted byブクログ

2023/11/18

 お彼岸も近くなり、なんか漱石が読みたくなり手にした随筆。一つが約3ページの39篇から成る作品。大正時代前期に書かれた文豪のブログを読んでいるよう。さすがに今は見慣れない単語が多いです。  12、13の失礼な男の話が秀逸。些細な事を気にしては悩み、胃潰瘍になり、それらを紛らわすか...

 お彼岸も近くなり、なんか漱石が読みたくなり手にした随筆。一つが約3ページの39篇から成る作品。大正時代前期に書かれた文豪のブログを読んでいるよう。さすがに今は見慣れない単語が多いです。  12、13の失礼な男の話が秀逸。些細な事を気にしては悩み、胃潰瘍になり、それらを紛らわすかのように小説を書いた漱石。まだ読んでいない小説を読みたくなりました。  「ある程の 菊投げ入れよ 棺の中」 この句が大塚楠緒に詠んだことも初めて知りました。安野光雅のカバーも素敵です。

Posted byブクログ

2023/09/09

「死は生よりも尊(たっ)とい」p23 晩年、漱石先生が辿り着いた死生観だそうです。 しかし、人に対しては 「もし生きているのが苦痛なら死んだら好いでしょう」と助言ができない自分をもどかしくも思っている。そうして 「もし世の中に全知全能の神があるならば、(中略)私をこの苦悶から解...

「死は生よりも尊(たっ)とい」p23 晩年、漱石先生が辿り着いた死生観だそうです。 しかし、人に対しては 「もし生きているのが苦痛なら死んだら好いでしょう」と助言ができない自分をもどかしくも思っている。そうして 「もし世の中に全知全能の神があるならば、(中略)私をこの苦悶から解脱せしめん事を祈る」ほど苦しんでいる。p97 これは本当にただの随想集なのでしょうか??  **** 読んでいる間ずっと『こころ』の続編?!という思いを禁じ得ませんでした。(本作は『こころ』の後に書かれたそうです) 「不安で、不透明で、不愉快に充ちている。もしそれが生涯つづくとするならば、人間とはどんなに不幸なものだろう」p98 漱石=〈先生〉が硝子戸の中から見つめていたのは、電信柱でも社会でも他者でもなく、紛れもない自分の「こころ」だったのかもしれません。 本書は『こころ』のアナザーストーリーとしても読めるでしょう。

Posted byブクログ