眠れる美女 の商品レビュー
【眠れる美女】 よくもこんなストーリーを考えられたものだと思う。川端康成は相当偏屈な変態ではないか。 しかし最後の三島由紀夫の解説にもあるように、状況描写だけで動きや質感、匂い、艶かしさ、生命力をありありと表現できるその力には圧倒される。 老いると若い女の生命力を欲しがるのか。そ...
【眠れる美女】 よくもこんなストーリーを考えられたものだと思う。川端康成は相当偏屈な変態ではないか。 しかし最後の三島由紀夫の解説にもあるように、状況描写だけで動きや質感、匂い、艶かしさ、生命力をありありと表現できるその力には圧倒される。 老いると若い女の生命力を欲しがるのか。そんなに若さが輝かしく見えるのか。色々考えさせられた。 【片腕】 これも川端康成の変態っぷりと表現力がすごい。言葉遣いの上手さを改めて感じるが、ストーリーの変態性が強すぎて、そっちに意識が持っていかれる(笑) 【散りぬるを】 ほぼ同じ内容がずっと繰り返されており、途中から流し読みしてしまった。かなりの文学マニア向けの話かな。
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短編集でした。 1.「眠れる美女」 2. 「片腕」 3. 「散りぬるを」 どれも、共感できるというより、世にも奇妙な話という感じでした。 表現が生々しいので苦手な方もいると思います。
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現実にありそうであり得ない際どい状況設定とミステリーな展開、自らの老いを受け入れることができず悪あがきする老人の思考·行動描写、いずれも秀逸でした。
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瑞々しい生の象徴である、眠れる美女を前に、男としてはほぼ終わっている老人が、その最後の走馬灯を投影する。最後の結末で突然展開が変わるが、それは生への執着なのか、何なのか、感じるのは難しい作品
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『眠れる美女』 江口の醜態、悪への欲求に理解が及ばなかった。というより、理解してはいけないという直感が働いた。「眠れる美女」から思い出す江口の過去、それが匂いや色を媒介とし、何とも生々しく表現されていることに、更なる不快感を覚えながら読み進めることとなった。何とも恐ろしい老人であ...
『眠れる美女』 江口の醜態、悪への欲求に理解が及ばなかった。というより、理解してはいけないという直感が働いた。「眠れる美女」から思い出す江口の過去、それが匂いや色を媒介とし、何とも生々しく表現されていることに、更なる不快感を覚えながら読み進めることとなった。何とも恐ろしい老人であり、異質な世界であった。 他2作も主人公が何がしたいのか全く分からず、不思議な本を読んだ感覚になった。どの作品も色や匂いの表現が多彩であり、理解はできないが少し想像はできてしまう、その川端康成の異質な頭の中をほんの一部見ることができた。
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「娘の腕から江口の目ぶたの奥に伝わって来るのは、生の交流、生の旋律、生の誘惑、そして老人には生の回復である。」 「してみれば『眠れる美女』は仏のようなものではないか。」 生命に溢れ『命そのもの』、『眠るように死んだ』黒い女こそ『眠れる秘仏』ではないのか
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老人が隠れて利用する秘密のくらぶは、薬で眠る美少女と同衾するもの(ただし本当に、寝るだけ)である。三島由紀夫の称賛する「デカダンス」は読み進めるにつれて立ち現れてくるが、最初の方は「なんだこのド変態小説は…」と驚いた。 この中編は、ほとんどが裸で眠る少女の肉体のパーツに関する描写...
老人が隠れて利用する秘密のくらぶは、薬で眠る美少女と同衾するもの(ただし本当に、寝るだけ)である。三島由紀夫の称賛する「デカダンス」は読み進めるにつれて立ち現れてくるが、最初の方は「なんだこのド変態小説は…」と驚いた。 この中編は、ほとんどが裸で眠る少女の肉体のパーツに関する描写と、そこから想起される老人の過去の女性との記憶から成る。生を謳歌する年齢の少女が死んだように眠る一方で、老人は、自らは未だ現役であると語りつつも死につながる老いの気配が色濃い。この対比は奇妙な均衡状態と言ってよく、生身の少女が眠っているという状態でのみ意味をなし、人形や死体では「老い」の方が勝ってしまうように思う。だからこそ、その均衡が崩れた最終章、少女がモノとして扱われた時の、老人側の退廃とどうしようもなさが強烈な読後感を残した。
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初めて読んだ川端康成の小説が、この『眠れる美女』だったのか『山の音』だったのかが定かではない。ただ、好きな小説だった。一緒に収録されている「片腕」もよかった。
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低俗な卑猥さは一切感じられなかった。川端は本当に〝女性の美しさ〟を知っている。傍らの眠れる美女の体温、匂いに主人公の過去と現在が悲哀さを誘う。 『山の音』もそうだが、本作も再読に値する。購入して良かった。 読了は2023.12.22。
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目次 ・眠れる美女 ・片腕 ・散りぬるを 読む前に耳にした話では「気持ち悪い」というような話を聞いていたのだけど、実際に読んでみたらちょっと違った。 確かに気持ち悪くは、ある。 全裸で眠っているうら若い美女に添い寝するだけの高齢男性。 金にあかせて、若い美女を貸し切って添い寝...
目次 ・眠れる美女 ・片腕 ・散りぬるを 読む前に耳にした話では「気持ち悪い」というような話を聞いていたのだけど、実際に読んでみたらちょっと違った。 確かに気持ち悪くは、ある。 全裸で眠っているうら若い美女に添い寝するだけの高齢男性。 金にあかせて、若い美女を貸し切って添い寝するだけっていうのは。確かに気持ち悪い。 相手は意識がないのに、こちらだけ冷静に観察できる。 それは気持ち悪いというよりも、生理的に無理。 しかし、江口老人なる語り手は、まだ67歳なのだ。 たった67歳で老人扱いされる江口。 たった67歳で老人の自覚を持つ江口。 これは一体どういうことなのか。 性的にままならないのが67歳ということらしいが、そのほかに社会的存在であるとか、精神的な円熟味とか、何かポジティブな感触がなかったのだろうか。 けれども『眠れる美女』しかり、『片腕』しかり、老いていく自分と若い娘たちとの対比が、この時期の川端康成のテーマだったのかもしれない。 今から50年ほど昔の話。 今なら67歳で人生の終わりと考える人はあまりいないのではないかと思われる。
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