門 の商品レビュー
この作品は、『それから』のそれからといった感じで、代助夫婦を、宗助夫婦に置き換えて、その顛末を描いたような作品である。俗世の人間を厭い、婦人にさえも信を置けない宗助は、苦悩の末山奥の禅寺へ入門するが「我」を捨てることを躊躇い、山を下って元の生活に戻るという話しだ。僕は話しの筋より...
この作品は、『それから』のそれからといった感じで、代助夫婦を、宗助夫婦に置き換えて、その顛末を描いたような作品である。俗世の人間を厭い、婦人にさえも信を置けない宗助は、苦悩の末山奥の禅寺へ入門するが「我」を捨てることを躊躇い、山を下って元の生活に戻るという話しだ。僕は話しの筋よりも、冒頭から70ページぐらいまで続く宗助夫婦の生活描写に魅了された。これが抜群に上手い! 崖の上で世を忍ぶように生活する夫婦の姿が、小じんまりとしているがさもしくなく、二人が住まう静謐した空気とゆるりとした時間が、作品内に絶妙に息づいている。素晴らしい!これだよ、これ!! 後日、吉本隆明さんの『漱石を読む』を本屋で読んでいたら、吉本さんも同じ箇所を絶賛しておられた。小説を読んで、同じ箇所で心が動いたことが、何とも嬉しい。
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前期三部作と言われる三作の中では世間的評価が最も低いかもしれないが、それはこの作品が恋愛成就後の現実を描くからだろう。 二人は共犯者としての過去を共有するが、その罪をそれぞれに見つめた結果、ある意味最も遠い存在同士になってしまう。 それでも人生は容赦なく回り続けるため、その現実を...
前期三部作と言われる三作の中では世間的評価が最も低いかもしれないが、それはこの作品が恋愛成就後の現実を描くからだろう。 二人は共犯者としての過去を共有するが、その罪をそれぞれに見つめた結果、ある意味最も遠い存在同士になってしまう。 それでも人生は容赦なく回り続けるため、その現実を受け入れ、慣らされていく(そして時に過去に慄く)。 この作品は決して諦めを描いているのではなく、生きるということの本質を抉りだそうと漱石がもがいているのだと思う。
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深すぎて私ごときには全く理解できませんでした。というかそれこそ、この作品を真に理解すること=悟りを得ること、なんじゃないだろうか。とすると私のような俗な人間じゃ到底無理だー・・・。
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『三四郎』『それから』に続く、前期三部作最後の作品。親友であった安井を裏切って、その妻である御米と結婚した宗助が、罪悪感から救いを求める様を描く。
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