本泥棒 の商品レビュー
翻訳の文章に慣れることが出来ず、なかなか物語の世界へ入れなかった。翻訳のせいと言うよりも、元の文章がこんな感じだったのだろう。
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わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情を...
わたしは死神。自己紹介はさして必要ではない。好むと好まざるとにかかわらず、いつの日か、あなたの魂はわたしの腕にゆだねられることになるのだから。これからあなたに聞かせる話は、ナチス政権下のドイツの小さな町に暮らす少女リーゼルの物語だ。彼女は一風変わった里親と暮らし、隣の少年と友情をはぐくみ、匿ったユダヤ人青年と心を通わせることになる。リーゼルが抵抗できないもの、それは書物の魅力だった。墓地で、焚書の山から、町長の書斎から、リーゼルは書物を盗み、書物をよりどころとして自身の世界を変えていくのだった…。『アンネの日記』+『スローターハウス5』と評され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなどで異例のベストセラーを記録した、新たな物語文学の傑作。
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この作品を手にしたのは二〇一八年一二月の暮れ、ネットで本を物色していた時、面白そうなタイトルがヒットしたので購入した。当時読んでいたのはマリアVスナイダーの『毒見師イレーナ』だった。 実際に頁を開いて少しだけ読んで内容を確認し本を閉じた。 何だか魅力的な本の予感がして、取り敢え...
この作品を手にしたのは二〇一八年一二月の暮れ、ネットで本を物色していた時、面白そうなタイトルがヒットしたので購入した。当時読んでいたのはマリアVスナイダーの『毒見師イレーナ』だった。 実際に頁を開いて少しだけ読んで内容を確認し本を閉じた。 何だか魅力的な本の予感がして、取り敢えず本棚に入れた。他にも読みたい本が満載していたにもかかわらず、にんまりと所有することが出来た喜びに心が弾んだ。その後、ずいぶん積読になっていたのは、自宅の建替えのため、仮住居に居たから、本が行方不明になっていたのです。理由はともあれ、今頃になって読了することが出来た喜びは一入です。 物語は第一次世界大戦、ヒトラー政権下のドイツで、イギリス・フランスが宣戦布告、強硬路線でドイツの政治を掌握し押進め、国民の九割がナチ党を指示していたと本書に書いていたが本当にそうなのかは不明だと思う。彼は、反共産主義と反ユダヤ主義を主張していたのだ。 冒頭語り部は、死神であることを明かしておもしろい設定だ。その時代の小説なら、なんとなく作品の雰囲気が読めた。しかし、さらっとネット上を検索してみると「泣ける小説」「悲しい小説」というカテゴリーに入っていたように思うが、その手の作品なら途中で頁を閉じる覚悟はありました。 読了後、前述した「泣ける小説・悲しい…」云々のカテゴリーから外して頂きたいと思う。心に「悲しい」より「苦しい」という思いが伸し掛かったからだ。本当に悲痛な惨状を目の当たりにした時に、泣けるかというと、泣ける方もいらっしゃるが、僕は絶句しました。 著者の両親はドイツとオーストリアからオーストラリアに移住し、幼い頃から大戦の話を聞かされていたが、本人はヤングアダルト向けの小説家である。図書の分類で、児童書と一般書の中間にあるものだそうです。 前置きが長くなりましたが、本題に入ります。主人公は、九歳の女の子リーゼル・メミンガーと弟のはずだった。父は行方不明、母は共産主義者で、里子に出され移動中の列車の中、弟のヴェルナーが目を開いたまま鼻から血を流し死んだ。途中下車して弟を葬った。その時に拾った本が、一番目に盗んだ本です。そして里親に引き取られることになる。 里親の母は、ローザといい口汚く罵る癖があるけれど本当は優しい母である。父はハンス・フーバーマン、目は銀色、ちょっとおちゃめな性格。本業は、煙草が好きなペンキ屋でアコーディオンを演奏できる愛すべき人だった。 リーゼルは、なかなか家庭には慣れなかったが、初日の夜から就寝中の午前二時頃、うなされおねしょをして目が覚めた。ハンスは静かにリーゼルの寝室に行き、ベッドに座って泣いていた横に座り肩を優しく抱き、気が済むまで慰め色々な話をしたのです。やがて心を開き父さんを頼るようになります。ハンスはリーゼルが本を抱いて寝ていたのに気づき、タイトルを見て驚きます。『墓掘り人の手引書』だった。 リーゼルにタイトルを見せて何と書いているのか知っているかと問うたが知らなかった。彼女は、字が読めないし書くことも出来ない。リーゼルにとってこの本は、弟の形見として持っていただけで、その本に弟の写真を挟んでいたのだ。学校に通うようになり、自宅の隣に住むルディ・シュタイナーという男の子と友達になったが、学校での自己紹介で先生から自分の名前を黒板に書くように言われ、書くことが出来なかったため多くの生徒に虐められた。 ある夜リーゼルは、この本に何が書いているのと聞いた。ハンスは、「お父さんも、あまり得意じゃない」と言い、一緒にこの本を読もうと提案して二人三脚で勉強しハンスは、地下室に勉強部屋を作り、壁にペンキを塗り字が書き込めるようにしてアルファベットの暗唱から始めたのです。リーゼルの実力は、メキメキと向上し次第に本の言葉を覚えることに魅力を感じ大好きになります。ルディとは親友になりました。それからの里親との関係や、子供達とのエピソードは、決して陰気な話ではありません。寧ろ戦時下という状況にありながら子供達は、毎日を楽しく懸命に生きている様子は微笑ましく感じます。リーゼルの平凡な日常が煌めいてさえいるのです。ただ最終の章は悲惨、死神は非情だが、心ある語りをしているのは救いがある。 物語の後半に効いてくる言葉は、「ルディはリーゼルに警告した。『リーゼル、いつかお前は死ぬほどおれにキスしたいと思うようになるからな!』」でしょうか。 実におもしろい。
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少女が本泥棒をするというストーリーに魅力を感じた。 ナチス政権下のドイツを舞台にして決して悲劇から免れはしないものの、物語は悲惨さや閉塞感を追うよりも、いつの時代にあっても冒険や楽しみや幸せを探し求める子供達の溌剌さや、主人公リーゼルと彼女に常に寄り添ってくれて一番の味方でもある...
少女が本泥棒をするというストーリーに魅力を感じた。 ナチス政権下のドイツを舞台にして決して悲劇から免れはしないものの、物語は悲惨さや閉塞感を追うよりも、いつの時代にあっても冒険や楽しみや幸せを探し求める子供達の溌剌さや、主人公リーゼルと彼女に常に寄り添ってくれて一番の味方でもあるハンス、始終文句と悪口が口を突いて出るローザの里親夫妻、愛すべき相棒となる男の子ルディ、フーバーマン家が匿うユダヤ人の青年マックス等、彼女を取り巻く人達との品位こそ欠けるものの温もりある交流といったものが、生き生きと描かれている。 リーゼルが盗む何冊もの本、マックスがリーゼルに贈った手作りの本、ヒトラー『我が闘争』、リーゼルが書いた『本泥棒』―小説に登場する本達。手に入れた一冊の本を読みたいという思いから文字を覚え、本を読むことの愉しさ喜びを知り、時に本泥棒をしてしまいながらも本に魅了され、或いはマックスの手作りの本が彼の想いを伝えてきてくれた筈なのに、現実への怒りと悲しみから本をびりびりに破り捨て「言葉なんて何の役に立つの?」と問いかけずにいられないリーゼル。本そして言葉に対する感慨を与えてもくれる小説。
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※このレビューにはネタバレを含みます
語り手が異色だ。人格化された「死」、死神なのだ。死神は人の魂を運び去るという己の務めに倦みつつ、世界の時々刻々を彩る印象的な色の数々に心慰めている。色の他にも死神の気を晴らしてくれるいくつかの物語がある。そのひとつとして、 「本泥棒」だった一人の少女の話が語られる。それは白・黒・赤の三色に象徴される物語だ。 舞台はナチ政権下のドイツ。「本泥棒」の名前はリーゼルという。彼女は弟と一緒に里子に出されるが、途上で弟が亡くなる。 墓地に落ちていた本をリーゼルは拾い、自分のものにする。それは家族を思い出すためのよすがだった。里親の「父さん」ハンス・フーバーマンに読み書きを習い、リーゼルは言葉への扉を開かれる。彼女は憑かれたように本を求め始める。時には盗んででも。死神は、リーゼルと彼女を取り巻く人間たちを温かく描き出す。溌剌とした親友ルディ。怖いが根は優しい「母さん」ローザ。フーバーマン家に匿われるユダヤ人マックスとリーゼルの共鳴、いつも悲しげな町長夫人との友情。登場人物はみな魅力的だが、中でもリーゼルを心底慈しむ「父さん」ハンスが素晴らしい。音楽と煙草を愛し、約束を必ず守る、著者の人間賛歌が結晶したような人物。彼の目に湛えられた「とろけるようなやわらかい銀」は読む者すべての心に残るだろう。 白・黒・赤はナチスの党旗の色であると同時に、リーゼルの弟が眠る墓地を包む雪、鉤十字の署名、人々が絨毯爆撃に曝された日の空の色でもある。赤い色の空の日の件では、溢れる涙を禁じえない。 段落の合間には多くの断章が挿入され、登場人物の運命について種明かししてしまうことも。物語の筋が分断されるように思えるが、それらは語り手の性質を反映した、シニカルながら優しい配慮のある予備知識なのだ。 人情味溢れるこの死神、世間一般に知られる「大鎌を持った髑髏の姿」はしていない。その姿についてのヒントは作品中にわかりやすく記されている。 著者は一九七五年生まれ。ナチス政権下に生きていたわけではない。戦後世代が想像力と資料を基に戦禍を描いた作品としては、こうの史代の漫画『夕凪の街 桜の国』が記憶に新しい。こうした書き手と、読み手の想像力がひとつになったとき、真の戦争抑止力が生まれるのだろう。
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ヤングアダルト作家らしく、少女と少年の恋にも似た交流はよく書けてる。ユダヤ人を匿う庶民の話。アンネの日記に出てくる八百屋さんみたい。映画は観ていないけど、死神は出てくるのかな。リーゼルの母親が子供を手放した理由は、父親がコミュニストだったから?本好きの子が主人公の物語で、主人公が...
ヤングアダルト作家らしく、少女と少年の恋にも似た交流はよく書けてる。ユダヤ人を匿う庶民の話。アンネの日記に出てくる八百屋さんみたい。映画は観ていないけど、死神は出てくるのかな。リーゼルの母親が子供を手放した理由は、父親がコミュニストだったから?本好きの子が主人公の物語で、主人公が字を覚えるところから始めるのは珍しい。本作で描かれるナチスとそれに傾倒する民衆は、現在日本の様相とよく似ている。
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図書館で。 書店主フィクリーに出てきて泣ける感動モノなのかなぁと思って借りてみたのですが合わなかったみたいです。章の冒頭にある、詩みたいな文章とヒロインの性格がダメだった模様。 あの時代に生きている割には少女の性格が今どきっぽいなぁと思ったからか、本題に入る前に飽きてしまいました...
図書館で。 書店主フィクリーに出てきて泣ける感動モノなのかなぁと思って借りてみたのですが合わなかったみたいです。章の冒頭にある、詩みたいな文章とヒロインの性格がダメだった模様。 あの時代に生きている割には少女の性格が今どきっぽいなぁと思ったからか、本題に入る前に飽きてしまいました。養父母は赤毛のアンのマシューとマリラみたいだなぁなんて思いました。
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談話室で泣ける本として紹介されていたので気になって読みました。 第二次世界大戦中、ナチス政権下のドイツに生きる「本泥棒」の少女リーゼルが、色々な人と関わりながらも成長していく様子がゆっくりと丁寧に綴られる。その幸せな生活の裏にじわじわと忍び寄る戦争の影。700ページ弱のボリューム...
談話室で泣ける本として紹介されていたので気になって読みました。 第二次世界大戦中、ナチス政権下のドイツに生きる「本泥棒」の少女リーゼルが、色々な人と関わりながらも成長していく様子がゆっくりと丁寧に綴られる。その幸せな生活の裏にじわじわと忍び寄る戦争の影。700ページ弱のボリュームで、ちょっとした大河ドラマを見たような気分です。 この物語の語り手は、死んだ人の魂を天に送り届ける「死神」なのですが、この死神が妙に人間味のあるキャラクターで面白かった。戦争や災害が起こるとそりゃ死神も大忙しですよね、と妙なところで納得してしまった。 リーゼルの父親が、連行されるユダヤ人にパンを与えたことでゲシュタポに目を付けられ後悔するシーン、リーゼルの「父さんは人間だっただけだよ」という台詞が印象に残りました。当時を生きていたとしたら、果たして私は「人間」になれただろうか?生命の危険に脅かされることなく、好きな本を読めて、ぬくぬくと生活できるということは、なんと幸せなんだろうと思った。
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オススメしていただいた本です。とても引き込まれ、面白かったです。舞台はナチス政権下のドイツで、主人公のリーゼルの行動や生活にハラハラしましたが、登場人物たちに愛がありました。本は生きる縁になることを感じました。作中作の「言葉を揺する人」もよかったです。ラストに向けての展開が悲しか...
オススメしていただいた本です。とても引き込まれ、面白かったです。舞台はナチス政権下のドイツで、主人公のリーゼルの行動や生活にハラハラしましたが、登場人物たちに愛がありました。本は生きる縁になることを感じました。作中作の「言葉を揺する人」もよかったです。ラストに向けての展開が悲しかったです。死神目線で描かれるのも新鮮でした。分厚い本でしたが、出会えてよかったです。映画化されてるのですね。「やさしい本泥棒」、見てみたいです。
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第二次世界大戦下のドイツの何の変哲もない街で起こる、一人の少女のドラマ。 里子に出された彼女は13歳で読み書きもまともにできない少女だったが、ふとしたきっかけで手にした本の影響で、徐々に本の魅力に憑かれていく。。。 タイトルからするとあまり想像できないが、泥棒稼業をメインに書い...
第二次世界大戦下のドイツの何の変哲もない街で起こる、一人の少女のドラマ。 里子に出された彼女は13歳で読み書きもまともにできない少女だったが、ふとしたきっかけで手にした本の影響で、徐々に本の魅力に憑かれていく。。。 タイトルからするとあまり想像できないが、泥棒稼業をメインに書いた話では全くない。 戦時下に繰り広げられる、一人の少女の青春であり悲劇である。 本書の最大の魅力は、人物描写の丁寧さにあると思う。 主人公・リーゼルは勿論、少なくともその里親のハンスとローザ、学友のルディ、運命の人物マックス、それと町長夫人と言った主要人物に関しては、もう本を読み切るころには、すっかりこれらの人物が自分の隣人として存在するかのように身近に感じられる「人間性」を持っている。 そして、色々な個性あふれる登場人物ばかりではあるが、共通して言えるのは「心の奥底ではみんな優しい」。限りなく、人間味のある人物たちとの、文字や本を通して紡ぎだされる貧しくも幸せな日々が心地よく流れる。 だから、ここまで丁寧に書いているから、 通常悲劇として盛り上げるべき最期の場面も、最低限の文章で構わない。 ただもう、全てが失われるという事実だけで10章は涙なしには読めない。(エピローグである程度救済されるが) 何でこの人たちがこんな目に遭わねばならないのか・・・と真剣に嘆息してしまった。 とは言え本書は、ヘビーなテーマも内包するが、全体的には、限りなく人間への希望に満ちた優しい物語だと思う。 本書末尾の一文が、著者の本作へのスタンスを全て語っているように思う。 「わたしは人間にとりつかれている。」 人間のことを、信じてやまないのだ。
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