テロル の商品レビュー
思いがけない災難のように降りかかってきたり、寄生虫か何かのように心のなかにとりつくのかもしれない。それを境に、二度と世界は同じように見えなくなる
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テロル ハヤカワepiブック・プラネットの「観光」を読んで、アジア的な視点で、タイの庶民の哀楽が心に残ったので、この本を読んでみました。 全体の印象は、アジアの柔らかい神様、価値観に対してアラブの硬い神様、価値観の違いが際だっていて、アジアの柔らかい神様の価値観が強い竹蔵は、ちょっと食傷気味でした。 主人公のベドウィン族出身で、イスラエルに帰化して医者をしているアミーンはイスラエルで何の不自由もない暮らしを送っています。そんな中、愛する妻のシヘムは妊婦に変装して爆弾を腹に巻いて、マクドナルドで自爆テロを起こします。何故、シヘムは”カミカゼ”を起こしたのか?アミーンの自暴自虐とも取れる探索の旅が始まります。 報復のために家をイスラエル軍につぶされるアミーンの一族。そして、さらなる報復のために一身を投じていく人たち。希望のない毎日よりも大儀のための死は幸福か? 平和ボケしている竹蔵にはピンときていませんが、世界では多くの人が希望のない毎日を送っているかと思うと、なんとも後ろめたい思いを持ってしまいました。 竹蔵
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いつまでも止む事の無い内戦は何故継続しているのか?それは貧困の為や領土拡大の為の戦争ではなく、自由を勝ち取るための戦争だから。そもそも、自由に対する根本的な考えの違いがある。否、考え方などと言う半端なものではなく、信念の違い。「自由とは心の底からの信念なんだ。」 「これは誰の身に...
いつまでも止む事の無い内戦は何故継続しているのか?それは貧困の為や領土拡大の為の戦争ではなく、自由を勝ち取るための戦争だから。そもそも、自由に対する根本的な考えの違いがある。否、考え方などと言う半端なものではなく、信念の違い。「自由とは心の底からの信念なんだ。」 「これは誰の身に起きてもおかしくない事なんだ。災難の様に降りかかってきたり、寄生虫か何かのように心の中にとりつくのかもしれない。それを境に、二度と世界は同じように見えなくなる。」 幸福という考え方を根底から揺るがされる物語。良い本に出合えた。
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社会・宗教問題、戦闘・テロ・危ない・自分を犠牲に人の命を奪う・信じられない、イスラエルとパレスチナのイメージはそんなものである。ニュースで目にしたり、世界史で知識として学んだかぎり。もっと深く、違う角度から考えてみなければとこの本を読んで気づく。イスラームとしてユダヤとしてあるい...
社会・宗教問題、戦闘・テロ・危ない・自分を犠牲に人の命を奪う・信じられない、イスラエルとパレスチナのイメージはそんなものである。ニュースで目にしたり、世界史で知識として学んだかぎり。もっと深く、違う角度から考えてみなければとこの本を読んで気づく。イスラームとしてユダヤとしてあるいはその狭間で生きる人々の声を、どちら側からも聞き取って物語にしたよう。
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シンプルな本だった。底が浅いとか単純とかではなく、一貫して無駄がないという意味で。 外科医の主人公は順風満帆な人生を送っている。美しく優しい妻に安定した地位、やりがいのある仕事… だけれど幸せなはずのその妻が体にダイナマイトを巻き付け、子供や家族連れでごった返すハンバーガーショップで自爆する。 何かの間違いだ、と主人公は思う。何不自由ない生活を送っていた妻が、そんなことをする理由がない。だからイスラム過激派の聖地に踏み込んで真相を知ろうとする。 結果的には「理由」は存在した。自爆テロをする「理由」は、たぶん諸説あるんだろうけど、この本で書かれていたのは、憎みすぎて、虐げられすぎて、もう何かのために死ぬことにしか存在意義を見出せないという心理だった。 正直、この考えを提示された当初は実感が沸かないで、「へえ、そうなんだ、でも日本に住んでるしよくわからないなあ~」程度に思ってた。でも読んでるうちにちょっとその心理がわかってしまいそうになって怖かった。 なんでかっていうと、やっぱり宗教の価値観って、人を誘い込むのが上手いんだな。 イスラム過激派の人たちは、主人公たちの生活を「黄金の檻」と表現する。金銭に恵まれ、豪華な屋敷で安全に眠る、そんな生活は黄金で囲まれた、一見自由に思えるがそれに囚われて抜け出せない囚人の生活だと。 これ、ちょっと理解できちゃう。でもそれが怖い。だってこんなの、現在の価値観をひっくり返してしまう考え方だし、今までの生活がまやかしだった! ってなったら、それを教えてくれた人や集団が正しいと思って傾倒しちゃいそう。 それを糸口として、アラブ系の親族への愛着、それを簡単に蹂躙する軍や政府、そういったエピソードを重ねられて、圧倒的に大きなものに対する、反抗心や絶望、憎しみが、少しだけ理解できるようになる。 読み終わって、自爆テロの心理は少しだけ分かる。(分かるというのはおこがましいのかもしれないけど。)でもそれを正しいと思ったらやっぱりおかしい。主人公の妻はやっぱりバカだよ。尊厳ある死に方で死ぬ理由はあるかも知れないけど、それに他人を巻き込む理由はなかったんじゃないの。 だから自爆テロの「理由」は詭弁だ、と思う。けど、それは私が自分の現在の価値観を守りたいための自己弁護かも、とか同時に考える。それに、何もかも破壊してやりたいと思うほどの憎しみは、戦争をしない日本で生きてる自分にはわからないものだし… はっきりとした線で区切られていたテロに対する理解と不理解が、読んでいる途中で混ざっちゃう。内容はシンプルで一途なのに影響力のある本だった。
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重い話だった。 実は自分の妻がテロ行為をしてしまったことより、不貞を働いたかもしれないことが気になっていた? 「夢を見すぎる人は、生きている者のことを忘れてしまう」 「今までの人生で、愛と新鮮な水とわずかばかりのものと希望さえあれば生きていけるとわかっているが、恥辱を受けた...
重い話だった。 実は自分の妻がテロ行為をしてしまったことより、不貞を働いたかもしれないことが気になっていた? 「夢を見すぎる人は、生きている者のことを忘れてしまう」 「今までの人生で、愛と新鮮な水とわずかばかりのものと希望さえあれば生きていけるとわかっているが、恥辱を受けた場合は決して無傷でいられない」 「自尊心を踏みつけにされると、それがきっかけとなってとんでもない惨事が引き起こされる。尊厳をもてるだけけの力の裏付けがなく、自分は無力だと自覚させられたときはなおさらだ。憎しみを知る手雨の最高の学び舎はまさにここだ」 何がヘシムを駆り立てたのか。民族が受けてしまった恥辱とは関係のない世界に自分がいることに気づいてしまったからか。 一度受けた恥辱はもうぬぐうことができないのか。
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田舎に帰省してたはずの結婚相手が、全然関係ない場所で事故にあって死んでしまってたら…残された方の驚きはそれだけでも相当なものだが、この作品ではさらに、彼女が自爆テロの実行犯だったら?というダメ押しがつく。 自暴自棄になりながらも主人公は、彼女が生前に発していたなんらかのサインを...
田舎に帰省してたはずの結婚相手が、全然関係ない場所で事故にあって死んでしまってたら…残された方の驚きはそれだけでも相当なものだが、この作品ではさらに、彼女が自爆テロの実行犯だったら?というダメ押しがつく。 自暴自棄になりながらも主人公は、彼女が生前に発していたなんらかのサインを探し求め、残された手がかりに片っ端から挑みまくる。その姿が実に痛々しいのだが、なぜか他人事とは切って捨てられないような臨場感というか真実味がある。 中東紛争もの、イスラムものとして遠ざけたり身構えたりせずに、日本の我々にも起こりうる夫婦間の物語として受け止めてみたい。著者や訳者の狙いからは外れるもしれないけれど。
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故郷パレスチナ自治区に帰り、自爆して死んだ妻と自分のルーツをたどっていくアミーンの苦悩が印象的だった。しかし、イスラエルの国土テルアビブとほんの少し距離を隔てただけなのに、パレスチナの荒涼とした光景はすごい。イスラエル対パレスチナの憎悪の応酬もすさまじい。こちらの本が書かれたの...
故郷パレスチナ自治区に帰り、自爆して死んだ妻と自分のルーツをたどっていくアミーンの苦悩が印象的だった。しかし、イスラエルの国土テルアビブとほんの少し距離を隔てただけなのに、パレスチナの荒涼とした光景はすごい。イスラエル対パレスチナの憎悪の応酬もすさまじい。こちらの本が書かれたのが2002年だから、第二次インティファーダの直後といった感じなんだろうか。 思想と人生は不可分なのだというカドラのマニュフェストのようなものをひしひし感じた。人間の本質的な孤独、というのも胸に迫ってきて、読み終わったあとしばらく放心した。泣いた。
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「仲むつまじく暮らしていた妻が自爆テロの犯人だった」。 この設定からかなり心を掴まれるが、読み出すとさらに面白く、 一気に引き込まれてしまった。 しかもフィクションでありながら、 どうしようもない現実も突きつけられる。 また、硬派な話だが訳がとても読みやすいのも良い。 訳者の藤本...
「仲むつまじく暮らしていた妻が自爆テロの犯人だった」。 この設定からかなり心を掴まれるが、読み出すとさらに面白く、 一気に引き込まれてしまった。 しかもフィクションでありながら、 どうしようもない現実も突きつけられる。 また、硬派な話だが訳がとても読みやすいのも良い。 訳者の藤本優子さんが「良い本は面白いと思わせると同時に、世界の見方すら変える」といった ことを書かれているが、まさにそう。 価値観に揺さぶりをかけてくるものすごい本。
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アラブ系イスラエル人のアミーンは医師として富と名声を勝ち取り、最愛の妻シヘムと 幸せな生活を送っていた。 勤務先の病院の近くで自爆テロが起き、怪我人の処置やアラブ系に対する差別的な検問を 何度も受けてくたくたになって帰宅したアミーンは、また病院へと呼び戻され、妻の遺体を 確認す...
アラブ系イスラエル人のアミーンは医師として富と名声を勝ち取り、最愛の妻シヘムと 幸せな生活を送っていた。 勤務先の病院の近くで自爆テロが起き、怪我人の処置やアラブ系に対する差別的な検問を 何度も受けてくたくたになって帰宅したアミーンは、また病院へと呼び戻され、妻の遺体を 確認するよう告げられた後、テロの実行犯がその妻であったと聞かされる。 ムスリムとは言え毎日の礼拝も行わない妻が、何不自由ない生活を与えてきた妻が まさかイスラム原理主義者だとは毛の先ほども信じられないアミーンは、真実を見つけるため エルサレムへ向かう。 ------- ヤスミナ・カドラを読むのは、カブールの燕達に続き2冊目。 テロルの方が、ずいぶんと読みやすい。 繊細だが硬質な文章が、崩壊していくアミーンの世界を美しく、時には醜悪に書き表している。 信仰や宗教、民族間の紛争などの社会的な思想断絶と、睦まじいと信じて疑わなかった妻の 内面を理解していなかったという個人的な断絶を、同じように扱うことで、大きな問題を 身近に引き寄せてくれる。 そして、社会的な問題の切り口もあくまで個人的な視点で描き、アミーンの一人称でストーリーが 勧められていくにも関わらず、対立する二者の信条を平等に書き表す著者の視点も感じとれる。 フィクションではあるが、非常に生々しく、それでいて緻密に作り上げられたストーリー。 翻訳も素晴らしく、とても読みやすい。 ヤスミナ・カドラの他の作品をもっと日本に紹介してもらいたい。
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