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ドイツは過去とどう向き合ってきたか の商品レビュー

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7件のお客様レビュー

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2023/04/11

左綴じで教科書みたいなつくり。(字体もまさに教科書体!) フリージャーナリストの著者が、ドイツおよび国民がどのように負の歴史と対峙してきたかを取材。本書ではその行為を「過去との対決」としきりに表現されている。 著者自身90年のドイツ再統一前後から在独しているのもあってか、「ドイ...

左綴じで教科書みたいなつくり。(字体もまさに教科書体!) フリージャーナリストの著者が、ドイツおよび国民がどのように負の歴史と対峙してきたかを取材。本書ではその行為を「過去との対決」としきりに表現されている。 著者自身90年のドイツ再統一前後から在独しているのもあってか、「ドイツでは…、一方で日本では…」と、わが国をよく引き合いに出されていた。少々気に掛かりはしたものの心の底から自戒し誠意を見せるとはどういうことか、学べる点は非常に多い。 過去の過ちを無かったことにするか、表面上だけでも謝罪するか、一身を投げ打って贖罪するか。 初版は2007年だが、今でも無視できない上記の問いをこの”教科書”は投げかけている。 「今日ドイツに生きている市民の大部分は、ユダヤ人虐殺に直接の罪はありませんが、特別の責任を負っています」 これは2005年、シュレーダー首相(当時)が発言したものだが、こんな感じで明言できる人が果たして日本にいるのだろうかとふとよぎった。 政治・教育・司法の分野、そして民間においてどのように「過去との対決」が繰り広げられてきたのかを本書は追う。通して思ったのは、彼らは過去の過ちと決着をつけるのではなく、未来永劫伝承していく方を選択・徹底しているのだということ。 行政機関が集中する首都に追悼碑(=負の歴史を象徴するもの)を設置。ナチス戦犯には時効は設けられず、存命する限り捜査対象とされる。歴史教科書は何十年も前から被害国との会議を重ね制作。高齢化する被害者達の介護や交流、収容所の修復作業といったボランティアにドイツの若者が赴く…etc. ボランティアはNGO活動の一環だが、年々関心を持った参加者が増えているというのが驚きだ。歴史の授業ではナチスによる暴力支配を細部まで理解した上で自身の意見を述べることが求められるらしいから、これは当然の成り行きだろうか。 対決の仕方が、統一前の東西ドイツで全く違っていたのが一番ショックだったのかもしれない。 著者曰く旧東ドイツでは、社会主義時代の政権が自分達を「ナチスと戦った共産主義者の国」だと強調してきた。そのせいで本当の「過去との対決」がおろそかになり、極右派が未だに(2007年の時点では)存在感を示している。 そればかりか極右派による外国人への暴力事件も後を絶たず、著者もニュースを注視する日々が続いたという。 本書には生々しい写真も掲載されているが、ネオナチによる落書きを写した画像にも相当心を痛めた。ネオナチと聞くと「時代錯誤のおかしい人達」という印象しかなかったが、ここまで心を蝕まれていたとは…と考えを改める章でもあった。 「歴史について沈黙したら、我々は罪を背負うことになります」 対決に全てを賭してきたドイツですらまだ問題を抱えているのに、我が国ときたら…と不安を隠せずにいる。 第一に意識改革か。だとしたら、本や映画で触れるだけの段階ではもうないのだろうな。

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2019/02/05

いつも不思議に思うことがあります。 第2次世界大戦後、長い時間だけが流れましたが、未だに周辺諸国から戦争責任や歴史認識を問われます。しかしドイツは、ホロコーストや侵略などヨーロッパのたくさんの国々に惨禍をもたらしたのに、今は周辺諸国からゆるぎない信頼を得ています。この日本とドイツ...

いつも不思議に思うことがあります。 第2次世界大戦後、長い時間だけが流れましたが、未だに周辺諸国から戦争責任や歴史認識を問われます。しかしドイツは、ホロコーストや侵略などヨーロッパのたくさんの国々に惨禍をもたらしたのに、今は周辺諸国からゆるぎない信頼を得ています。この日本とドイツの違いは何なのだろう? その答えをこの本は教えてくれます。

Posted byブクログ

2015/04/04

2000年8月、ドイツの経済界は過去と対決する上で重要な一歩を踏み出した。約6400社のドイツ企業は連邦政府とともに、ナチス政権下で強制労働などの被害にあった市民のために、賠償基金「記憶・責任・未来」(Erinnerung, Verantwortung, Zukunft)をベルリ...

2000年8月、ドイツの経済界は過去と対決する上で重要な一歩を踏み出した。約6400社のドイツ企業は連邦政府とともに、ナチス政権下で強制労働などの被害にあった市民のために、賠償基金「記憶・責任・未来」(Erinnerung, Verantwortung, Zukunft)をベルリンに創設した。この賠償基金は約100億マルク(約5000億円)で、政府が50%、企業が50%負担した 。1999年に基金の創設が決まった時、当時首相だったシュレーダーは以下のように述べた。「ドイツは20世紀に、世界に大きな災厄をもたらしました。この基金によって、被害者たちに物質的な援助だけでなく、何等かの満足も与えたいと思います。賠償金は、被害者の苦しみを完全に癒すことはできませんが、和らげることはできます」

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2013/08/23

 ドイツ在住のジャーナリストの著者が、戦後ドイツではナチス政権に対してどのように補償問題に取り組まれ、どのような歴史教育が行われてきたかということについて、政治、教育、司法、民間という4つのレベルで紹介されている。さらに、今後の課題ということで、勢いをつけている旧東ドイツの極右勢...

 ドイツ在住のジャーナリストの著者が、戦後ドイツではナチス政権に対してどのように補償問題に取り組まれ、どのような歴史教育が行われてきたかということについて、政治、教育、司法、民間という4つのレベルで紹介されている。さらに、今後の課題ということで、勢いをつけている旧東ドイツの極右勢力についての懸念が語られている。  ドイツがいかに過去と対決してきたか、ということが語られているが、特に個人的な興味としては教育の分野の話が印象的だった。暗記ではない、討論を中心とする社会科教育の実践例、という感じだった。アウシュヴィッツを否定することが法律違反、というのは知らなかった。「アウシュヴィッツに関しては思想の自由が認められていない」というのが興味深い。ただ、4章までと違って、5章の特に東ドイツの話は、本当に怖いなと思ってしまった。(13/08/23)

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2012/05/02

「集団の価値観」よりも「個人の価値観」を優先するドイツでのユダヤ人大虐殺をめぐる国家・国民・政府・マスコミの対応を簡単にまとめている。組織・上司の命令といえど、非人道的な行為を犯せば個人が裁かれきた(司法以外)。多額の賠償金を払い、自分たちで検証・処罰を行い、今でも被害者個人への...

「集団の価値観」よりも「個人の価値観」を優先するドイツでのユダヤ人大虐殺をめぐる国家・国民・政府・マスコミの対応を簡単にまとめている。組織・上司の命令といえど、非人道的な行為を犯せば個人が裁かれきた(司法以外)。多額の賠償金を払い、自分たちで検証・処罰を行い、今でも被害者個人への損害賠償を行う企業もある。一方、時が経ち、東ドイツではネオナチや国粋主義者が台頭、大虐殺の十字架に縛られ続けられるフリに飽き飽きする人々も現れてきた。日本と比較した際の良し悪しは簡単には語れない。けれど、ドイツ軍は多国籍軍に参加しても問題にならず、日本自衛隊が平和維持活動を超えて活動したり軍備拡充する際に他国から避難される可能性があるのは、自ら落とし前をつけたことを国際的に認知されているか否かの差であると思う。そして、それは軍に関することに止まらないのかも・・・

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2011/05/02

このテーマは何度も読んでいる。過去を克服した国、モデル国といったらドイツの上に出る者はないだろう。内容に新しい発見や驚きはなかった。 ドイツを理想として、日本はそれを見習うべき。 という著者の意見が最初から最後まで強調され続ける。 あえて批判的に何か言おうとすれば、ドイツの優等生...

このテーマは何度も読んでいる。過去を克服した国、モデル国といったらドイツの上に出る者はないだろう。内容に新しい発見や驚きはなかった。 ドイツを理想として、日本はそれを見習うべき。 という著者の意見が最初から最後まで強調され続ける。 あえて批判的に何か言おうとすれば、ドイツの優等生ぶりはそこまで完璧なのか、という点。 例えばドイツの終身刑。 過去に犯した罪は、それが非常な残虐さをもつものである場合は時効がない、という。しかし死刑も廃止され、終身刑は15年以上の服役としているが、15年経つと外に出る、というのがほぼ常識となっているのが現実と聞く。 ドイツを理想に祭上げて、見えなくなってしまっている部分があるのではないか、という不安が残る。 ドイツとイスラエル間は万事うまくいっている。 しかしこれに中東を含めたら何かがおかしいはずだ。 外交において満点を取るような国は残念だが存在しえないかと思う。 旧東ドイツに蔓延るナチ支持者に触れている項は興味深い。 しかしせっかく読むならこれだろう。 『過去の克服―ヒトラー後のドイツ』 白水社 石田 勇治 著

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2010/04/17

筆者の結論は「やはりそこへ行くか…」という印象。 ドイツがポーランドに謝罪しているから日本も、なんてのは当てはまらないと思う(間違っている、と否定するわけではない)。過去の出来事は置いておいて、現在の関係性や今後の両国の方向性があまりにもが違う。 改めてアジアの問題の難しさを考え...

筆者の結論は「やはりそこへ行くか…」という印象。 ドイツがポーランドに謝罪しているから日本も、なんてのは当てはまらないと思う(間違っている、と否定するわけではない)。過去の出来事は置いておいて、現在の関係性や今後の両国の方向性があまりにもが違う。 改めてアジアの問題の難しさを考えさせられた。

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