フランス革命史(下) の商品レビュー
『フランス革命史』抄訳の第二分冊。ルイ16世の処刑から、ロベスピエールの処刑(テルミドールのクーデタ)までを扱う。革命の指導者たちが、革命裁判や暗殺によって次々に命を落としていくさまが克明に描かれてゆく。マラーやダントン亡きあと、一時的に全権力をロベスピエールが掌握したが、それも...
『フランス革命史』抄訳の第二分冊。ルイ16世の処刑から、ロベスピエールの処刑(テルミドールのクーデタ)までを扱う。革命の指導者たちが、革命裁判や暗殺によって次々に命を落としていくさまが克明に描かれてゆく。マラーやダントン亡きあと、一時的に全権力をロベスピエールが掌握したが、それも1年と持たない。ミシュレはテロルを対外情勢や国内情勢が要請した不可避のものとして描き出す――これはのちにフュレが「状況の論理」と呼んだものだろう――が、それでもロベスピエールの負の側面を描き出すことを忘れなかった。しかし、ミシュレが「フランス革命」の歴史をテルミドールのクーデタ、したがってロベスピエールの処刑によって閉じていることは印象的である。テロルという負の側面はあったにせよ、テロルのあとに来るのが軍人政治の時代、ナポレオンの時代であることを示唆しながら、ミシュレは「革命」の歴史を閉じた。ここに、革命の主役は人民であるというミシュレの基本的な理念が反映されている。
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2013年11冊目 本書はフランス革命の歴史を叙述したもので、ロビスピエールの死で幕を閉じる。さて、フランス革命の歴史書としてはどこで始まり、どこで終わるのかは非常に重要である。筆者がどこまでを革命ととらえているかが如実に反映されているからである。本書ではロビスピエールの死、す...
2013年11冊目 本書はフランス革命の歴史を叙述したもので、ロビスピエールの死で幕を閉じる。さて、フランス革命の歴史書としてはどこで始まり、どこで終わるのかは非常に重要である。筆者がどこまでを革命ととらえているかが如実に反映されているからである。本書ではロビスピエールの死、すなわち共和制の崩壊を意味するところで幕を閉じる。本書が共和制史と呼ばれる所以である。 さて、本書は厳密に事実のみを提示した歴史書ではない。そのため、純粋に歴史的事実を理解したものにとっては良書ではないかもしれない。しかし、本書の評価をする前に、歴史書とは何か、を吟味する必要がある。 ミシュレによれば、歴史とは「全体としての生命の復活」と表現される。なぜか。歴史書は単純に事実を提示すればいいというわけではない。その歴史の価値を現代に復活させ、読者に新たな視点とともに理解してもらうこと、それが歴史書の目的である。ミシュレ以前、古典主義が勃興していた時期、歴史は「道徳と政治の学校」であった。歴史は過去から教訓を引き出すことで価値があるとされていた。しかし、フランス革命はこの考えを一変させる。今まで歴史とは繰り返される反復するもので、だからこそ教訓を引き出す価値があるとされていたのだ。しかし、革命は歴史を展開し、今まで予想だにしなかった結果を生み出した。歴史は反復されるだけのものではなかったのだ。未来に変化していく歴史を考える時、私たちは歴史をどのように理解すればいいのか。歴史の意味と方向性を理解しなければならない。それこそ歴史書の役割である。(この流れこそロマン主義の流れといえる。) だからこそ、本書はまるで冒険歴史小説のような印象を受ける。これは、筆者ミシュレがフランス革命をそのように理解していた証拠になるであろう。人民(peuple)が立ちあがったことこそフランス革命の意義であり、上巻では、人民が立ち上がる立ち上がる姿が、革命が輝かしい未来へ向かっていく様子で描かれる。文学的な印象を受けるだろう。もちろんそれは本書が歴史的事実に依拠していないことを意味しない。前述したように、歴史とは「全体としての生命の復活」である以上、歴史に価値を付与する必要性があったのである。 そして彼にとってフランス革命は新たな社会の到来を予感させた出来事なのである。彼の理想は友愛に基づく共和制であった。彼が理想とする共和制はあくまで民衆によるものである。そのため、民主的な議会でさせも、遅々と革命の進行を遅らせた議会には批判的になる。 とにもかくにも、歴史書の意義は事実に対する価値の提示であり、ミシュレは「人民」の立場から叙述した。そのいみで、本書は非常にフランス革命をよく理解させていく。当時の人々が理想に燃えていた様をありありと見せつけてくれるのである。
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