小鳥たちが見たもの の商品レビュー
子どもたちは迷子になったわけでも、捨てられたわけでもない。ただ、存在が消えただけ。 1977年、超音速旅客機コンコルドがパリ―ニューヨーク間を結び、エリザベス女王の在位25周年祝典が催され、ディスコ・ミュージックがダンスフロアを席巻し、チャーリー・チャップリンもエルヴィス・プレ...
子どもたちは迷子になったわけでも、捨てられたわけでもない。ただ、存在が消えただけ。 1977年、超音速旅客機コンコルドがパリ―ニューヨーク間を結び、エリザベス女王の在位25周年祝典が催され、ディスコ・ミュージックがダンスフロアを席巻し、チャーリー・チャップリンもエルヴィス・プレスリーも人生を終え、日本の漁船が太平洋の海の底から怪物のものかもしれない巨大な死骸を引き揚げた。 それからもうひとつ。オーストラリアの小さな街で、3人姉弟がアイスクリームを買いに出かけたまま行方不明になった。 エイドリアンは1年前、当時8歳にして人生を出直さなければならなかった。離婚したあとひとりで彼を育ててくれていたママが病み、次に一緒に暮らしたパパは新しい恋人との生活を選び、その次に預けられたおばあちゃんは年老いて再び子育てをする自信も気力もなく、同居するおじさんは過去の事故が原因で家から出ようとしない。新しい学校にも馴染めず、どこにも彼の居場所はなかった。 近所に越してきたニコールと友達になったエイドリアンは、行方不明になった姉弟の居場所を知っているという彼女と一緒に「水の近く」に捜索に行くが――。 ささいな困難や混乱で人生が簡単に壊れてしまう。羽根と骨だけを残して音もなく去ってゆく小鳥のように孤独な子どもたちが、行方不明になった姉弟を探し出すことで周囲の大人たちやクラスメイトから認められ、居場所を得ようとする様子を淡々と描く。 空中でみぞれがきらきら光っているような、かすかな切なさ漂う良作。
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得意ではない外国小説、独特な文章の雰囲気はやっぱり感じるけれど、読みやすく引き込まれた。 でもラスト、「え、そんなー!」と思わず声が出てしまったほどわたしには悲しかった。 誰にも彼らの本当の気持ちはわからないまま、残された者はただただ想像するしかなくて、そして後悔しながら生きてい...
得意ではない外国小説、独特な文章の雰囲気はやっぱり感じるけれど、読みやすく引き込まれた。 でもラスト、「え、そんなー!」と思わず声が出てしまったほどわたしには悲しかった。 誰にも彼らの本当の気持ちはわからないまま、残された者はただただ想像するしかなくて、そして後悔しながら生きていくんだと思うと苦しい。
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9才のエイドリアンは、母が精神に問題があるため、祖母の家で暮らしている。 25才の叔父のローリーは引きこもりだ。 エイドリアンは孤独で友人もひとりしかいないが、その友人も去っていこうとしている。 ある日、エイドリアンは公園でニコールという女の子に会い、一緒に死んだ小鳥を埋める...
9才のエイドリアンは、母が精神に問題があるため、祖母の家で暮らしている。 25才の叔父のローリーは引きこもりだ。 エイドリアンは孤独で友人もひとりしかいないが、その友人も去っていこうとしている。 ある日、エイドリアンは公園でニコールという女の子に会い、一緒に死んだ小鳥を埋める。 アイスクリームを買いに行った3人の姉弟が忽然と消え、そのニュースが流れている日常のなかで、エイドリアンとニコールは毎日の生活を送っている。 内気な子ども特有の汎不安と外界からと隔絶と混沌とした現実のなかで、エイドリアンとニコールはどこへ向かうのか。 ソーニャ・ハートネットは、同じ風合いの作品を描かない作家だそうで、『木曜日に生まれた子ども』とは、全く違う作品に仕上がっている。 『木曜日に生まれた子ども』は、地面に穴を堀り、土の中で生活するティンという特異なキャラクターを創作しているが、『小鳥たちが見たもの』に登場する子どもたちは、特別な奇癖を持つわけではなく、特別な子どもでもない。 社会の冷たさは、現代の世界中に蔓延しているらしく、大人や社会は子どもたちを守るのではなく、常に危険にさらしている。 ニコールとエイドリアンはプールに行く。 両肩から生えた大きな白い翼があるのかないのかエイドリアンにはわからない。 いや、わかっている。わかっているのだ。
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大人の部類に入るであろう自分が、エイドリアンの不安や孤独がすごく我が身として感じられた。子供の頃にどうしようもなく寂しくて、ひとりぼっちだと感じた気持ちがエイドリアンと一緒に共感し、よみがえってきた。 昔読んだ「かかし」を思い出した。子供頃に読んでたらいたたまれないと思う。この本...
大人の部類に入るであろう自分が、エイドリアンの不安や孤独がすごく我が身として感じられた。子供の頃にどうしようもなく寂しくて、ひとりぼっちだと感じた気持ちがエイドリアンと一緒に共感し、よみがえってきた。 昔読んだ「かかし」を思い出した。子供頃に読んでたらいたたまれないと思う。この本と出会ったのが今(大人)でよかった…
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迷子になったわけでも、捨てられたわけでもない。ただ、消えただけ―街では、行方不明になった3人の子どもたちのニュースが流れている。9歳のエイドリアンの心は揺さぶられ、そして…。
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