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粟津則雄著作集(第2巻) の商品レビュー

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2025/09/04

『聖性の絵画―グリューネヴァルトをめぐって』(1989年、日本文芸社)、『精神の対位法』(1994年、日本文芸社)、『美の近代』(1986年、岩波書店)、『オディロン・ルドン―神秘と象徴』増補版(1984年、美術出版社)の四作品のほか、7編の論考を収録しています。『聖性の絵画』『...

『聖性の絵画―グリューネヴァルトをめぐって』(1989年、日本文芸社)、『精神の対位法』(1994年、日本文芸社)、『美の近代』(1986年、岩波書店)、『オディロン・ルドン―神秘と象徴』増補版(1984年、美術出版社)の四作品のほか、7編の論考を収録しています。『聖性の絵画』『精神の対位法』『美の近代』の三作品は、たがいにかさなるテーマをとりあげつつ、詩や絵画、音楽をめぐる著者の論考が展開されています。『オディロン・ルドン』は、表題が示す通りのルドンの評伝です。 『聖性の絵画』では、ドストエフスキーの『白痴』のなかで登場人物の口から印象的なしかたで語られる、ホルバインの《キリストの遺骸》と、ユイスマンスの『さかしま』に登場するグリューネヴァルトの《キリスト磔刑図》をとりあげて、聖性と自然の交錯する地点を西洋精神史のうちにさぐる試みがなされています。 『精神の対位法』では、『新約聖書』のペテロの否認のエピソードに、少年時代の著者が大きな衝撃を受けたことを回顧しつつ、上記のテーマとかさなるところに考察が進められています。ほかに、ソポクレスの『アンティゴネー』や、ニーチェとワーグナーの関係についての論考もふくまれます。 『美の近代』は、モネとルドンという対照的な画風で知られる二人の画家を対比させることで、かつては均衡を保っていた内的なものと外的なものとのあいだに成立する秩序がゆらぎ、解体する危機の時代としての「近代」のすがたを浮き彫りにしています。さらに、優れた芸術家や詩人はこの危機に身を引き裂かれながらもそれを乗り越えようとする試みをおこなっていたと著者はいい、、ゴーガンとゴッホ、マラルメとランボー、クレーとピカソなどがとりあげられます。 グリューネヴァルトの絵をいまだ見ていないときに、ユイスマンスの文章によって著者の精神が触発されたことや、ペテロの否認が著者の心に深い衝撃をのこしたことなど、批評家としての著者の精神の中心にあるものをうかがい知ることのできるような論考があって、興味深く読みました。

Posted byブクログ