紙の空から の商品レビュー
2007年10月購入。 柴田先生のファンになり、買ったのですが、1本目のブレシアの飛行機の設定がいまいちわからず、何度もトライと中断を繰り返し15年半…ようやく読みきりました! 短編小説を読み慣れてきたせいもありますが、どれもよかったです。特に「道順」「すすり泣く子ども」「恐しい...
2007年10月購入。 柴田先生のファンになり、買ったのですが、1本目のブレシアの飛行機の設定がいまいちわからず、何度もトライと中断を繰り返し15年半…ようやく読みきりました! 短編小説を読み慣れてきたせいもありますが、どれもよかったです。特に「道順」「すすり泣く子ども」「恐しい楽園」「夜走る人々」「アメリカン・ドリームズ」が心に残りました。 長編とは違い、登場人物の背景の説明は限られているのですが、読み手の想像力をかきたててくれるのが、短編のよさかなと感じています。 柴田先生の編訳短編集は、他にもいろいろあり、少しずつ読み進めているところですが、死ぬまでに読み尽くせるのか…できるだけがんばりたいです!
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「すべての物語は何らかの意味で旅の物語であり、どんなに現実的で日常的な情景が描かれていようと、それはいわゆる現実や日常とはどこか違った<もう一つの国>なのだし、そもそも読み手にしてみれば、物語を読むという営み自体、どんな物語であれ、一種旅に出るようなものだと言うことができるだろう。」 「訳者あとがき」からの引用だが、あらためて言われるまでもなく、私たちは書斎の中であれ、移動中の電車の中であれ、物語を読んでいるときは、現実に自分が生きている世界とは違った時間、違った場所に生きている。問題は文句なしに別世界に行ける作品と、そうすんなりとは行かしてくれない作品があって、私たちは、どうにかして、今まで見たこともないような<もう一つの国>にまちがいなく行ける切符を手にする機会はないものかとつねに本屋や図書館の棚、ウェブサイトの中をうろつき回っているということなのだ。 手がかりになるのは読み巧者が見つけてくる情報なのだが、外国文学の場合、翻訳者が水先案内人であることが多い。優れた訳者は下手な作家より、よっぽど鋭い感性を持っている。そういう翻訳者を何人か知っていれば、見知らぬ国の作家が描き出す<もう一つの国>への切符はなかば手に入ったようなものだ。柴田元幸氏は、その中でも第一人者である。 いつの頃よりか、これはと思った外国文学の訳者が多く柴田氏であることに気がついた。それからは、訳者が柴田氏であれば、作家の名前は知らなくとも、まずは読んでみることにしている。そして、ほとんど期待が裏切られたことはない。今回の作品は英語で書かれた旅にまつわる短編小説のアンソロジーである。 冒頭に置かれた「ブレシアの飛行機」はガイ・ダヴェンポートの作品。友人のマックス・ブロートとイタリアの航空ショーを見に行った事実をカフカが書いた短い文章をもとにした同名の架空の旅行記である。現実と虚構が綯い交ぜになった記述に眩暈に似た感覚を覚えるが、その裡に知らぬ間に別世界に飛ばされてしまっている自分に気がつく。 訳者お気に入りのスティーヴン・ミルハウザーの手になる「空飛ぶ絨毯」は、子どもの頃の夏休みに寄せる思い、少年の成長と引き替えにもたらされる喪失感を、独特の超現実主義的技巧でもって鮮やかに描ききった佳作。まさに紙上フライトの感あり。 50年代のシカゴの下町を描かせたらこの人の右に出る者はいないというスチュアート・ダイベックが書いたのは、「パラツキーマン」。パラツキーとは、ウェハース二枚を蜂蜜で貼り合わせたもの。屑拾いや行商人の後をつけたがる子どもは洋の東西を問わず多いらしい。異世界への通り道を見つけてしまった兄弟の不思議な体験を描いた幻想的な作品。 影の薄い町の住人が、丘の上に買った敷地に塀を建て始めた。中国人の職人を使い、その中で何をやっているのか町の人たちはいぶかしがるが、やがて当人は死ぬ。未亡人が指揮して塀を取り壊すとそこには…。アイロニーに満ちた奇妙な味わいを漂わせる、ピーター・ケアリーによる「アメリカン・ドリームズ」。 ほかに、『コーネルの箱』で知られるジョゼフ・コーネルの作品に霊感を受けて書かれたというロバート・クーヴァーの「グランドホテル夜の旅」、「グランドホテル・ペニーアーケード」。ハワード・ネメロフの「夢博物館」は自分の夢を蒐集した博物館を建てた男の話。掉尾を飾るカズオ・イシグロの「日の暮れた村」など。どれも瞬時の裡に<もう一つの国>にあなたを連れ去ってくれることまちがいなしの逸品ぞろい。できれば、夜更け、静かな部屋で独り読んでいただきたい。
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アメリカ文学翻訳者である「柴田元幸」氏が選んだ、旅にまつわる海外短編を集めたアンソロジー。 スティーブンミルハウザー、バリーユアグロー、スチュアートダイベック、カズオイシグロなど錚々たるメンツの短編が、きれいな挿絵とともにおしげもなく盛り込まれている。 個人的には既読の短編も...
アメリカ文学翻訳者である「柴田元幸」氏が選んだ、旅にまつわる海外短編を集めたアンソロジー。 スティーブンミルハウザー、バリーユアグロー、スチュアートダイベック、カズオイシグロなど錚々たるメンツの短編が、きれいな挿絵とともにおしげもなく盛り込まれている。 個人的には既読の短編もあったため、少し物足りない感はあるものの、海外短編好きにはたまらない内容になっていると思う。
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「ブレシアの飛行機」ガイ・ダヴェンポート 「道順」ジュディ・バドニッツ 「すすり泣く子供」ジェーン・ガーダム 「空飛ぶ絨毯」スティーヴン・ミルハウザー 「がっかりする人は多い」V・S・プリチェット 「恐ろしい楽園」チャールズ・シミック 「ヨナ」ロジャー・パルバース 「パラツキーマ...
「ブレシアの飛行機」ガイ・ダヴェンポート 「道順」ジュディ・バドニッツ 「すすり泣く子供」ジェーン・ガーダム 「空飛ぶ絨毯」スティーヴン・ミルハウザー 「がっかりする人は多い」V・S・プリチェット 「恐ろしい楽園」チャールズ・シミック 「ヨナ」ロジャー・パルバース 「パラツキーマン」スチュアート・ダイベック 「ツリーハウス」「『僕の友だちビル』」バリー・ユアグロー 「夜走る人々」マグナス・ミルズ 「アメリカン・ドリームズ」ピーター・ケアリー 「グランドホテル夜の旅」「グランドホテル・ペニーアーケード」ロバート・クーヴァー 「夢博物館」ハワード・ネメロフ 「日の暮れた村」カズオ・イシグロ が読めます。 こういうアンソロジーは知らない作家がたくさん知れて嬉しい。 とっても面白かったのは 「夜走る人々」 「夢博物館」 の二編。「空飛ぶ絨毯」はなんかこー、いい感じに切なくて、何度も読み返したくなる不思議作品。 奇妙な世界観。やっぱりこういうのたくさん読もう。 私はコーネルの作品が好きだけれど、コーネルに影響を受けて本を書いている人がたくさんいるのだな。 やっぱりきちんと美術館へ行こう。
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読み始めて、そうか、旅に出たかったんかなあ。と思ったりしました。どれも、いろんな意味で旅のはなし。自分でも気づかずに手に取った本がぴったりくることもある、そういうことなのかも。 「道順」も好きだけど、一番は「パラツキーマン」です。でも、どれもハズレはないです。
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かなり読みづらい! 途中で飽きてしまって、読み捨て。ゆえに同じ本を2冊も買ってしまった。で、やっぱり面白みがない。
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旅にかかわる短編小説集。14人の海外作家の作品が柴田元幸の編訳で収められている。14人目の作家、カズオ・イシグロの『日の暮れた村』は、記憶の世界への帰還とそれからの出発が幻想的に描かれていてとてもよかった。
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複数の作家による短篇集を読む楽しみとしてはこれまで読まなかったような作家に行き当たることがあるということが挙げられると思うけど、編者のテーストを好んでいる場合は尚更で、そのために読む、と言ってもいい位。 でもまあ、それを切欠に読み継いでいきたいと思える作家に出会えるかどうかとい...
複数の作家による短篇集を読む楽しみとしてはこれまで読まなかったような作家に行き当たることがあるということが挙げられると思うけど、編者のテーストを好んでいる場合は尚更で、そのために読む、と言ってもいい位。 でもまあ、それを切欠に読み継いでいきたいと思える作家に出会えるかどうかというと確率は高くは無いようにも思う。 最近柴田さんの日本語を読むたびに思うことは、本人の紡ぐ日本語はもう翻訳の枠には収まりきれないんじゃないのかな、ということ。 余程の個性がある作品以外は、何となく同じような色彩感が印象として残ってしまうので、結局、柴田元幸の翻訳モノを読むっていう表現がもっとも適切な表し方になってしまう読書に。 もう少し積極的に言うと、翻訳する柴田さんの世界がオリジナルの世界を塗り替えているんじゃないかなと思うようなことが多い気がする。 そんな中で、最後に置かれたカズオ・イシグロはさすがです。 それと、個人的には、2番目に置かれているジュディ・ブヅニッツは、これまで読んだことが無かったけれど、読み始めた直ぐに「この人の書く世界感は好きだ」と感じたことが一番の収穫。 あとがきを読んだら、この作家が岸本さんの訳に繋がっていることが判って、余計にんまり。
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