福知山線5418M 一両目の真実 の商品レビュー

吉田恭一【著】

2023/05/19

事故の翌年に出た本。著者の吉田恭一氏，テレビ局勤務の鉄道ファンで，たまたま一両目に乗り合わせていたらしく，JR西に対して言いたいことがいっぱい書いてあった。
文体は微妙だけど期待を上回る良本。
入院中に社長が謝罪の見舞いに来たとき，小一時間説教をした話も載ってて，その内容が感情論でない理詰めの議論なのも良い。
昨年は鉄道開業150年だったが，その明治の最初に敷かれたレールが狭軌だったためにこんな事故に巻き込まれた(遠心力に負けて転覆脱線した)とのこと。
著者さん，福知山線事故の前にも廃線跡に関する著作をものしている。ネットでも積極的に発信していたようで，彼の廃線ブログを見つけた。何これ…結構ヤバい！
更新は2007年に止まってるようだけど，SNS時代に移行して，Twitterとかにいるんだろうか？
kysd.net/index.html

2021/11/08

5歳の子どもが電車好きで、この福知山線の事故のことはyoutubeで知り、わたしにも教えてくれていた。
図書館で見つけたこの本を読むことで、事故の様子をそれまでよりも深く知ることができ、息子がもう少し大きくなってまだ電車好きならぜひ紹介したい本だなと思いました。

2021/07/11

最初の方は「これから起ころうとは思いもしなかった」みたいな回りくどさ満載の文章でしたけど、よかったですよ。救助の細かい状態とか入院の苦労が知れて。

検証は一年でやるには早いような感じがしますが、ご自身の怪我や仕事復帰もあるのに、すぐこの本を出すという行動力がまずすごいです。そもそも一両目にのっていたし、ほかの方の遺体と触れていたのに精神的ダメージがほとんどないような感じの淡々とした書きぶりだった。

ほかの方の手記を見たければ神戸新聞出版のものをおすすめします。地図がきちんとついていますしわかりやすいです。

2015/06/05

気がついたら、自分の体に接している人が皆亡くなっていた。電車の中にいるのか外にいるのかもわからず、5時間も身動きがとれず…
前半の事故直後の描写は、語り口こそ冷静だけど、ヘリからの映像とは違う情景、大怪我による体の痛みを生々しく想像させる。
思えばこの事故が起きたとき私は高校生で、電車通学だった。一両目に乗るのが怖くなったし、｢あれ？電車のスピードが早い…？｣なんて1人ぞわっとしたことが何度もあった。
それほど、身近に感じた大事故だったのだと思う。
後半は主に、著者自身による事故の分析、改善案などが、冷静に語られている。大怪我を負い、心身へのダメージはものすごいものだったと思うけど、これだけ冷静に執筆されているのがすごいと感じた。著者がマスコミ関係の職業であり、鉄道ファンでもあるからなのかもしれないが…それにしても。
JR西の事故対策を見守っていくのが自分の役割、という著者の言葉が何度も出てくる。たしかクローズアップ現代で、JR西と被害者、犠牲者遺族が合同で事故対策を行ってきたしくみが紹介されていたのを思い出した。
彼らの、JRを叩くだけでなく、二度と悲劇が起きないために粘り強く活動される強い意志、その裏にあるであろう行き場のない悔しさを思う。

2009/10/04

これは全ての人に読んで考えて欲しい本。この方の廃線に関してのＨＰを以前から知っていたけど、まさか鉄道好きの方が福知山線事故の被害に遭うとは皮肉なことだと思う。これを読んで、報道では知ることが出来なかった事実が分かるし、被害者の視点から忠実に、そして冷静に書かれている。こう言っては失礼だけど、鉄道に詳しい方が乗っていたからおかげで、ここまでのことが分かったと思う。