民権と憲法 の商品レビュー
教科書的な知識をかなり網羅しつつ、テーマごとの見取り図も示してくれる良書。通史でこれだけ面白い本は貴重だと思う。 西南戦争(1877)から大日本帝国憲法発布(1889)までの民権運動史を軸に据えつつ、その間の経済や社会、対外関係、学校教育などのトピックにも各章が割かれている。網...
教科書的な知識をかなり網羅しつつ、テーマごとの見取り図も示してくれる良書。通史でこれだけ面白い本は貴重だと思う。 西南戦争(1877)から大日本帝国憲法発布(1889)までの民権運動史を軸に据えつつ、その間の経済や社会、対外関係、学校教育などのトピックにも各章が割かれている。網羅性と深掘りのバランスがかなり好みで、通史の本にありがちな目の滑る感じもなく、かつ、1つの事件に絞って書かれた本のように食傷気味になったりもせずに新鮮さを保ちながら読み切れた。
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西南戦争後の恩賞を巡り起こった竹橋事件から始まり、大日本帝国憲法が発布されるまで。 政府vs民権派+民衆という視点ではなく、政府・民権派・民衆の三極対立の視点が示された事で、非常に分かりやすくなっている。 栃木県民としては足尾鉱毒事件と田中正造の記述が気になった。勝海舟が田中正造...
西南戦争後の恩賞を巡り起こった竹橋事件から始まり、大日本帝国憲法が発布されるまで。 政府vs民権派+民衆という視点ではなく、政府・民権派・民衆の三極対立の視点が示された事で、非常に分かりやすくなっている。 栃木県民としては足尾鉱毒事件と田中正造の記述が気になった。勝海舟が田中正造に送った証文にある通り、「元が間違っているんだ」と。江戸時代には考えられないほどの合理性と効率的な企業が登場したが、それが地域社会や環境に与える影響までは誰も予想していなかった。 アイヌ、琉球、朝鮮問題についても詳しく書かれている。特にアイヌが気になった。彼らを日本人とする際に、なぜそれまでの居住地から離れさせ開拓をさせたのか?前から気になっていたが、ロシア語や英語も話せる彼らが境目にいたのでは何があった際に都合が悪い。結局、居住地だけでなく食文化や生活様式まで変えられ抵抗力が弱まったであろう彼らの身体に天然痘などの病気が襲い掛かり、多くの命が失われてしまった。無人になり安心したかのように思える境目には、その後、日本国は巨額の防衛費をつぎ込む羽目になる。また、これらの問題に対し、欧米諸国が少々怪訝な顔をし始めている(自分達も同じ事をしているが) 後半は森有礼が目立っている。国民を育成する為に、学校教育、制服、体育、唱歌、そして君が代まで。この時代にこれらのものが誕生している。それらは明治天皇の巡幸とも重なり、日の丸・君が代・御真影・万歳(天皇陛下万歳もこの時代からの登場)という国民統合四点セットが生まれる。 この先、時代にはきな臭い方向にも進むが、それはさておき、皇后と席の高さが一緒である事に不満を持った明治天皇が玉座の下にこっそり敷物を敷き少し高くするも、同じ高さであるべきだと唱える井上馨が敷物を引きずり出して放り投げる話は面白い。
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民法と憲法 成立までの流れや東アジア世界の動きが目まぐるしい。 今、憲法や法律が揺らいでいるのではないか。 揺らぐではダメだ。 変えるなら変える。 変えないなら変えない。 解釈だけで変えようとするのはずるいのではないか。 変えるためには国民一人一人が他人事ではダメな...
民法と憲法 成立までの流れや東アジア世界の動きが目まぐるしい。 今、憲法や法律が揺らいでいるのではないか。 揺らぐではダメだ。 変えるなら変える。 変えないなら変えない。 解釈だけで変えようとするのはずるいのではないか。 変えるためには国民一人一人が他人事ではダメなのだが。
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シリーズ日本近現代史の第2巻。西南戦争後の自由民権運動の胎動とその挫折や、国会開設、教育の普及、憲法発布、近代天皇制など、1870年代後半から1890年の国会開設前後までの歴史を、民衆の動きと絡ませながら説明している。 この時期は、民権家を中心とした知識人が登場し始める時期で、...
シリーズ日本近現代史の第2巻。西南戦争後の自由民権運動の胎動とその挫折や、国会開設、教育の普及、憲法発布、近代天皇制など、1870年代後半から1890年の国会開設前後までの歴史を、民衆の動きと絡ませながら説明している。 この時期は、民権家を中心とした知識人が登場し始める時期で、個人的に興味のある内容が多かった。特に、自由民権運動は、今の日本人に様々な教訓を与えてくれるように思った。 西洋文明国に並ぶため、必死に議論し考え、勉強する当時の人々の姿勢に学ぶことが多かった。 全体を通して、この時期は問題が山積みな時期であると実感した。そんな問題の結果だけに目を向けるのではなく、過程に注目して見ることで、今日自分たちが直面している問題に向き合う際のヒントになるのではないかと思う。再度読み込んで、今を生きるためのヒントを探究出来ればと思う。
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本書の肝は第3章で、所謂「農民民権」を憲法制定や民選議院を求める民主化運動としての「自由民権」として扱っていいのかどうかであり、もはや止めようがない近代化に逆行する封建時代的「仁政」を求める民衆運動をどう評価し、解釈すべきなのかという点が問われているように思える。
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※このレビューにはネタバレを含みます
2006年刊行。著者は東京経済大学助教授。◆本書の叙述対象の時期は、西南戦争後に本格化した自由民権運動期から帝国憲法制定まで。また、この時期におけるステークホルダーとして、政府、自由民権運動参画者の他に、自由民権運動とは距離を置いた(つまり自由民権運動とは利害を異にする)民衆を想定し、その三極構造を前提として論を進めていく。◆デフレ政策である松方財政の中での、日本の工業化の進展、経済発展との連関性については再度検討が必要と感じた。
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<目次> はじめに 第1章 自由民権運動と民衆 第2章 「憲法と議会」をめぐる攻防 第3章 自由主義経済と民衆の生活 第4章 内国植民地と「脱亜」の道 第5章 学校教育と家族 第6章 近代天皇制の成立 おわりに <内容> 岩波新書日本近現代史シリーズ第2巻...
<目次> はじめに 第1章 自由民権運動と民衆 第2章 「憲法と議会」をめぐる攻防 第3章 自由主義経済と民衆の生活 第4章 内国植民地と「脱亜」の道 第5章 学校教育と家族 第6章 近代天皇制の成立 おわりに <内容> 岩波新書日本近現代史シリーズ第2巻。自由民権運動から憲法の完成期を描く。普段の授業で自由民権運動と経済や文化を分けて教えているので、例えば国粋主義の三宅雪嶺、日本主義の陸羯南などがこの時期に提唱していたことに気がつかなかった(勉強不足ですね)。政権内部の矛盾も多く描かれ(征韓論はともかく、明治14年政変期や憲法制定をめぐる争い、外交や軍事に関するところまで、政権内部も一枚岩でなかったことがよくわかった。そう考えると伊藤博文の努力には頭が下がる。
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著者はおわりにで謙遜しているが、新書として提供しうる最高の内容だったと思う。 今の日本で当たり前だと想われていること、いわゆる日本近代文化というものが、この時代に根を持っていることが分かったからだ。 ・民権運動の中で、芸妓さんや視覚障害者も演説会を催し、参加していた。 ・「蛍...
著者はおわりにで謙遜しているが、新書として提供しうる最高の内容だったと思う。 今の日本で当たり前だと想われていること、いわゆる日本近代文化というものが、この時代に根を持っていることが分かったからだ。 ・民権運動の中で、芸妓さんや視覚障害者も演説会を催し、参加していた。 ・「蛍」「隅田川」は賛美歌が原曲、「君が代」も賛美歌経由の歌。 ・ナショナル・ミュージックと斉唱というスタイル。体操と万歳も。 ・福沢諭吉:身→家→国家の独立。明治以降の家制度は封建的というより近代国家に共通する家長制の一つ。 ・民法、商法のあと、憲法ができた。 ・「バンザイ」が集団としての一体感をつくった。
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明治維新後、どんな政治が行われ、人々がどんな生活をしたか。 意外に知らない人が多いのでは(私だけか・・・?) 当然江戸から明治になったからといって、急にすべてを変えるのは不可能。 紆余曲折あった。 何せ憲法ができるまで20年以上かかっている。
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明治憲法の成立史を、政府と民権派、そして民衆の3勢力の抗争史として描き出す。日本で国民国家がいかに成立していったかを知る上で絶好の著作。
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