相剋の森 の商品レビュー
熊谷達也を初めて読んだ。 調べた所、マタギ三部作というのがあって、まずはこれから読むのが良いらしいので、借りてみた。 図書館で借りて本を読む場合、古くは明治頃の本から最近の本までごちゃまぜになる。その場合、私は大きく5つの時代背景に分類する。1つは明治初期。江戸時代、幕末、明...
熊谷達也を初めて読んだ。 調べた所、マタギ三部作というのがあって、まずはこれから読むのが良いらしいので、借りてみた。 図書館で借りて本を読む場合、古くは明治頃の本から最近の本までごちゃまぜになる。その場合、私は大きく5つの時代背景に分類する。1つは明治初期。江戸時代、幕末、明治維新など大きく日本が変わった時代。2つめは1945年以前。階級制度があり、戦前の軍国主義・思想が強い時代。3つめは戦後から1970年頃までの復興、高度成長期と団塊の世代の時代。4つめは1970〜2000年頃のバブルとバブル崩壊。そして最後5つめは2000年以降の携帯電話が登場する時代。 そうすると今回の話は立派に携帯電話が登場する一番近年の部類に入る。なのに、マタギの話。都市部の人達が普通に意識無く便利に暮らしている現代でありながら山に入って熊を狩る人の話である。 この現代に於いて熊を食べる必要があるのか?と問いかける主人公美佐子が取材を通して知るマタギの世界。マタギで生計を立てるしか存続できない集落とその住人の生き様がある。そこには人間も動物の一員であり、生き物を殺生しないと生きてはいけないという当たり前の事を認識し、命を奪う責任を覚悟した人達の生き方がある。 しかし、現代日本では、社会に認められ難くなっている熊狩猟。その社会と自分達の生業の亀裂による苦悩など、今の時代だからこそ当てはまった葛藤があり、重くしかも興味深く読めた。 前にアイヌの人の本を読んだ時に知った。人間という動物が人間という動物らしく、地球上に住む一員として、己が生きて行く分だけの獣を殺生し、自然の神様を崇拝し常に神様に感謝して生きて行くことが、今の世の中では出来ない事を。そして私自身も便利な現代社会でないと生きて行けない事も。正解はないけど、知っているべき事実だなと思う。
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「自然と調和して生きる」 壮大なテーマを題材にした力作。伝統的な熊狩りと野生動物の保護という視点で読者に分かりやすい形で論争を提示している。主人公は女性のライター。シンポジウムにて偶然耳にした「山は半分殺してちょうどいい」という言葉。物語が進むにつれ、意識が少しずつ氷解していく。...
「自然と調和して生きる」 壮大なテーマを題材にした力作。伝統的な熊狩りと野生動物の保護という視点で読者に分かりやすい形で論争を提示している。主人公は女性のライター。シンポジウムにて偶然耳にした「山は半分殺してちょうどいい」という言葉。物語が進むにつれ、意識が少しずつ氷解していく。筆者渾身のマタギ三部作の第一段。衝撃の二作目と比べても遜色ない出来。ちなみに「相剋」とは 対立・矛盾する二つのものが互いに相 手に勝とうと争うこと。なるほど納得!
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考えさせられる物語ではあったけれども「邂逅の森」に比べてしまうと弱い。松橋富治を祖とするルーツの伏線もこじつけがましく感じてならない。
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シャトウーンのレビューで知った。マタギ三部作の一作目。作者のマタギと自然保護の両立への思いが伝わってくる。
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環境保全と狩猟という現代的テーマが非常に興味深い。「生物を殺してもびくともしないだけの豊かな自然」。まさにそれだ!
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邂逅の森に比べると物語としての物足りなさはあるけれど、得られるものは十分にある作品だと思う。 『自然との共生』と言った言葉は近年よく聞くが、人間が人間の都合で語るのであれば自然を置き去りにした話になってしまう。 人間が上位にあるのでは無く、自然と対等でなければ共生も共死意味を成さ...
邂逅の森に比べると物語としての物足りなさはあるけれど、得られるものは十分にある作品だと思う。 『自然との共生』と言った言葉は近年よく聞くが、人間が人間の都合で語るのであれば自然を置き去りにした話になってしまう。 人間が上位にあるのでは無く、自然と対等でなければ共生も共死意味を成さないんだろう。
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邂逅の森が圧倒的だっただけにこちらはそのおまけみたいな印象。。。つまらなくはない。しかしあの密度がもう一度ほしい!
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狩猟の本といえばたいてい猟師が主人公で、男臭くて当たり前。 そんな中で異彩を放つのがこの『相克の森』。 主人公は女性!しかも狩猟に関しては全く素人の雑誌編集者。 このヒロインがどのようにして狩猟に関わり、何を感じたのか。 彼女は猟師以外にも、愛護団体や行政の担当者、研究者などなど...
狩猟の本といえばたいてい猟師が主人公で、男臭くて当たり前。 そんな中で異彩を放つのがこの『相克の森』。 主人公は女性!しかも狩猟に関しては全く素人の雑誌編集者。 このヒロインがどのようにして狩猟に関わり、何を感じたのか。 彼女は猟師以外にも、愛護団体や行政の担当者、研究者などなど、多くの人物の意見や利害を知り、『マタギ』あるいは『狩猟』について考えていきます。 狩猟になじみの無い人にも読みやすいので、まず第一に薦めたい狩猟絡みの本であり、実情に詳しい人には元ネタ(モデルとなった団体や人物)がはっきり分かる(らしい)作品です。 とりあえず一度読んでみることをオススメします。 (星野)
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ちょっとだけマタギの世界や熊の事をを知っている人なら とても面白く読めて、解釈も深まる作品だと思う。 この本を手にとる前に まずはマタギのことをちょっとでも知ってから。 そして「邂逅の森」を読んでからトライすると 面白さ倍増。
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女性の心理描写がうまい。 考えさせる部分と、エンターテイメントのバランスが取れているので、読みやすかったな。
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