これは王国のかぎ の商品レビュー

荻原規子【著】

2014/12/04

普通の女の子で精霊で、という視点の取り込み方が新しくて、そのおかげで、これまで読んできた他の小説のコンテキストはこう見れば腑に落ちる、と気づいたりして、興味深かった。

火に親和性を持つ性質が、体から絞り出したあるもののためだったというモチーフが綺麗だった。児童文学らしい繊細な爽やかさだと思う。

それを取り戻せば、分かち難い悲しみが迫るけれど、受け入れることは、克服することの入り口に立ったということ。いつかしなやかになれる鍵を手にしたということなのかもしれない。

2014/10/24

　中学生のときか高校生のときか忘れましたが、学校の図書室で出会って以来、思い出深い一冊です。当時読んだときはハードカバーでした。
　当時読んだ本のことや内容は大抵忘れてしまっているのですが、この本についてはかなり覚えています。

　アラビアンナイトのような世界へ突然放り込まれて、王子様たちの波乱万丈な人生の一端に関わることになってしまった中学生の女の子。
　知らない世界でも物怖じしないさばけた性格の主人公が荻原さんらしくて好きです。ハールーンも。

　シェエラザードの存在や言葉が謎めいていて不思議な終わり方なのですが、入れ子人形のように、物語の外側にさらに物語が広がっていて……という考えはとても共感できます。むしろ、そういう価値観をこの本から貰ったのかもしれない。
　わたしたちの知覚する世界は宇宙の遥か彼方まで広がっているけれど、もしかしたら宇宙の向こうにあるのは、女の子の部屋かもしれないし、シェエラザードのいる場所なのかもしれない。わたしたちは、寝物語に語られる世界の中の一人物に過ぎず、ジャニが海の向こうへ行けなかったように、語り手によって世界に閉じ込められているのかもしれない。
　ハールーンたちのいる世界を一番内側、シェエラザードのいる世界がその外側、そしてさらに外側に「上田ひろみ」のいる世界があるとしたら、シェエラザードの言葉も、少し分かるような気がします。
　そう考えると、物語の外へ自由に飛び出していけるハールーンが、ちょっと羨ましいです。

　ところで、文庫版の表紙、とても好きです。
　読み終わったあとに見返すと、いろいろとこみあげてくるものがあります。　

2014/10/13

上田ヒロミ。15歳。片思いだった彼と親友がつきあいだし、失恋したて。傷ついて、自分をもやめたい、と思ったヒロミは、いつの間にか、訳がわからないことに、ターバンを巻いた青年・ハールーンに引っ張られて、アラビアンナイトのような世界に来てしまった。しかも、ヒロミは、人間ではなく、魔神族（ジン）だったのだ。

ハールーンと旅しながらも、魔神族初心者のヒロミは、、姿を消したり、飛んだり、物を出したり、物にのりうつったり・・・ジンっぽことをいろいろ出来るようになっていった。ハールーンは、ジンであるヒロミと旅をしていても恐れず、陽気で、自分の力を試す自由な旅をしていた。

しかし、ハールーンはある国の王子であった。自分がいれば、後継者争いが起きそうな国を一人で出た王子は、次期国王をして擁立したいお付き合いの者たちや、反対派の暗殺者たちに追われる身でもあったのだ。

ヒロミはこの世界で、ハールーンを助け、自分ももとの世界に戻れるのか？

アラビアンナイトも一緒におオススメしたい。

2013/11/07

学級文庫用に購入。
荻原規子さんというと、勾玉シリーズが思い浮かびますが、アラビアンナイトの世界でも上手ですね。

15歳の女の子が異世界に迷い込む。

これだけならよくある話！もう掃いて捨てるほど。

しかし、みずみずしい感性で描かれてるので面白いです。

ただ、歳をとりすぎたかやや入り込めませんでした。
ハールーンもラシッドも典型的すぎる・・・。

2013/09/06

好きです。主人公のイメージは制服で空を飛ぶし、たまに小鬼って言われるから「ラムちゃん」かな？空を飛べて、しかも姿が消せるので「Ｑちゃん」に近いかも？制限付きでモノが出せるので安物の四次元ポケットが付いたＱちゃんやな（見た目やなく、あくまでもイメージです）。最後まで安心して読めた１冊でした。

2013/07/18

15歳の誕生日を迎える前に失恋した少女が転寝から目覚めると、そこはアラビアンナイトの世界。
人間としてではなく魔神霊-ジン-としてその世界とかかわりを持っていく女の子の物語。

中公文庫では珍しいジャンルではないかと。
ライトノベルにありがちな異世界ファンタジー。

著者の本に興味があったけど、
「西の善き魔女」はシリーズ化してて長いから手始めにこちらを読んでみたけど・・・
うん、もういいかなって感じ。

2013/06/06

とても楽しめたのですが、個人的に最後の終わり方があまり好きではありませんでした。自分が中学生の時に出会って読んでいたら、印象は違ったかも。

2013/05/03

マギにハマった勢いでアラビアンナイトに触れたくなり、てっとり早く手元にあるこの本を数年ぶりに再読。

勾玉シリーズに中学生の頃に出逢い、荻原さんのファンに。
そのままの勢いで読んだのがこの作品でした。
現代の少女が異世界ーアラビアンナイトの世界で冒険する物語。当時はわたしも少女漫画大好きな中学生だったせいか、勾玉シリーズや西の善き魔女のような恋愛要素が殆どない（主人公がヒーローと結ばれるハッピーエンドではない）ことになんとなく不満でしたが(笑)、アラビアンナイトの世界観にはどっぷりはまっておりました。今考えると、ジャニはヒロインじゃなくてヒーローですね！
思春期の女の子の気持ちを思い出させてくれる物語。
でも、大人になっても女の子は自分の存在意義を探して生きているのかもしれないな…と思ったりもして。
それと、ハールーンは今でも憧れの登場人物。史実のハールーン・アッラシードの事も調べてしまったりして…。
やっぱり大好きで大切な本のひとつです。

今度は完訳の千一夜物語に手を出してみようかと思います。

2013/03/22

まず、表紙がとっても魅力的。

千夜一夜、アラビアンナイトの世界へ行ってしまう女の子の話。
この方の作品を読むのは初めてなのですが、
ハマりそうな予感！

千夜一夜物語はこのくらいファンタジー感ムンムンの方が私は好き。

2013/03/14

とてつもない良作。
ハラハラワクワクドキドキできて最初から最後までずっと楽しめた。
13年前にこれを見つけた自分の慧眼さにカンパイ。