1,800円以上の注文で送料無料

アジア/日本 の商品レビュー

4.6

5件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2016/07/04

明治以来の日本と「アジア」との「思想的連鎖」を粘り強く描き出している。他者を認め、助ける、そのことが実は他者との交流を阻むことになる、という他者との交流の難しさについて、普遍的な問題としても読める本。

Posted byブクログ

2013/02/05

 日本の「アジア主義」の理念を逆手に取りながら、その帝国主義に自省を促す孫文の「大アジア主義」講演の精緻な読解から説き起こして、明治初期から冷戦後に至るまでのアジアと日本の関係に付きまとう、侵略と連帯の両義性を、福沢諭吉の脱亜論から詳細に辿っていく議論は、非常に示唆に富む。近代の...

 日本の「アジア主義」の理念を逆手に取りながら、その帝国主義に自省を促す孫文の「大アジア主義」講演の精緻な読解から説き起こして、明治初期から冷戦後に至るまでのアジアと日本の関係に付きまとう、侵略と連帯の両義性を、福沢諭吉の脱亜論から詳細に辿っていく議論は、非常に示唆に富む。近代の衝撃を受け、急速な近代化の道を歩んだた日本が、「文明化」を掲げ、連帯の姿勢を装いながら、結局は植民地侵略を正当化してしまう論理──そこに安重根は「東洋平和」に対する裏切りを見て取ったのだ──が、ネットワーク的に波及しながら、帝国日本の「アジア主義」を下支えしてしまうという構造は、被支配者にまで浸透していく。著者はそのことを見届けたうえで、こうした帝国の構造に対する内在的な批判としての「帝国改造論」、「文明」に対抗する吉野作造らの「文化」の論理、昭和初期の批判的知識人による「東亜協同体論」を、それに対する朝鮮半島の呼応、そこから発する独立の論理なども視野に入れながら読み解いていく。そのうえで、こうした批判的知識人の言論の蹉跌と弾圧が、戦後の新たな植民地政策の波及に結びついているさまを描き出す議論は、非常に鮮やかだ。文献紹介も充実しており、幾重にも傷が刻まれ、引き裂かれ、それとともに矛盾と葛藤を抱え込んできた歴史の現場としてのアジアを見つめ直す足がかりとなる一書と言える。

Posted byブクログ

2010/07/22

講義をフォローする形での参考書として。通年にわたって受講生するにおいての指南書。そこからさらに膨らませて論じていくことができるか、それがレポート課題を進めていく上でのポイントとなりそう。

Posted byブクログ

2013/02/17

近代におけるアジアと日本の関係を述べた本。日本が「脱亜論」以前の「興亜論」を唱えていた時点で、そこにはすでに「植民地主義」が内在していたと提言する。

Posted byブクログ

2009/10/07

いろいろと考えさせられるエッセンスがギュッと詰まったとてもよく勉強になる本だった。竹内好のアジア/日本論を受けて、‘アジアを西洋列強から救う日本’というナルシシズムの纏わりついたアジア主義者ではなく、また従来の‘アジア主義’の系譜に連なるような人も避け、その他の積極的にアジアの声...

いろいろと考えさせられるエッセンスがギュッと詰まったとてもよく勉強になる本だった。竹内好のアジア/日本論を受けて、‘アジアを西洋列強から救う日本’というナルシシズムの纏わりついたアジア主義者ではなく、また従来の‘アジア主義’の系譜に連なるような人も避け、その他の積極的にアジアの声を聞き、コミットし変革・改革しようとした人たち(福沢諭吉・勝海舟・尾崎秀実・矢内原忠雄など)の矛盾・葛藤も含めた言説を、当時のアジア各国とどのような相互作用があったのかという話とともに、19世紀後半から冷戦後までを紹介しています。やや引っかかってしまったのが‘アジア主義’という言葉で、竹内の一応の定義によると、それは実質内容を備えた客観的に限定できる‘思想’ではなく状況に応じて変化する傾向性ともいうべき、アジア主義と呼ぶ以外に呼びようのない‘心的ムード’で少なくともアジア諸国の連帯の指向を内包している、とあるのだけれど、著者はどう意味づけして本書で著者が取材した人物がどう差別化されるのかという点が、序章で少々混乱してしまった。。。あと甲申政変・甲午改革の失敗は、本書が言うように確かに日本側からすれば挫折であり脱亜の契機となったけれど、朝鮮側からすれば日本に依存した少数のエリートによる国民的合意の無い、上からの改革運動から脱皮して大衆化したより啓蒙主義的な独立協会の運動に発展したという肯定的な側面は否定できないと思うのだけれど。‘相互作用’や‘絡まりあい’の範囲を広げていくと、なかなかなかキリが無いと思うし、個人的に多分やや朝鮮贔屓なのでこういうところが気になったりもするのかもしれないけれど。

Posted byブクログ