ヴェネツィアに死す の商品レビュー
高名な小説家が運命に引き寄せられて旅した先のヴェネツィアでの滞在で出会う美少年への恋と破滅。 主人公が織りなす内なる感情は持てる知識を以て飛躍し、混乱の域に達するが如し。同性への愛情がこの時代にあって相当にインパクトがあったと思われるが現代のマイノリティを肯定する風潮ではその驚き...
高名な小説家が運命に引き寄せられて旅した先のヴェネツィアでの滞在で出会う美少年への恋と破滅。 主人公が織りなす内なる感情は持てる知識を以て飛躍し、混乱の域に達するが如し。同性への愛情がこの時代にあって相当にインパクトがあったと思われるが現代のマイノリティを肯定する風潮ではその驚きは失いつつも、あまりに美しい少年への思いを共感できるか否かで評価は変わるような気もする。 幾重にも重ねられた言葉で綴る文体はセンスを感じるが矢張り読みにくい。けれど何か惹かれるものがあるのも確かです。 途中までは旅の紀行と出会いが描かれタイトルの予感を全く感じないが、伝染病の噂からまさかこれで?と思わせつつ、最後のページで潔く完結するところがなんとも印象的。いちごにあたったのかな?
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アッシェンバッハは、才能があり決して怠惰を覚えなかった作家です。 そんなアッシェンバッハは、散歩中に異様な風采の男を見たことで、新奇な異郷への憧れ、解放と負担の軽減と忘却への欲望を感じ、“そうだ、旅に出よう(p16)”と考えます。 そして、ヴェネツィアに訪れます。そこで、ポー...
アッシェンバッハは、才能があり決して怠惰を覚えなかった作家です。 そんなアッシェンバッハは、散歩中に異様な風采の男を見たことで、新奇な異郷への憧れ、解放と負担の軽減と忘却への欲望を感じ、“そうだ、旅に出よう(p16)”と考えます。 そして、ヴェネツィアに訪れます。そこで、ポーランド人の、高貴な時代のギリシア彫刻を思わせる十四歳くらいの少年タッジオを見て、この少年が完璧に美しいことに気づいて愕然とします。 アッシェンバッハは、タッジオを目で追い、後を追いかけることもします。タッジオを愛していたのです。 しかしヴェネツィアの町の中では、不潔な出来事(コレラ)が進行していました。アッシェンバッハは、イギリス人から事実を教えてもらい、ヴェネツィアから出発した方がいいと忠告されますが、この状況から逃げ出す気などさらさらありませんでした。“いったん自分から外れてしまった者は、再び自分に戻ることを何よりも嫌う(p131)”のでした。 そうして、破滅へと至ります。 最初に現れた異様な男から始まり、幻想的でふわふわとするような雰囲気もある物語でした。
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トーマス・マンの代表的中編のひとつ。 ヴィスコンティの映画でも有名。映画はテレビでちらっと見たことがある。 内容は、よく知られているとおり、確固とした名声を築いた初老の小説家が、避暑地のヴェニスで美少年に魅せられるというもの。 20世紀を代表する大小説家であるトーマス・マンが、...
トーマス・マンの代表的中編のひとつ。 ヴィスコンティの映画でも有名。映画はテレビでちらっと見たことがある。 内容は、よく知られているとおり、確固とした名声を築いた初老の小説家が、避暑地のヴェニスで美少年に魅せられるというもの。 20世紀を代表する大小説家であるトーマス・マンが、堅実で緻密な描写で、一人の芸術家の破滅を描いた作品。 おそらく傑作なのだろうが、個人的にはあまり面白くなかった。読んでも読まなくてもどうでもいいと思った本。 ドイツのくたびれたインテリおやじが恋する相手が美少年ではなくて美少女だったら、もう少し関心がわいたかもしれないが。 それに翻訳がどうも、イマイチなような気がする。 この光文社古典新訳文庫は、世界の名作といわれている作品を、新しい飜訳で紹介しようという画期的な企画で(いま、息をしている言葉で、もういちど古典を!)、ラインナップも飜訳の出来映えも素晴らしいの一言。 できればこの文庫で出る本は全部読んでみたいと思っているのだが、飜訳にはじめて不満を感じた。どこが、とははっきりいえないのだが。 そういえば、昔この作品は読んだはずなのだが、内容はすっかり忘れていた。昔もやっぱり退屈だなあと思いなが読んだんだろうか。それなら2度ムダな時間を使ったことになるなと思いながら持っている岩波文庫を見てみたら、20年以上前に一度読んでいることが判明。 しかも、アンダーラインなんか引いていて、けっこう感動した気配がある。 そうだったのか。 しかし、いったい何に感動したんだろう。 むかしは美少年方面に関心があったんだろうか。 チェックしている部分を読んでみると、どうやらその方面ではなくて、主人公のストイックな姿勢に関心を持ったようだ。その部分を読んでみると、なぜ新しい飜訳に不満を持ったのかわかった。 昔読んだ岩波文庫版。訳者は実吉捷郎。 この部分は、トーマス・マンの作品中でも有名な部分。 アッシェンバッハは一度、あまりめだたぬ個所で、現存するほとんどすべての偉大なものは、一つの「にもかかわらず」として現存し、憂患と苦悩、貧困、孤独、肉体の弱味、悪徳、情熱、そのほか無数の障害にもかかわらず成就したものだ、と端的に言明したことがある。(p18) 新しい飜訳では、 アッシェンバッハはかつておよそ目立たない箇所で、現存するほとんど全ての偉大なものは「にもかかわらず」として存在する、悩みや苦痛、貧困、孤独、病弱、悪徳、情熱、そして何千もの障害にもかかわらず成立したのだと、ダイレクトに語ったことがあった。(p21) ほとんど同じような文章。 ただ、新訳版は、最後に「ダイレクト」なんてカタカナを使ったせいで、文章の格調が台無しになっている。まるで博多の森を「レベスタ」といってしまったときのようなガックリ感が漂う。 どうやらそういうセンスのなさと、この作品全体を流れる高い格調と美的な緊迫感があっていないようだ。 あるいは、 岩波文庫版 一体世の中に、弱さのもつ壮烈以外に、壮烈というものがあるだろうか (p19-20) 新訳版 そもそも弱さのヒロイズムの他にどんなヒロイズムがあるのか (p23) 「弱さのもつ壮烈」というとなんとなく伝わってくるものがあるが、「弱さのヒロイズム」となると、なんのことやらさっぱり。 違いはカタカナ使用の有無だけではないようで、たとえば、 岩波文庫版 孤独でだまりがちな者のする観察や、出会う事件は、社交的な者のそれらよりも、もうろうとしていると同時に痛切であり、かれの思想はいっそうおもくるしく、いっそう奇妙で、その上かならず一抹の哀愁を帯びているものだ (p39) 新訳版 孤独と沈黙の人が行う観察や、その人が出会う出来事は、仲間の多い人の観察や出来事よりも曖昧であり、同日に切実でもある。そういう人の考えはより深刻で、変わっていて、どこかに悲哀の影がさしている (p48) 前者は、おおそうなのかと思わず頷いてしまいそうな名文句、後者はたんなる叙述にすぎない。 どこでそういう違いが出てくるのか、その秘密はよくわからないが、岩波文庫版では、漢字とかなの選択に一語一語こだわっていることはうかがえる。 こう書いていて、実吉訳ならばもう一度読んでみようという気にはなってくるな。
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【本の内容】 高名な老作家グスタフ・アッシェンバッハは、ミュンヘンからヴェネツィアへと旅立つ。 美しくも豪壮なリド島のホテルに滞在するうち、ポーランド人の家族に出会ったアッシェンバッハは、一家の美しい少年タッジオにつよく惹かれていく。 おりしも当地にはコレラの嵐が吹き荒れて…。 [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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同性愛の要素はあるけれども、 決して露骨なものではなく、 美の象徴、といった感じのもの。 その時代ではピークを過ぎた作家が 出会うことになった輝ける存在。 その魔力ゆえに、彼は彼が感じえていた 動物的勘を鈍らせて、結局は最悪の 事態を招いてしまいます。 人は誰しもがこういった危険をはらむもの。 こういった例ではないにしろ、 いつ、どういったことで、「どうしてこうなった」 になることか。 だけれども、最悪の事態と引き換えに、 堪能できた一時の夢は、美しいものでした。
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うーん、この訳は少々いただけん。 読むのに骨が折れるとは、新訳を選んだ意味が無い。 まぁ内容も必ずしも現代性を持ち併せていないというか、この作品を遥かに超えた現実があるからなぁ、、、 しかしヴィスコンティは凄いな、映画が原作を完全に超えた作品ってなかなか無いですよ、異様な映画で必...
うーん、この訳は少々いただけん。 読むのに骨が折れるとは、新訳を選んだ意味が無い。 まぁ内容も必ずしも現代性を持ち併せていないというか、この作品を遥かに超えた現実があるからなぁ、、、 しかしヴィスコンティは凄いな、映画が原作を完全に超えた作品ってなかなか無いですよ、異様な映画で必見の一作かと。
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懸命な仕事ぶりで多大な業績をあげた初老の芸術家が、保養先で美少年に出会い、恋に落ちていく様子を描く。それまでの人生からすればまるで逆の生き方、すなわち欲望のままに生き、堕落して行くさまはデカダンスと言えるが、一方で人間らしくまっすぐな生き方であるとも言える。一貫してゆったりとした...
懸命な仕事ぶりで多大な業績をあげた初老の芸術家が、保養先で美少年に出会い、恋に落ちていく様子を描く。それまでの人生からすればまるで逆の生き方、すなわち欲望のままに生き、堕落して行くさまはデカダンスと言えるが、一方で人間らしくまっすぐな生き方であるとも言える。一貫してゆったりとした調子で物語は進んでいくが、その結末はあまりにも甘く、悲しい。
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面白みのある作品ではないが、魅力的である。美少年に対する想いが延々と綴られるので、若干人を選ぶ本ではある。映画のほうが良いかもしれない。訳者別に読み比べる価値はある。
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ヴェニスではなくてヴェネツィアに死す。そんなところまで現代的な訳なのがちょっとだけおかしい。 話の中身は単純というか、タイトルで語り尽くされている。アッシェンバッハ老がヴェネツィアにやってくること、老いらくの恋のためにその地を去ることができずに死を迎えること。そんなに単純なのに人を惹きつけてやまないのは、そんな話の古典であるからこそ。 中編ということもあって、岩波でもそんなに読みにくいわけではなかったが、現代語訳をウリにしているだけあって、読みやすさはひとしお。そんなこともあって星は文句なしの5つ。
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