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族長の秋 他6篇 の商品レビュー

4.1

18件のお客様レビュー

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2012/12/02

表題の「族長の秋」ほか6編を収録。 「大きな翼のある、ひどく年取った男」、「奇跡の行商人、善人のブラカマン」、「幽霊船の最後の航海」、「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」、この世でいちばん美しい水死人」、「愛の彼方の変わることなき死」とタイトルだけでは何が何...

表題の「族長の秋」ほか6編を収録。 「大きな翼のある、ひどく年取った男」、「奇跡の行商人、善人のブラカマン」、「幽霊船の最後の航海」、「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」、この世でいちばん美しい水死人」、「愛の彼方の変わることなき死」とタイトルだけでは何が何だか・・・。 ま、それはいいとして、「族長の秋」は非常に興味深い小説であった。 というのも、この世界の有り様を文学的アプローチでどこまで迫れるかを試みた意欲的作品であるからだ。 物語は、南米某国に君臨する独裁者の長い長い夏を描いている。 孤独な権力者の虚無と、腐敗に満ちた大統領官邸と、彼をとりまく様々な思惑。 砲艦外交のイギリス。平和の使者の仮面をかぶったバチカン。オランダ人からフリーメーソンまで! 全体的に皮肉なエピソードと下品な描写、乱暴な視点の切り替えによって、読み手を戯画的イメージの渦へ誘う。 物語のモチーフ上、政治的なメッセージがが随所にちりばめられた印象を受けるのは、南米某国を擬人化しつつ、ひとつの時代を夏に喩えているからであろう。 ひとつの物語が終焉し、秋のはじまりと共に訪れるのは、豊かな実りの時代か?長い雨があがるのを待つ、忍従の日々か? 「やっぱり、まだまだ世界は人間を幸せにしてくれない!」 率直にそう思った一冊でした。

Posted byブクログ

2014/01/07

冒頭に収録された短編集がなかなか面白かった。 そのタイトルだけでも価値があると思う。 「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」なんて、読まざるを得ない。 内容が一番好きだと思ったのは「世界でいちばん美しい水死人」。 なんだか可愛らしかった。 タイトルになっている...

冒頭に収録された短編集がなかなか面白かった。 そのタイトルだけでも価値があると思う。 「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」なんて、読まざるを得ない。 内容が一番好きだと思ったのは「世界でいちばん美しい水死人」。 なんだか可愛らしかった。 タイトルになっている長編はというと、とにもかくにもマルケスらしい作品。 淡々と、あるどうしようもない権力者の半生を事細かに描いている。 権力とは一体何だろう、その実質とは、とこの世に語りかける作品……とかではない。 滑稽で、現実離れしていて、作り物めいた、しかしこの上なく人間らしい物語。 読み終わって孤独しか残らない。

Posted byブクログ

2012/04/06

報われない事、圧倒的な孤独、愛と暴力、時間軸、 そんなのがグワーーー!って押し寄せてくる。 決して面白いとは言えないのに、 読後の脱力感がとんでもなく気持ちいい。

Posted byブクログ

2021/12/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『エレンディラ』がおさめられている本書『族長の秋』は、新潮社から順次発刊されている『ガルシア・マルケス全小説』シリーズのうちの一冊で、 「大きな翼のある、ひどく年取った男」 「奇跡の行商人、善人のブラカマン 」 「幽霊船の最後の航海」 「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語 」 「この世でいちばん美しい水死人」 「愛の彼方の変わることなき死」 「族長の秋」 の計7編で構成されている。 既出の他の出版社や文庫本の中に編入されて既読のものもあったが、 読んでいなかった「大きな翼のある、ひどく年取った男」 「奇跡の行商人、善人のブラカマン 」には感心した。 ガブリエル・ガルシア=マルケスの発想には驚くが、完璧な短篇と完璧な長編を自在に書き上げる能力の高さには舌を巻く。 「大きな翼のある、ひどく年取った男」・・雨が3日降り続いている海辺の町にある家の中庭に年老いた男が倒れていた。 その男を見た隣家の女はその男は天使だと断言する。 天使というのは、天使のようなという言葉の意味するような可愛い無垢なもののはずなのに、この一家の中庭のぬかるみでもがいているのは屑屋のような風体の小汚いじいさんなのだ。 「天使のような」という既存観念をびっくりするような形でひっくり返すガルシア=マルケスの魔術ははじまったばかり。 それから天使は、鶏小屋で飼われ、見世物にされ、水痘に罹患し、古代ノルウェー語を時々うめき、茄子入りのパン粥を食べ、次第により年老いていきつつ、或る日、飛び立ってしまう。 家の者や街の人々は、背中に翼をもつこの人物を「天使」と認識しているものの鶏小屋で見世物にし、石を投げ全く天使の扱いをしない。 天使とはいみじくも神の使いである。涜神をも恐れずというよりもあまりに天使的でないこの男は、人々にとって一過性の熱狂を起こすコマに過ぎないのである。 「奇跡の行商人、善人のブラカマン 」・・自家製の毒消し薬を売る行商人が自分の薬がどれほどよく効くかを証明するため、猛毒の蛇を自らに噛み付かせた。 すると、行商人は毒にやられて時間がたつごとに死は免れないような状態に陥る。その描写のリアルさと卑俗さといったら恐ろしくなるほどで、そしてまたこの行商人が奇蹟のように甦るさまは、忙しなく驚愕の事柄をポンポン繰り出すガルシア=マルケスならではの展開で、彼の世界をすでに知ってる読者にとってはワクワク感を感じるのだ。 「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語 」は、祖母が孫娘に売春をさせ、 「この世でいちばん美しい水死人」は、海に流れ着いた男性の死体がとてもきれいで似合う名前をあてがったり、勝手な想像で楽しんだり、 「族長の秋」は、破天荒な人生を送る大統領を複数人の語り手が語る。 どの作品も珠玉の作品である。 

Posted byブクログ

2010/10/04

『族長の秋』は文句なく傑作。やはりこの人は長編作家だな、という気がする。 ひどく読みにくいので、読み返すことは多分ないだろうけれど、それでも読む価値は十分にあると思う。 他には『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』が素晴らしかった。 図書館にて。

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2009/10/04

権力を引き継いで既に百年経た一国の大統領の孤独な老人の話。 時間の流れへの逆行と順行を繰り返しながら展開する話で、「百年の孤独」のような直線的な時間軸で語られていないため複雑な構成だが数々のブラックなユーモアの挿話が読み進める手助けになる。こういう日を跨がないと読めない話は読後...

権力を引き継いで既に百年経た一国の大統領の孤独な老人の話。 時間の流れへの逆行と順行を繰り返しながら展開する話で、「百年の孤独」のような直線的な時間軸で語られていないため複雑な構成だが数々のブラックなユーモアの挿話が読み進める手助けになる。こういう日を跨がないと読めない話は読後の喪失感というか終わってしまった感じが重くいい体験だ。薄い本を乱読するのも快楽があっていいがやはり定期的に重厚な本を読まなければと思う。

Posted byブクログ

2009/10/04

百年の孤独が長編だったので、短編なら読みやすかろうと図書館で借りた本。 短編でも濃さはかわらない! ガルシア=マルケスの底力を見ました。

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2009/10/04

ラテン・アメリカ痴れ物の方々と言った趣よりも母親以外誰も信じれなく疑心暗鬼で出鱈目とも思える独裁ぶりが光る。 あるときは小心、あるときは大胆。大統領の孤独は周囲の取巻きの不実さにもありそう。渦巻く言葉の混沌とした洪水の中で独裁者を表現していく手法はたまらなく面白い。

Posted byブクログ