滴り落ちる時計たちの波紋 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
平野啓一郎くんの短編集。 父親の死とその後の心の動きを綴った“初七日”と、兄と幼い弟の休日を描いた“波打つ磯の幼い兄弟”は、私のふるさと、北九州が舞台で北九州の方言が多用されている。 方言がすばらしい! (北九州人以外の人に理解できるのかなー)。 “最後の変身”はカフカの“変身”に影響を受けている引きこもり男性のつぶやき。 横書きで書いてあるけど、これは彼がパソコンで自分のことを綴っている…っていうスタイルのようだ。 読んでいると、引きこもっている男の気持ちにかなり同調してきてしまい、怖い。 そのほか、“珍事”、“閉じこめられた少年”という作品もとても面白かった。 “閉じこめられた少年”は、ずっとイジメを受けてきた少年が反撃に出て相手をナイフで刺したあと、逃走しているところを描いているのだけど、読んでいると彼が“閉じこめられている”ところに自分もはまりこんでしまい、これも怖いです。 同じところをぐるぐる回っちゃうのです。
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短編集。瀕死の午後、波打つ磯の幼い兄弟、初七日が良かった。何気ない日常の風景が強烈なインパクトをもって胸に迫ってくる。論理的的確な描写は美さえ感じる。重厚で力のあるフレーズに圧倒された。
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個人的に興味深かったのは、カフカの「変身」をモチーフに、引きこもり青年の独白調で綴られた「最後の変身」です。 自分が「変身」したのは、肥大した自尊心と外殻に囲われた腐りきった中身、そして自らに課してきた「役割」であるとし、自らの半生を振り返る。 (ちなみに「役割」というのは、後の...
個人的に興味深かったのは、カフカの「変身」をモチーフに、引きこもり青年の独白調で綴られた「最後の変身」です。 自分が「変身」したのは、肥大した自尊心と外殻に囲われた腐りきった中身、そして自らに課してきた「役割」であるとし、自らの半生を振り返る。 (ちなみに「役割」というのは、後の平野作品に出てくる「分人」の概念に近しいのかな) ただの独白なのに、これほどまでに臨場感と迫力を出せるのは、やはりすごい筆力だと思います。ここだけ横書きなのも面白くて、「インターネットの日記なんかを覗き見ている感覚」なんだそう。なるほどなるほど。 他の作品、特に小品とも呼べる短編については、大胆な比喩も多く、正確に意味を把握するには至っていませんが、何か現代社会の脆さを表現しているようで不思議と感心してしまいました。
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11/13 中篇はイマイチだな、という印象。 実験的な試みをする短編か、作りこまれた長編か。 横書きの意図が解説のとおりなら些か安直かと。
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9つの短編の中で、私は「最後の変身」が一番興味深かった。 カフカの変身への考察を交え、主人公の現実を描くという発想にも斬新さを感じたし、主人公がただダラダラと語っているかの様にみえて社会風刺や皮肉や的確な主張を散りばめる文章力が凄いとしか言いようがなく、ただただ感嘆するばかりの本...
9つの短編の中で、私は「最後の変身」が一番興味深かった。 カフカの変身への考察を交え、主人公の現実を描くという発想にも斬新さを感じたし、主人公がただダラダラと語っているかの様にみえて社会風刺や皮肉や的確な主張を散りばめる文章力が凄いとしか言いようがなく、ただただ感嘆するばかりの本当にすごい作品だった。
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この方はほんとに賢いんだろうなぁと思う。 でもちょっとズシっとくる。。 たまには頭使ってシリアスになりたいときにお勧めです。
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『最後の変身』はこの短編集の中でも半分程度を占めるが、それだけに、好い感じに狂気を含んでいる、読み応えのある小説となっている。
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ヒトと社会をいろんな角度から描き出す、 なんだか絵画みたいな本。 「最後の変身」はその分ちょっと安直な気がしたけど、 カフカの『変身』論として現代社会を描くって、興味深い。 読書に頭の休憩とか浄化とか癒しを求めるあたしには、 不向きな作家さん ではある。 でも、社会を投げ捨て...
ヒトと社会をいろんな角度から描き出す、 なんだか絵画みたいな本。 「最後の変身」はその分ちょっと安直な気がしたけど、 カフカの『変身』論として現代社会を描くって、興味深い。 読書に頭の休憩とか浄化とか癒しを求めるあたしには、 不向きな作家さん ではある。 でも、社会を投げ捨てずに闇を見つめる視点を、感覚を、 ひさしぶりに思い出した。
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平野作品を介しての平野啓一郎とのコミットは日蝕以来の2度目(ブログやエッセイ、授業では度々お世話になる!)。 ストーリとしては、大半の人が退屈してしまう様な…。しかしながら、偏狭なまでに多種多様な形式で書かれた短編達には胸を突かれた。(ただ、面白いかと言われると返答に困ります)本...
平野作品を介しての平野啓一郎とのコミットは日蝕以来の2度目(ブログやエッセイ、授業では度々お世話になる!)。 ストーリとしては、大半の人が退屈してしまう様な…。しかしながら、偏狭なまでに多種多様な形式で書かれた短編達には胸を突かれた。(ただ、面白いかと言われると返答に困ります)本中で一番の見せ場は現代風ザムザの独白「最後の変身」だと思うが、丹念に設定されたサラリーマンからひきこもりへと転身していく主人公の語り口がどうも肌に合わず、×。個人的には「瀕死の午後と波打つ磯の幼い兄弟」(読みやすく、意図と形式が綺麗にまとまっている印象)と「バベルのコンピューター」(知識のない自分には予習又は復習が必須でしたが)があったので、読んで良かったです。 今度はストーリのある平野モノが読みたい!
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今を生きる作家の中で、私にとって一番魅力的な作家です。 若いだけに荒削りだったり、スタイルが確立しなかったりなんだけど、才能のほとばしりがすごい! 天才の才気を、これでもかこれでもかと見せつけるエネルギーだけでも圧倒的。 これからどこに進んでいくのか、リアルタイムで楽しませ...
今を生きる作家の中で、私にとって一番魅力的な作家です。 若いだけに荒削りだったり、スタイルが確立しなかったりなんだけど、才能のほとばしりがすごい! 天才の才気を、これでもかこれでもかと見せつけるエネルギーだけでも圧倒的。 これからどこに進んでいくのか、リアルタイムで楽しませてくれる稀有な存在です。 この1冊も、ものすごく挑戦的で挑発的。 文体とか構成とか、わかりやすい形で見せつけながら、底が透けて見えないのはさすが。 「最後の変身」は現代社会論としてもすごい上に、カフカの『変身』論としてもものすごく面白い それはそうとして、タイトルの「時計たち」。人ではないものを「たち」を使って複数を表す表現に私はものすごく違和感があるんだけど、平野さん、本気で使っているんだろうか?レトリックだろうか。めちゃくちゃ気になる。
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