眉山 の商品レビュー
鮮やかな物語
気風のいい、姐御肌の母。その人の命があと僅かと知り、娘は故郷に帰る。そこで知った、母の想い。見たことのない父のこと……。華やかに美しい祭りの様子、凛とした母の姿が浮かび上がる文章。鮮やかな物語だ。
yui
愛の貫き方にも色んな形があるけど、母は大好きな人への思いを心に閉じ込め、一切口に出すことはなく、女として力強く生きること、凛として生きることで思いを貫いた。本当に、強く逞しい人だ。 わたしは母親とはあまり仲が良くない方なんだけど、母と娘を扱った作品にはめっぽう弱い。読んでる間、...
愛の貫き方にも色んな形があるけど、母は大好きな人への思いを心に閉じ込め、一切口に出すことはなく、女として力強く生きること、凛として生きることで思いを貫いた。本当に、強く逞しい人だ。 わたしは母親とはあまり仲が良くない方なんだけど、母と娘を扱った作品にはめっぽう弱い。読んでる間、こんなに泣けて泣けて仕方のない作品は久しぶりだった。 静かな場面展開と、反対に阿波踊りの熱気溢れる様子が静と動の対比になっていて良かった。
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味わい深く読み心地のよい作品でした。 通勤の往復で終わるくらいの短い小説で、セリフに込めた思いがひしひしと伝わってきて、作者らしさが本当溢れてます。カッコいいとか可愛いとか綺麗とか、色んな美しさを感じました。良い作品だなぁ〜。読んで良かった。
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10年前に読んだつもりだったが、恐らく、眉山と言う言葉が残っていただけのようだ。 地方を舞台にされた物語は描写が想像でき、一時でも都心から離れることができる。
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泣ける。 そしてカッコいい。 未読の人は「何じゃそりゃ?」と思うかもしれないが、これはカッコよくて泣ける作品なのだ。 娘の咲子の目を通して描かれる“神田のお龍“の半生記。 カッコよさにも色々ある。颯爽としたヒーローのカッコよさ。高倉健のような寡黙な渋いカッコよさ。お龍さんは“粋...
泣ける。 そしてカッコいい。 未読の人は「何じゃそりゃ?」と思うかもしれないが、これはカッコよくて泣ける作品なのだ。 娘の咲子の目を通して描かれる“神田のお龍“の半生記。 カッコよさにも色々ある。颯爽としたヒーローのカッコよさ。高倉健のような寡黙な渋いカッコよさ。お龍さんは“粋“なカッコよさだ。 タイプは色々あれどカッコいい人に共通しているのは優しいということ。お龍さんも強気を挫き弱きを助ける優しさに溢れている。キップがよくて強くて優しい。だから“粋“だ。こんなカッコいいお龍さんのお店があれば是非行ってみたいと思わせられる。 作者のさだまさし自身が漢気があって優しい“粋“な人だ。彼の優しさと、詩人としての卓越した言葉の使い方によって「精霊流し」「解夏」「アントキノイノチ」どの作品でも泣ける。 本作も読後が爽やかになること請け合いの佳作。
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舞台は徳島。江戸っ子の母は、不倫でできた子を誰にも迷惑をかけず、徳島で産み育てる。高校生になった娘に、問い詰められ、大好きな人の子だと包み隠さず説明する。母はお店を切り盛りしており、言うべきことは、はっきり言う。ストレートな言葉には、愛があり、かっこいい。育てるための言葉。気づ...
舞台は徳島。江戸っ子の母は、不倫でできた子を誰にも迷惑をかけず、徳島で産み育てる。高校生になった娘に、問い詰められ、大好きな人の子だと包み隠さず説明する。母はお店を切り盛りしており、言うべきことは、はっきり言う。ストレートな言葉には、愛があり、かっこいい。育てるための言葉。気づかせるための言葉。何でも自分で決め、貫き通す。死後の献体まで。全てに愛が詰まっていた。いつか阿波踊りを見に行ってみたい。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
道ならぬ恋で産んだ子を、見知らぬ土地で一人育てていくと決意した「神田のお龍」 一本気で気が強い、その気っ風の良さは男女問わず惹きつける魅力がある。そんな「神田のお龍」が臆面もなく、大好きであったと言い切る姿に、彼女は死ぬまで「女性」であったのだろう。 どうして彼の郷里に移り住んだのか、何故父親の人柄をを娘・咲子に話さなかったのか、何故献体という選択をしたのか。 添い遂げることは叶わなかった。けれど、この想いは一生自分の胸の内に秘め、その想いと一緒に生きていく。たとえ、死ぬまで彼と生きる道が交わることはなくても。この「想い」だけが、彼からもらった唯一自分だけのものだから。そんな覚悟を「神田のお龍」の生き様から感じた。 彼の郷里に移り住んだことも、献体に願い出たことも、何もできない自分からの健気なまでの愛情。 本当に死ぬ迄恋心と添い遂げるつもりだった。 それに対して、最期の邂逅では一度たりとも目を合わせない。命をかけて恋と覚悟を貫いていて、なんて美しい人生の幕引きだろう。 それ程までに愛した人に、目を合わせることもせずに、なんて苦しい恋だったのか。けれどそれが「神田のお龍」の幸せだったのだろう。 最後の「二本のパイプ」も、とても感動する。 献体として協力してくれた方々にも、人生があったのだ。人の命なくして、医学の発展はないのだな。
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安定して爽やかな感じ。映画も見たい。主人公のお母さんのビジュアルが晩年のオードーリー・ヘップバーンで脳内再生されてた。なぜ?とも思うけど割と似合ってると思う。
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神田のお龍の生き方がカッコ良かった。また、最期を迎える母を想って辛い中、周囲の人々と冗談を交えつつ会話する主人公の描写が生々しく、同情心が芽生えた。 表現に関しては、セミや風、雷、囃子、居酒屋などの音を用いた心象描写が秀逸。
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凛とした素敵な女性とその娘の物語。 登場する皆が優しく温かな人たちで安心して読めた。 徳島の自然や阿波おどりの情景も目に浮かんだ。 最後に載っている解剖実習感想文集の文がすばらしく、調べてみると実在するさださんの友人の医師の方だった。
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