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アドルフ の商品レビュー

4.1

16件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    8

  3. 3つ

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  4. 2つ

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2024/03/10

正直完全にこの小説を理解できているかと聞かれれば、いいえと答えるだろう。内気な少年が本気である女性に恋に落ちる話であるが、求められれば求められるほど、少年の心は離れていくと言う恋愛の生々しさを表現する小説である。人間の恋愛とはなぜここまでも面倒くさいのかと考えさせられる物語であっ...

正直完全にこの小説を理解できているかと聞かれれば、いいえと答えるだろう。内気な少年が本気である女性に恋に落ちる話であるが、求められれば求められるほど、少年の心は離れていくと言う恋愛の生々しさを表現する小説である。人間の恋愛とはなぜここまでも面倒くさいのかと考えさせられる物語であった。

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2022/04/17

コンスタンはアドルフという主人公に自分を投影し、自分の愚かなところを本書で言葉を尽くす限りに裁いていた。 心情の変化が複雑で、エレノールが一概に悪いけでも、アドルフが一概に悪いわけでもない気もする。 もちろん、優柔不断なアドルフが結末を大きく左右していたことには変わりないが。 少...

コンスタンはアドルフという主人公に自分を投影し、自分の愚かなところを本書で言葉を尽くす限りに裁いていた。 心情の変化が複雑で、エレノールが一概に悪いけでも、アドルフが一概に悪いわけでもない気もする。 もちろん、優柔不断なアドルフが結末を大きく左右していたことには変わりないが。 少々自分には難しい小説であると感じた。 また数年後に再読してみたい。 その時どう思うか楽しみ。

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2022/02/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

恋に恋し続けた男の悲劇/喜劇、とわたしには思えた。人一倍孤独や独立を欲していながら優柔不断で弱い性格が一見優しさのようで実際はただナヨってるだけという。白黒つけられないところが政治には向いてるのかもね。自覚も反省もしてるけど変えられない部分は誰と出逢っても一生変わらないのだろう。 しかしエレノール視点の物語があったとしたら、彼女にとってはハッピーエンドとも言えないか?好きでもない男爵に囲われて嫌々社交界に居させられるよりは、自身以上に愛する男と一緒に暮らし、その腕の中で死を迎えることは本望だったとも言える。もちろんそれが彼女の思い描く幸福ではなかったろうが、苦しめば苦しむほど以前のつまらない日々より生の実感も得ていたと思う。いわゆるダメンズ製造機かもしれないが、彼女の心が清いからこそどんなに複雑でも見捨てられない部分があったんじゃないかな。 お互いにお互いを不幸へと追いやる関係は破綻しているがコンスタンは所帯を持とうが持たまいがそういう恋しかできなさそう。でも良い恋愛小説。令和になって従来の恋愛至上主義へのアンチテーゼ作品が増えてきた気がするけど、これはその先駆けの先駆けだったのであろう。

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2021/12/21

巷に溢れる恋愛物語は、恋愛の最も美味しい部分だけを、さらに美化した形で描いていて、それによって読者は決して現実のものとして現れない恋そのものに恋するようになりがちである。一方この本はそれらとは真逆で、そういった人間が実際に経験する現実の恋愛について描かれている。すなわち、恋愛の最...

巷に溢れる恋愛物語は、恋愛の最も美味しい部分だけを、さらに美化した形で描いていて、それによって読者は決して現実のものとして現れない恋そのものに恋するようになりがちである。一方この本はそれらとは真逆で、そういった人間が実際に経験する現実の恋愛について描かれている。すなわち、恋愛の最初の局面におけるあの他では得難い幸福とそれを得るためにその瞬間では安いものと信じさえする犠牲、そしてそれが薄れたときに彼らが直面する恋愛の苦悩の面そのものである。前述した数々の恋愛物語がこの幸福の部分のみを描き、読者はそれらを読んで自ら現実世界でその続きを演じようとする一方、この本の読者は読んでいる瞬間に恋愛の一通りを体験し、ついには当分恋愛に対する意欲を欠いてしまうだろう。

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2020/04/08

久々の文学。 前半はアドルフの恋心に激しく共感するも、後半は恋に翻弄されるアドルフとエレノールそれぞれの運命を中立者として自分は眺めていた。 読んでいて印象的だったのは3つ。 ①「恋が生まれ、恋が実り、恋が枯れ、恋が破滅する」という恋をした人が何れかのポイントで共感するであろ...

久々の文学。 前半はアドルフの恋心に激しく共感するも、後半は恋に翻弄されるアドルフとエレノールそれぞれの運命を中立者として自分は眺めていた。 読んでいて印象的だったのは3つ。 ①「恋が生まれ、恋が実り、恋が枯れ、恋が破滅する」という恋をした人が何れかのポイントで共感するであろうことが、豊かに鋭く表現(あるいは言語化)されていること。 中でも、「恋は輝かしい一点にすぎない、にもかかわらず全時間を占領してしまうかに見える」 「常に今にも失われそうな気がする幸福、不完全な乱されがちの幸福」 「恋はすべての感情の中で最も利己的なものであり、したがって傷つけられた暁には最も不親切な感情である」 ②恋心は人を支配してしまうこと。 アドルフは、「自分は決して打算から行動したことはない」と厳粛に示しているのにも関わらず、別れたいと思いながらもエレノールを労り、人生を投げ捨てるという自己矛盾を抱えている。 一方でエレノールはアドルフが生活の全てになるまでに、彼を愛している。 ③エレノールと別れ、恋の楔から逃れても、自由は手にすることはできないこと。なぜならアドルフ自身もその存在理由はエレノールありきであったから。まさに、一難去ってまた一難。 おすすめの恋愛小説を聞かれたらコレですかねぇ〜

Posted byブクログ

2017/12/29

恋愛を単に希望、美しい、その目覚めにおいてのみ描写したものではなく、全閲歴を叙述している。-恋愛の成長、凋落、および死 (解説より) 恋愛小説に関しても、古典の作品は衝撃を受けます。

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2014/12/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

欲望や欲求は、自分の手を離れて変化することがある。 永遠に続くように思われる、息の詰まるような倦怠感。 2014/12/04 追記 哲学の自由概念の区分でコンスタンが登場したため、関係ないとは思いつつ再読。アドルフは近代的自由の体現者であるとも言えるか。理想と内実の乖離状態については検討の余地有り。

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2014/01/21

恋は、つい最近までほとんど他人だった人と、もう何年ものあいだずっと一緒に暮らして来たような感じを我々に抱かせる。恋は輝かしい一点にすぎない、にもかかわらず全時間を占領してしまうかに見える。

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2013/04/01

僅か150頁ほどの短編なのに、なんて愛の不条理さに満ち溢れた小説なのだろう。誰からも祝福されない年の離れた二人の愛。思いはあっけなく結ばれるのに、その後も幸福に辿り着くことは決してない。これをアドルフの駄目さに原因を求めることは簡単だが、むしろそれほどまでに客観的な心理分析が成さ...

僅か150頁ほどの短編なのに、なんて愛の不条理さに満ち溢れた小説なのだろう。誰からも祝福されない年の離れた二人の愛。思いはあっけなく結ばれるのに、その後も幸福に辿り着くことは決してない。これをアドルフの駄目さに原因を求めることは簡単だが、むしろそれほどまでに客観的な心理分析が成されていることが驚きなのだ。ここには恋愛感情とは自分の写し鏡を求めるものでしかない為に絶対に報われないのだという冷静な視点を持ちながらも、それでも感情の不確かさから逃れる事はできないのだという残酷な実存が剥き出しに表現されている。

Posted byブクログ

2012/12/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「遅かれ早かれ避けがたい苦痛に一瞬間だけ立ち向かう勇気がないからだ!だがその苦痛を,われわれは毎日なし崩しに,一滴ずつ嘗めているのではないか (Pour ne pas braver un instant une douleur qui, tôt ou tard, est inévitable! Ne l'éprouvons-nous pas chaque jour en détail et goutte à goutte, cette douleur?) 」― 第4章より 青年アドルフ(21~24 歳)の物語.エレノールのためにいつまでも腐れ縁を断ち切れず,互いに傷つけ合う日々が3年ばかり続く.ついに別れを決意し,その旨 T*** 侯爵充てに手紙を出すも,惰性からいつまでもけじめをつけられないアドルフに業を煮やした侯爵から,直接エレノールに宛ててアドルフからの手紙を同封して送りつけられる.それがエレノールを絶望に突き落とし,結果的に彼女を殺すことととなった.ところが彼女の死はアドルフに渇望していたはずの自由をもたらさず,むしろ誰も愛してくれる者がないという喪失感と虚無感で彼を包み込む. アドルフは弱い男の典型である.しかし男は誰しも彼のような弱さを多少持ち合わせるのではないだろうか.彼に共感できるところは少なかったが,なるほど,少し踏み外せば彼と同じ道を歩みかねなかっただろうという危機感を抱いた.と同時に,その危機を回避しえたことへの安堵感を得た.恋愛以外に没頭できることがあったからである.アドルフは結局自由を求めて他に強く意志するものをもたなかった.彼にとって,意志の対象は自由そのものであった. 若さとは無知である.周りが何も見えない.だがその盲目なる情熱も,正しい方向に導かれるならば,信じがたい威力を発揮するものである.青年の無限の可能性とはこういった危うさをいつも孕んでいる.アドルフの場合,全き大人のT***侯爵の先導はすでに遅きに失したものであった. 訳文が素晴らしい.

Posted byブクログ