街の灯 の商品レビュー
【本の内容】 昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮みつ子。 令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。 新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の...
【本の内容】 昭和七年、士族出身の上流家庭・花村家にやってきた女性運転手別宮みつ子。 令嬢の英子はサッカレーの『虚栄の市』のヒロインにちなみ、彼女をベッキーさんと呼ぶ。 新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の三篇を収録。 [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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戦前の上流階級の暮らしぶりが瑞々しくて美しい文章で描かれています。英子さんが推理する事件よりも、英子さんを含むお嬢様がたの麗しい世界に心が惹かれますね。ベッキーさんもしっとりとした、且つ強い女性として好感が持てます。情景を楽しみながら、ゆっくり味わえるシリーズだと思います。
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上流家庭のお嬢様「英子」とお付の運転手「ベッキーさん」が事件を解決していく物語。 女だてらに車を運転し、 剣を持てばあやしい男共をおいはらい、 銃もあざやかに使いこなす。 多くは語らず、お嬢様の求めにさりげなくしかし確実に応えていく「ベッキーさん」。 2人のやりとりは、 以前...
上流家庭のお嬢様「英子」とお付の運転手「ベッキーさん」が事件を解決していく物語。 女だてらに車を運転し、 剣を持てばあやしい男共をおいはらい、 銃もあざやかに使いこなす。 多くは語らず、お嬢様の求めにさりげなくしかし確実に応えていく「ベッキーさん」。 2人のやりとりは、 以前話題になったドラマを思い出させます。 ただ、どんな作品よりも、上流家庭をリアルに伝えているような気がします。 本物の「上流家庭」がどんなものかを、私なんかが知りうるわけがありませんが、 わざとらしい演出がないところがいいのです。 北村薫さんの作品は初。 他の作品も読みたくなりました。 (ずっと女性だと思っていたのですが、ネットで検索した結果、男性だと判明。 勝手ながら、ちょっとショック。)
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昭和初期の独特な空気が伝わってくる。 時代観を作品にうまくとりこんで話を膨らませているので ありがちなミステリーにまとまっていないところがすき。 小さな話をまとまりやすく短編集にしてあるので 読み応え、という意味ではあまり期待できないけれど もう少し読んでいたい、という気にさせ...
昭和初期の独特な空気が伝わってくる。 時代観を作品にうまくとりこんで話を膨らませているので ありがちなミステリーにまとまっていないところがすき。 小さな話をまとまりやすく短編集にしてあるので 読み応え、という意味ではあまり期待できないけれど もう少し読んでいたい、という気にさせてくれる作品。
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以前からこのシリーズ、表紙のイラストが気になっていて今回シリーズ3冊一気買い。 時は昭和初期、セレブ一家の一人娘、英子さんの周囲で起こる事件や謎をしっとり(?)と解き明かす...ってな感じでしょうか。うん。 物語のスパイスとなるのが、英子さんの専属運転手、ベッキーこと、別宮みつ子...
以前からこのシリーズ、表紙のイラストが気になっていて今回シリーズ3冊一気買い。 時は昭和初期、セレブ一家の一人娘、英子さんの周囲で起こる事件や謎をしっとり(?)と解き明かす...ってな感じでしょうか。うん。 物語のスパイスとなるのが、英子さんの専属運転手、ベッキーこと、別宮みつ子さん。この時代、女性運転手どころか、職業婦人さえ珍しいに違いないけれど、驚くべきはこの人それだけではないのです。それは読んでからのお楽しみ。 ベッキーさん、驕ることなく、英子さんの影になり時には助言をする姿に好感。この人、何者ですかい。 ベッキーさんのスーパーレディっぷりに最初は世間知らずのお嬢様かと思っていたけれど英子さんもなかなか。謎解きはあくまで英子さん。助言を上手く受け止めて活用できる頭の良さがないとね。 次は『玻璃の天』、『鷺と雪』と続きます。
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昭和初期。花村家のお嬢様花村英子のもとにやってきた新しい運転手。なんと女性!ちょうど読んでいた小説の主人公に似た彼女をベッキーさんと呼ぶことに。 ベッキーさんがやってきてから、英子は今まで気づかなかったような些細な事にも気づくようになり、色々な謎解きを体験する。 本格ミステリー...
昭和初期。花村家のお嬢様花村英子のもとにやってきた新しい運転手。なんと女性!ちょうど読んでいた小説の主人公に似た彼女をベッキーさんと呼ぶことに。 ベッキーさんがやってきてから、英子は今まで気づかなかったような些細な事にも気づくようになり、色々な謎解きを体験する。 本格ミステリーというよりは、少しゆるめ。 昭和初期のことが舞台となっているので、少し分かりにくい表現などがあった。でも結構面白い。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「それぐらいの技量はあるな」 「及ばずながら」 「命が惜しくはないか」 「惜しくないわけはありません。ただ、当たり前のことがいえなければ、生きていても仕方がないでしょう」 「中で、本でも読んでいたら、それはそれで嫌みな奴と思われるだろう。間が待てぬことのないようにしてやれ。」 「それから、お前。何か、珍しい玩具でも貰ったような気になるんじゃないよ。」 確かに、そういうところがなくもない――――と思った。 あとは≪ディスカバー≫のくだりが好き。 「そうおっしゃるようなお嬢様にお仕え出来て、別宮は幸せ者でございます。」 「そう聞いて、カバーが剝がされたような気持ちです」 「いえいえ。風景が、目の前に次々と現れるだけで、体の中を涼しい風が吹き抜けるようでございます。――鳥の声もいろいろですから、耳まで楽しませていただいております」 「わたしはね、そこが残念」 「ブッポウソウが聴けるかと思ったの」 「――要するに、わたしは、わたしの心を観ていたのね。≪お前の見る夢の正体などこんなものだ≫ということでもあり、逆に言えば、≪本当にいいものが目の前に現れても、お前には、おんぼろの浮浪者にしか見えない≫ということでもある。―わたしが会えるのは全て駄馬なの。――そして仮に、千里を行く馬から見れば、わたしの方がただの駄馬なのよ。」 「≪あのような家に住むものに幸福はない≫と思うのも、失礼ながら、ひとつの傲慢だと思います」 チャップリンの『街の灯り』が観たくて(未だに観ていない)、同じタイトルの本があったので買ったのですが。うん、こういう偶然に感謝したいわ、と読み終わった後に思いました。面白かったです。暗号も良かった。
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昭和初期、まだ、明治維新前の大名家や華族家、などの出自の家柄が、上流階級だったんですね。 別世界のお大尽の暮らしを読むのは楽しい。 暗い時代とは言うけれど、ここに描かれる銀座も軽井沢も、溢れかえる平民に蹂躙される前の“古き良き佇まい”に思える。 作品の種類はミステリーですが、そう...
昭和初期、まだ、明治維新前の大名家や華族家、などの出自の家柄が、上流階級だったんですね。 別世界のお大尽の暮らしを読むのは楽しい。 暗い時代とは言うけれど、ここに描かれる銀座も軽井沢も、溢れかえる平民に蹂躙される前の“古き良き佇まい”に思える。 作品の種類はミステリーですが、そういう舞台を読むのが好きです。
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何の事前知識もなく、 装丁だけ見てあらすじも読まずに購入。 北村薫の作品は初めて読みましたが、 ずっと高村薫と同一人物だと勘違いしてました。 ですからこの作品も きっと社会派でハードボイルドな作品に違いないと 勝手に思い込んでたんですよね。 ところが 昭和初期という古い年代...
何の事前知識もなく、 装丁だけ見てあらすじも読まずに購入。 北村薫の作品は初めて読みましたが、 ずっと高村薫と同一人物だと勘違いしてました。 ですからこの作品も きっと社会派でハードボイルドな作品に違いないと 勝手に思い込んでたんですよね。 ところが 昭和初期という古い年代を扱ったミステリで 読んでびっくり。 最初は戸惑いましたが、この作品は 文章の佇まいがとても良かったです。 ほのかにゆるやかで、せかせかした感じがしないのが 浮き世離れした華族のイメージとマッチするんです。 そしてこの表紙、 どこか見覚えのある建物だと思ってましたが、 あの銀座和光だったのですね。 (作中では当時の「服部時計店ビル」として出てきます) 時計塔の中、入ってみたくなりました。
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「街の灯」 北村薫 昭和初期を舞台に社長令嬢とお付の運転手ベッキーさんが日常に潜む事件を解き明かしていくシリーズ。こちらが一番最初のもので、花村家のことや、上流社会における華族の序列や新興企業家との関係などが明かされている。士族出身で軍人であった祖父の代から財をなし、財閥系の商社...
「街の灯」 北村薫 昭和初期を舞台に社長令嬢とお付の運転手ベッキーさんが日常に潜む事件を解き明かしていくシリーズ。こちらが一番最初のもので、花村家のことや、上流社会における華族の序列や新興企業家との関係などが明かされている。士族出身で軍人であった祖父の代から財をなし、財閥系の商社の社長として手腕をふるう英子の父親は、先進的な考えの持ち主であったのか、当時行動を制限されることの多かった上流社会の令嬢である英子に、別宮という新たな女性運転手をつけた。英子の学友である有名大名華族の令嬢に比べれば、英子は随分と自由な身であったと思うが、これについては、英子の父親の(はっきりとした記述は無いものの)、英子の聡明さを認め、女であっても見聞を広め、能力を生かせる生き方を歩ませようとしている意志を感じさせる。経済界の一雄である父が軍国化に異論を唱える首相を擁護する発言をして云々、この時代の大きな流れとそれに戸惑う人々、自由の無い時代に向かって暗雲立ち込める時代背景を感じることが出来る。
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