黒い玉 の商品レビュー
ベルギーの幻想作家に…
ベルギーの幻想作家による短編集。怪奇小説といった味わいで、短いものが多いがイメージが強烈でよい。
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裏表紙にあるように「ありふれた日常に潜む深い闇」という感じ。展開にあまり脈絡がなく、まるで悪夢のような不気味な話が14編。 「雨の中の娘」「公園」「亡霊への憐れみ」「父と娘」「売り別荘」「鉄格子の門」「バビロン博士の来訪」「黒い玉」「蝋人形」「旅の男」「謎の情報提供者」「染み」...
裏表紙にあるように「ありふれた日常に潜む深い闇」という感じ。展開にあまり脈絡がなく、まるで悪夢のような不気味な話が14編。 「雨の中の娘」「公園」「亡霊への憐れみ」「父と娘」「売り別荘」「鉄格子の門」「バビロン博士の来訪」「黒い玉」「蝋人形」「旅の男」「謎の情報提供者」「染み」「変容」「鼠のカヴァール」 以下印象に残った話。 「公園」 最近若い女性が襲われている事件が起こっている公園の中を通るサビーヌ。万が一の事態に備え、飛び出しナイフを持ち歩いているが……刺激的な出来事を求める年頃なのかもしれないけど、ラスト十行ほどでとんでもない展開になる。 「父と娘」 おそらく不貞をはたらいた娘に説教するため彼女のもとを訪ねようとする父。夜行列車の中で牝犬に襲われ、コンパートメントの窓から犬を追い出すが……途中からなんとなく予感がしてたけど、辛い。 「黒い玉」 泊まったホテルの部屋でもやもやした黒い玉を見つけた主人公はやっつけようとしたけれど……カフカみたいな不条理展開。 「旅の男」 村の女城主であるパトリシアと車椅子の彼女の世話をするフラン。城のメンテナンスに訪れた技術者の男との美しい三角関係がはじまるのかと思いきや……これも残酷な終わりを迎えるんだけど、古い歩道橋や湖の描写が美しい。 「染み」 これも不気味な話。“染み”はロールシャッハみたいに紙にインクを挟んで何かを当てる遊び。それで遊んでいた妖艶な美女と主人公とブロンドの女友だち。翌朝、妖艶な美女が喉を切られて殺されていた。別の部屋に昨日の染みに似た不気味な生き物を見つけた主人公はそれにナイフを刺すと血を吹いて……5ページもない話なんだけど、ものすごいオチがきます。 「鼠のカヴァール」 元錠前職人のカヴァールは硬貨を100枚貯めると曲が流れる貯金箱人形を大切にしていた。ところが不良息子が帰ってきて……なんか、これは、せつない。救いといえば救いなのかな。 どれも10ページもない短さなので、寝る前に読むのにちょうどいい。
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確かに表題の通り不気味な話が14話。 これは文化的な違いなのか、「不気味」の捉え方が日本のそれと少し異なるように思う。 好き好みがあると思うが、私にはそこまでフィットしなかった。 あとほんの少しのところで的に当たらないというか、肝の部分で肩透かしを喰らう感じがする。 「黒い玉...
確かに表題の通り不気味な話が14話。 これは文化的な違いなのか、「不気味」の捉え方が日本のそれと少し異なるように思う。 好き好みがあると思うが、私にはそこまでフィットしなかった。 あとほんの少しのところで的に当たらないというか、肝の部分で肩透かしを喰らう感じがする。 「黒い玉」は安部公房の「赤い繭」を彷彿させた。 19世紀ベルギーの世界に触れる機会は少ないので、小説の世界観への没入は楽しい。
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ベルギー幻想文学のオーウェンによる14の不気味な話。怖いではなく嫌な話である。表題作「黒い玉」部屋の明かりをつけると驚いたかのように椅子の下に飛び込んだ〈黒い玉〉。その正体を探ろうとした彼を待ち受けていたものは…。これはループストーリーである。伊藤潤二の漫画にありそうな日常に潜む...
ベルギー幻想文学のオーウェンによる14の不気味な話。怖いではなく嫌な話である。表題作「黒い玉」部屋の明かりをつけると驚いたかのように椅子の下に飛び込んだ〈黒い玉〉。その正体を探ろうとした彼を待ち受けていたものは…。これはループストーリーである。伊藤潤二の漫画にありそうな日常に潜む不条理な意味のわからない嫌な話。じわじわくる
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不気味な話?という感じよりは、世にも奇妙な物語っぽい。 夜中に読むなとか書いてあるけど、大丈夫じゃね?と思ったけど、妙な余韻を残す話も多いから、想像力豊かな人はちびっちゃうんかいな。 後は展開そのものというよりは、登場人物がちょっと怪しい人が多くて、これがまた。ベルギーらしいけど...
不気味な話?という感じよりは、世にも奇妙な物語っぽい。 夜中に読むなとか書いてあるけど、大丈夫じゃね?と思ったけど、妙な余韻を残す話も多いから、想像力豊かな人はちびっちゃうんかいな。 後は展開そのものというよりは、登場人物がちょっと怪しい人が多くて、これがまた。ベルギーらしいけど、世界のどこに行っても変な人はいるもんだわ。
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不穏な空気の14の物語。前から気になってた(だって表紙がルドン!)けど、やっぱり自分好みで満足。"雨の中の娘"、"公園"、"鉄格子の門"、"蠟人形"、"旅の男"など共通するのは、死...
不穏な空気の14の物語。前から気になってた(だって表紙がルドン!)けど、やっぱり自分好みで満足。"雨の中の娘"、"公園"、"鉄格子の門"、"蠟人形"、"旅の男"など共通するのは、死の気配を纏う女の登場。妖しい魅力になす術なく引き込まれて行く。
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20世紀ベルギーの小説家トーマス・オーウェン(1910-2002)の短篇集、1980年。幻想的怪奇的な作風で知られる。精神病患者の犯罪学の研究で博士号を取得しているとのこと。 いつかどこかの出来事が、隔てられた時空を超えて、非現実的な形でいまここに干渉してくる。出来事が忘却に沈...
20世紀ベルギーの小説家トーマス・オーウェン(1910-2002)の短篇集、1980年。幻想的怪奇的な作風で知られる。精神病患者の犯罪学の研究で博士号を取得しているとのこと。 いつかどこかの出来事が、隔てられた時空を超えて、非現実的な形でいまここに干渉してくる。出来事が忘却に沈んでしまうのを惜しがって、外部にその存在を滲み出していくように。そうして、日常的な現実が別の相貌へと変容していく、いまここでは無であるはずの何かが超自然的に到来してしまう。そこでは、時間軸が捩れ、現実と非現実だとか、正常と異常だとか、整序と錯乱だとか、およそ日常を成り立たせている区別が曖昧に混濁しはじめる。 「そこへあなたがやってきて、現実そのものを疑わせようとする。わたしはもうすっかり、あらゆる道理に逆らって、なにか常軌を逸したことを信じる気持ちになってきたし、なにかわからない奇跡を期待する気持ちにさえなってきましたよ……」(p106)。 □ しかし、オーウェンの作品は、「幻想小説」というそっけない呼び名よりも、「恐怖小説」「ホラー小説」という生々しく装飾的な括りのほうが似つかわしいように思う。その不気味さが、「超自然的な存在」「オカルト的な力」として、かなり明確に形象化されてしまっているから。それが原因で、作品に対して中途半端さの印象を受けてしまった。 カフカのように、何とも名指しのしようがない(だから無理矢理に「奇想」「不条理」「形而上的」などと呼んでみる)、ナンセンス=意味の不在にまで切り詰めたその極限になお残る何かが立ち現れてくるのでもなく。かといって、過剰がその極限において無へと反転してしまうほどに増殖するのでもなく。存在というのは、不在と過剰を両極端とする線形的階層における、あるいはその両極端がつながってしまうウロボロス的円環における、中途半端な位置を占めるだけのどこまでも日常的なものでしか在り得ないのか。 登場する人物像に垣間見えるオーウェンのミソジニー傾向も、作品を安っぽく感じさせてしまう要因かもしれない。 ただし、「黒い玉」だけは他の作品とは趣が異なっていて、カフカのオドラデクを読んだときの印象が思い出された。不可解で意味が分からない、恐怖ですらない、幻想的ですらない、無意味な何事かでしかない。本書カバーのルドン『胎児のごとき存在もあった』からさらに具象性が取り除かれてしまったような。 □ 「中身をくるむ言葉はどうでもよい。ただその中身が、秘められた心の奥から、他人の頭や心の中に入っていくということである。これこそがわたしの味わう喜びなのである。読者をわたしの共犯者にし、意識の闇の十字路まで案内し、そこに読者を置き去りにすること、それである」(p11)。
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まずは表紙。ルドンの不気味な黒い画と、金と紫と白の控えめな装丁が素敵。 久しぶりに装丁に溜め息をついた。 短編それぞれのスパイスも滋味を感じられる良品。 殺人に関するもの。 変容や変身に関するもの。 それぞれに通底する、意識の混濁。 細部の描写。 「青い蛇」にも...
まずは表紙。ルドンの不気味な黒い画と、金と紫と白の控えめな装丁が素敵。 久しぶりに装丁に溜め息をついた。 短編それぞれのスパイスも滋味を感じられる良品。 殺人に関するもの。 変容や変身に関するもの。 それぞれに通底する、意識の混濁。 細部の描写。 「青い蛇」にも手を伸ばしたい。
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ずっと探していた一冊。東京創元社から出ているもう一冊『青い蛇』も同時購入(そちらは未読)。 風間賢二の解説(「十九世紀末象徴主義者の末裔」)によると、1910年ベルギーに生まれたトーマス・オーウェンは犯罪学研究、美術評論、弁護士、学士院会員、探偵小説家(本人のまえがきでは「推理小...
ずっと探していた一冊。東京創元社から出ているもう一冊『青い蛇』も同時購入(そちらは未読)。 風間賢二の解説(「十九世紀末象徴主義者の末裔」)によると、1910年ベルギーに生まれたトーマス・オーウェンは犯罪学研究、美術評論、弁護士、学士院会員、探偵小説家(本人のまえがきでは「推理小説」とある)と様々な顔を持ち、同時にベルギー幻想派四天王のひとりである。ベルギー幻想小説の日本での翻訳出版は殆どされていないそう。原題゛Le Livre noir des merveilles"は1980年に出版、日本ではその13年後の1993年に単行本化された。 ファンタジーともサイエンス・フィクションとも当てはまらない、彼が云うように本書に収められた14の短編は「幻想物語」として位置づけられる。 何気ない日常に入り込む非日常の恐ろしさがゆるり描かれていて、しかしそれは文学というよりやはり物語として受け止められる。 2013年現在でこそ、ありふれた物語のようにも思えるが、捕虜として戦争を体験し、犯罪学を培った彼の描く物語に落ちる影は奇怪で異質だといえよう。 『黒い玉』のすっきりとした短さがまた心地好い。 『鼠のカヴァール』『『蝋人形(ダーギュデス)』などが好き。
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※このレビューにはネタバレを含みます
世にも奇妙な物語のような短編が十四本収められている本。 怖い話はあまり得意ではないため最初読むのを躊躇したが、本の帯のあおり文句の割には怖いと感じた話はなかった。 理不尽な話も、怖いとされる話も、最後が投げっぱなしで余韻を味わうという感じが得られなかった。 文章の表現は美しいし比喩も的確だけど、残念ながら話がありきたりで楽しめなかった。 また、女に対する幻想や偏見が強く、合わないと感じた。
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