魔術師のたいこ の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
「影のない四十日間」の解説で見かけて。 何とも言えない滑らかな美しい日本語。 作者の文章力なのか、翻訳が上手いのか、 たぶん両方なのだろうが、 ラップランドに生きるサーミ人の民話、という題材以前に、 その美しさに圧倒された。 難しい言葉はなく、一つの文は短く、 音読したくなるような美しさ。 単純なものほど美しいとはよく言うが、 それは決して容易なことではない。 青い胸のコマドリがラップランドに極夜と白夜をもたらしたお話、 オーロラのはじまりである娘の嫁入り話、 地の精と結婚した男の話と、 物語も短くシンプルだが、 自然の不思議、魔法と「人」が当たり前のように密接な世界が とても味わい深い。 さらに、「影のない四十日間」という、 現代のラップランドを舞台にしたミステリーの中で、 たいこやコタ、風の帽子を読んで知っていたので、 答え合わせのような、化石発掘のような、聖地巡礼のような楽しさもあった。 そして、装画がとてもかわいらしい。
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児童書では、ないと思う。 ラップランド(フィンランド)に伝わる神話 という感じかな。 お話も素敵だけど、 装丁が、好みだな~(*^_^*)
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極北の地の夏の短さを埋め合わせるかのように、豊かな色彩と温かみに満ちた民話の数々。 意に染まぬ求婚者同士が争った後に、晴れて意中の初恋の人と結ばれてめでたし、めでたし、となるかと思いきや、もうひとひねりある「オーロラのはじまり」 思うに任せない人生を、それでもたくましく生きて幸...
極北の地の夏の短さを埋め合わせるかのように、豊かな色彩と温かみに満ちた民話の数々。 意に染まぬ求婚者同士が争った後に、晴れて意中の初恋の人と結ばれてめでたし、めでたし、となるかと思いきや、もうひとひねりある「オーロラのはじまり」 思うに任せない人生を、それでもたくましく生きて幸せをつかむ娘の姿には、厳しい自然を相手に暮らす人々の思いが重ねられているのだろうか。 そうした環境のなかにあって、生活者として有能である人々だけが祝福されるのではないことを、心がヨイク(歌)でいっぱいの少年が、風となって歌を運ぶ話「山の風」が教えてくれるよう。 ヌンヌンヌー ヌンヌンヌー というヨイクの柔らかな響きが、心に残る。
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ラップランドでトナカイの放牧をしてきた先住民族・サーメ人に語り伝えられてきた12編の物語。 冬の静謐な美しさが印象的 北極圏の厳しい自然の中で暮らす人々が語り伝えてきたのは、やはり自然にまつわる物語が中心 この世に白夜ができたことや、オーロラの始まり、レミングの行進、 花の中に...
ラップランドでトナカイの放牧をしてきた先住民族・サーメ人に語り伝えられてきた12編の物語。 冬の静謐な美しさが印象的 北極圏の厳しい自然の中で暮らす人々が語り伝えてきたのは、やはり自然にまつわる物語が中心 この世に白夜ができたことや、オーロラの始まり、レミングの行進、 花の中に太陽の光をたくわえて金色に熟すヒラという野イチゴ、 深い緑色の目と砂金のように光る髪を持つ地の精... 山の風は、ヨイク(サーメ人特有の歌)が胸に溢れている青年が歌う声、 初めは銀色だった花びらが赤く変わり、そして濃い青紫色になるきんぽうげの花は、美しい少女が変わったもの。 白樺の木は、無理矢理な結婚から逃げ出した恋人たち。 飼っていた銀の角を持つ真っ白なトナカイがいなくなり、魔術師のツォラオアイビも姿を消してしまったこと。 読んでいると鮮やかな色彩が浮かび上がってくるような、情景が印象的な物語ばかり。
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