川端康成集 片腕 の商品レビュー
ノーベル文学賞受賞作…
ノーベル文学賞受賞作家の怪談集。表題作の「片腕」も奇妙な世界だが、「白い満月」が一番良かった。
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川端康成は「伊豆の踊…
川端康成は「伊豆の踊り子」や「雪国」だけではありません。川端の幻想小説を知るには格好の一冊です。
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晩年には日本初のノーベル文学賞に輝いた川端康成は、生涯にわたり「心霊」と「性愛」というモチーフを憑かれたように追い求め、幽艶凄美を極める恋愛怪談の数々に結品化させた稀有なる作家であったと言う。 そう言われてみると、「怪談」と言うタイトルはついているものの、決してオドロオドロシイ...
晩年には日本初のノーベル文学賞に輝いた川端康成は、生涯にわたり「心霊」と「性愛」というモチーフを憑かれたように追い求め、幽艶凄美を極める恋愛怪談の数々に結品化させた稀有なる作家であったと言う。 そう言われてみると、「怪談」と言うタイトルはついているものの、決してオドロオドロシイものではないし、怖いとか、恐ろしいと言う表現には当てはまらない 先入観があるのかも知れないが、耽美さを感じられる短編集だった。
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難しい印象がある文豪ですが、短編だと読み易いし、文章も綺麗で良い!色んな『怖さ』のお話があって面白い。
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備忘録に残っていないが、2006年刊行のアンソロジーなので、それ以後にざっと読んだはず。 それを川端マラソンの最後のほうにもってきたのは、別の文庫に散らばっているということもあるが、この本こそが我が川端観を形成してくれたからだ。 最近既読のものもざっと再々読して、やっぱり凄い作品集だわ、と。 ランダムにどのページを開いてもほぼゾッとする話に出会える。 ■「片腕」 ※既読「眠れる美女」新潮文庫 ■「ちよ」 ※既読「川端康成初恋小説集」新潮文庫 ■「処女作の祟り」 ※既読「掌の小説」 ■「怪談集1―女」 ※既読「掌の小説」 ■「怪談集2―恐しい愛」 ※既読「掌の小説」 ■「怪談集3―歴史」 ※既読「掌の小説」 ■「心中」 ※既読「掌の小説」 ■「龍宮の乙姫」 ※既読「掌の小説」 ■「霊柩車」 ※既読「掌の小説」 ■「屋上の金魚」 ※既読「掌の小説」 ■「顕微鏡怪談」 ※既読「掌の小説」 ■「卵」 ※既読「掌の小説」 ■「不死」 ※既読「掌の小説」 ■「白馬」 ※既読「掌の小説」 ■「白い満月」 ※既読「川端康成異相短篇集」中公文庫 ■「花ある写真」 ※記憶が薄いので再読。 心霊写真。しかも子宮の入れ替え。引き取った少女が起こすポルターガイスト。こりゃ面白い。 ■「抒情歌」 ※既読「伊豆の踊子」新潮文庫 記憶が薄いので再読してみた。 凄い。 ■「慰霊歌」 ※既読「伊豆の踊子・禽獣」角川文庫 記憶が薄いので再読してみた。 「抒情歌」とセットで並べられているのは意味があることで、どちらも心霊趣味と性愛とを重ねた、独特な芸風なのだ。 そして川端作品ならではの特徴としては、視点人物がすでにして向こう側に片足突っ込んでいるということだ。 また本作では、鏡の向こうの女たち、とか、マッチの火で女の裸体を凝視しようとする、とか、やはり眼の感覚が強烈。 舞台劇にしたら素敵そう。 ■「無言」 ※既読「抒情歌・たまゆら」旺文社文庫「川端康成異相短篇集」中公文庫 ■「弓浦市」 ※既読「川端康成異相短篇集」中公文庫 ■「地獄」 ※既読「川端康成異相短篇集」中公文庫 ■「故郷」 ※既読「掌の小説」「川端康成異相短篇集」中公文庫 ■「岩に菊」 記憶が薄いので再読してみた。 美術好き→墓の思索→幽霊を呼び出して会話してみる。 面白い。果ては自然があれば墓は不要と。実に面白い一篇。 ■「離合」 ※既読「抒情歌・たまゆら」旺文社文庫「川端康成異相短篇集」中公文庫 ■「薔薇の幽霊」 記憶が薄いので再読してみた。 キュート・ゴースト・ストーリー。 ■「蚕女」 記憶が薄いので再読してみた。 ■「Oasis of Death ロオド・ダンセニイ」 記憶が薄いので再読してみた。 ダンセーニを選んだのもグッとくるが、若い頃にはこの文体もあったのだな。 ■「古賀春江」 記憶が薄いので再読してみた。 「窓外の化粧」くらいしか知らなかったが、友人であった川端の推し作品をしることができた。 「文化は人間を妨害する」「深海の情景」「サアカスの景」そして「素朴な月夜」「そこにある」「牛を焚く」「煙火」さらには「埋葬」「肩掛の女」および「二階より」「魚市場」を検索。 ■「時代の祝福」 ※既読「川端康成初恋小説集」新潮文庫 ◆解説 心霊と性愛と 東雅夫
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夏なので幻想怪奇系積読を消化するぞのコーナーです。 5冊目?結構読んだ。 これもかなり前から積んでた本。「片腕」目当てで買ってそれだけ読んでたんじゃなかったかな。「片腕」やっぱりすごいよ。冒頭のインパクトもすごいし、最後までしっかり純文学だよ。 他にも冒頭の吸引力がすさまじい話が多かったなー。川端さんは冒頭作家なのか。 特に好きやった話は「故郷」。時空が入り組んでてずっと向こうと隣り合わせで、そういう雰囲気がすごいよかった。 あとは「顕微鏡怪談」も好き。やべーやつの話って面白いんだよ。「薔薇の幽霊」もいかにも少女小説って感じでよかった。 これ読んでて思ったけど、怪談は純文学と紙一重なんやね…怖さや面白く読ませることだけを追求したものはエンタメだと思うけど、人の深いところを表現するための手法としてそういう不思議な世界観になってるわけだからね… 怪談傑作選いうとるけど怪談て感じがぜんぜんせんのも多かったよ。
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乗代雄介「本物の読書家」 茨城・土浦市 「わたしは『片腕』を川端先生にくれてやったのです」 2020/5/16付 日本経済新聞 夕刊 〈「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。そして右腕を肩からはずすと、それを左手に持って私の膝においた。〉 東京からの常磐線列車が土...
乗代雄介「本物の読書家」 茨城・土浦市 「わたしは『片腕』を川端先生にくれてやったのです」 2020/5/16付 日本経済新聞 夕刊 〈「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。そして右腕を肩からはずすと、それを左手に持って私の膝においた。〉 東京からの常磐線列車が土浦駅をたつと、ハス田が広がる。立ち枯れたハスが茎を突き出していた=山口朋秀撮影 1963年に連載が始まった川端康成の「片腕」の冒頭である。 多くの言語に訳され、世界の人々が知るところになった実験的な小品には、無名の原作者がいた。東京・上野から茨城・高萩に向かうJR常磐線の車中で、その驚くべき秘密が解き明かされる――。 もちろん、虚構だ。 本作はミステリー仕立てでありながら、カフカ、ナボコフ、サリンジャーなどの作品が随時、参照される。そして推理小説の「叙述トリック」とでもいうべき語り……。この辺でやめておこう。 もし、読者が文学愛好家、ミステリーファン、鉄道マニアのいずれか、または全部だったら、この小説を存分に味わい尽くすだろう。再読したくなる。と言うより、せざるを得ない厄介な一編だ。 〈土浦駅を発つと蓮田が連なって続いた〉 何気ない描写から、物語は一気に佳境に進む。 茨城・霞ケ浦周辺は屈指のレンコン産地だ。老人ホームに入所するため常磐線に乗った寄る辺ない〈原作者〉は、車窓に広がるハス沼の記憶をきっかけにノーベル賞作家との秘めた因縁を語るのか。それとも語りとは、心底、共感する聞き手がいない限り、語られないほうがましなのか。 列車が土浦駅を出て20分ほどの間。その問いをめぐる山場が訪れる。老人と、真相を探ろうとする探偵役の博識の「読書家」が交わす緊密な対話は、それが小説家が仕立てた虚構だと分かっていながら、いや、虚構ゆえに読み手の心をひどくざわつかせる。 読むこと。書くこと。語ること。あるいは、誰にも届かなかった言葉。それらの営みには、たどり着く岸辺のようなものがあるのだろうか。 そんな思いに浸りつつ、常磐線のボックス席から霞ケ浦湖畔の景色をぼんやり眺めた。列車はハス沼に別れを告げ、古歌に詠まれた恋瀬川の鉄橋を渡る。古い商家の建築群で知られる石岡駅が近い。 そう言えば当駅は、若き作家の近著「最高の任務」に描かれた舞台のひとつだ。途中下車して山に向かって歩いてみようか。急ぐことはない。楽しみにとっておこう。 (編集委員 和歌山章彦) のりしろ・ゆうすけ(1986~) 北海道生まれ。2015年、デビュー作「十七八より」で群像新人文学賞を受賞。多和田葉子さんらが推した。受賞作は、早世した叔母を追慕し、日々、故人と対話を重ねることで自己形成する〈阿佐美景子〉という若い女性が視点人物で、一種の「教養小説」のような味わいがある。 17年に刊行された「本物の読書家」に併載された「未熟な同感者」、昨年下期の芥川賞候補作になった近著「最高の任務」は、いずれも阿佐美家の物語だ。「フラニーとゾーイー」など、「グラス家」の人々を描いたサリンジャーの連作のように、乗代さんのライフワークになるのだろうか。
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ノーベル文学賞受賞作家の、怪奇幻想系の作品を集めた掌短編集。 親しみやすく味わい深い佳品揃い。 作者は心霊現象や神秘学に強い関心を抱いていたらしく、 それらをテーマにした小説が多く収録されている。 以下、特に心惹かれた作品について、ネタバレなしで。 ■片腕 (前段の説明はな...
ノーベル文学賞受賞作家の、怪奇幻想系の作品を集めた掌短編集。 親しみやすく味わい深い佳品揃い。 作者は心霊現象や神秘学に強い関心を抱いていたらしく、 それらをテーマにした小説が多く収録されている。 以下、特に心惹かれた作品について、ネタバレなしで。 ■片腕 (前段の説明はなく唐突に)片腕を貸してもいいと言い出す 若い女。 語り手の男は彼女の右腕(肩から掌まで)を持ち帰り、 新鮮な驚きと喜びと後ろめたさに酔い痴れたが……。 「脚フェチ」という言葉をしばしば耳にするが、 「腕フェチ」とは(笑)。 ただ、手(主に指)からは――恐らく脚が醸し出すことはない―― 繊細な感情表現や色気が漂うのは確かだと思う。 ちなみに、Wikipediaには、執筆当時、 川端には睡眠薬の服用を中断した時期の禁断症状があり、 それがシュルレアリスム的な表現に繋がったのでは…… との指摘あり。 ■ちよ 祖父が千代松という男から金を借りて亡くなったため、 学生である「私」は証文の書き換えを迫られた。 親類たちのお陰で借金の問題は解決したが、千代松の娘も、 また、その後、心を惹かれた女性たちの名も皆「ちよ」 であることに因縁を感じ、 生涯「ちよ」から逃れられないのでは…… という強迫観念に怯える「私」。 その後に続く作者解題「処女作の祟り」によれば、 現実に作者を苛む「ちよ」の呪縛が原稿を書かせた由。 言霊のポゼッション/オブセッション。 偶然が必然を招き寄せる恐怖。 しかし、自らの筆力に 自身のみならず他人の運命をも左右する力があると確信して 小説を書き続けた川端は、 日本人初のノーベル文学賞受賞者となった――。 ■白い満月 温泉場の別荘で療養する「私」の許へ 家事を担うために通ってくる「お夏」には 不思議な能力があった。 タイトルは幻視の力を宿すお夏の眼球の比喩。 1925年12月発表の小説で、 川端作品にはこの頃から神秘性が加味されてきたとの評あり。 ■弓浦市 来客の多い五十代の作家・香住庄介宅で 三人の相客が雑談を交わしていると、新たな訪問者が。 若く見えるが50歳前後と思しい、品のいい女性が 三十年ぶりに再会出来たと言って喜びを露わにする。 だが、香住には彼女も、彼女の郷里である「弓浦市」も記憶になく、 一方的に思い出話に興じる彼女を見て首を傾げる。 時代を超えた普遍的な、 誰の身にも降りかかる可能性のありそうな不気味な話。 一方には一笑に付すべき妄想でも、 他方にとっては紛れもない現実らしく、 前者が次第に 「むしろ自分の記憶が、頭がどうかしているのでは……」 と思い始めるところが恐ろしいが、 「あちら」と「こちら」の連絡口は どこに開いているのだろうか。 ■地獄 雲仙のホテルに滞在する西寺を訪(おとな)う、 七年前に死んだ村野(=語り手)。 死者と生者の、愛と死と温泉を巡る対話。 タイトルは 「温泉地で絶えず煙や湯気が立ち、熱湯の噴き出ているところ」 を指す。 確かに、寺社と結び付きがなくても、 噴泉のある場所には この世とあの世の朦朧とした境目のような雰囲気がある。 ■離合 中学教諭・福島を、娘・久子の婚約者・長雄が 迎えにやって来て挨拶する。 娘の人を見る目に安心し、誇らしくも思いつつ、 福島は長雄と共に上京し、久子の部屋に泊まる。 久子は結婚に当たって、 別れた母=福島の元妻の明子を招き、 両親揃って祝福してほしいと言って連絡を取る。 久子が出勤し、 ぼんやり過ごす福島の許へ明子が現れたが……。 互いを尊重し、大切に想い合う父と娘の姿と平行して、 憎むほどではなかったが別れないわけにいかなかった 夫婦の経緯が語られ、切ない結末に。 人の優しさが丁寧に描かれていながら、 どこかひんやりしたタッチはまるで久生十蘭作品のよう。
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処女作『ちよ』からの『処女作の祟り』の流れで、こんなメタな作品を書いていたのかと驚きました。 文豪の作品を読もうと思うと、有名作から手に取られがちですが、こういう掌編含めた自分の好きなジャンル(怪談モノ)だけ集めたものは、手に取りやすいし読みやすいのでありがたいですね。 『片腕』...
処女作『ちよ』からの『処女作の祟り』の流れで、こんなメタな作品を書いていたのかと驚きました。 文豪の作品を読もうと思うと、有名作から手に取られがちですが、こういう掌編含めた自分の好きなジャンル(怪談モノ)だけ集めたものは、手に取りやすいし読みやすいのでありがたいですね。 『片腕』の幻想味と色っぽさ、『弓浦市』のサイコホラーっぽい後味、『薔薇の幽霊』から感じる少女小説めいた耽美などが気に入りました。 「怪談」と言われるほど怪談してない作品が多いですが、面白かったです。
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シュールレアリズムな作品、と評価されている。 私もそのように思う。 幻想的であり、エロティックだ。 愛玩する、少女の肉体の一部。 倒錯か、偏執か。 “娘の夜の癖をしらない” 妖しい⇒なまめかしさ。
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