1,800円以上の注文で送料無料

「ゲド戦記」の世界 の商品レビュー

4.4

6件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

    3

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/07/07

この本には河合さんの文章はないですが、大人に読んでほしい児童書として河合隼雄さんは「ゲド戦記」あげています。4巻目の「帰還」は十牛図なぞらえてすばらしいと言っていました。 p31で「意味を語ってはいけない」と心理学者を牽制しているような清水さんの発言がありました。「帰還」の躍動感...

この本には河合さんの文章はないですが、大人に読んでほしい児童書として河合隼雄さんは「ゲド戦記」あげています。4巻目の「帰還」は十牛図なぞらえてすばらしいと言っていました。 p31で「意味を語ってはいけない」と心理学者を牽制しているような清水さんの発言がありました。「帰還」の躍動感のないストーリーに読者の批判が高まり、ル・グウィンは「帰還」の意味を語って言い訳をしまったのでした。 以下この本の中の清水さんのお話の抜粋です。 「 ル・グウィンは必死になって意味を語っていたのです。第4巻をなぜこのように書いたかと問われ、それに必死で答えようとして、意味を語ってしまった。 でも、私たちが実際に物語を読むときは、意味だけを楽しんでいるわけではないですね。意味だけ楽しむなら、哲学の本で充分です。文学の場合はそれだけではなく、意味からこぼれ落ちるものがとってもたくさんあって、実はそれを、私たちは楽しんでいる。それが文学作品を豊かなものにしている。 子どものときの読書感想文で、いちばん感想文を書きやすいものは、意味がはっきりしているものですよね。そこからこぼれ落ちるものを一生懸命に書いたって、先生は認めてくれない。だいたい子どもには、感想文はどう書けばいいのか、わかっているんです。」 以上。「なるほど」ですよね。 NHKの「こころの時代」2020.3.22放送の「己の影を抱きしめて」を見ているので、私は、あのお顔や声をイメージしながら読みました。清水さんは老賢者みたいでいい感じですよね。

Posted byブクログ

2021/07/31

【1回目】偶然、自室の書架から救い出したもの。見つけてよかった。作品が体現しているテーマや意味に拘泥することで矮小化されてしまう点について、注意を喚起している。『影との戦い』だけは、数回再読しているのだが、やはり全巻を通じて再読する必要と価値があると思われた。電子書籍化に際して、...

【1回目】偶然、自室の書架から救い出したもの。見つけてよかった。作品が体現しているテーマや意味に拘泥することで矮小化されてしまう点について、注意を喚起している。『影との戦い』だけは、数回再読しているのだが、やはり全巻を通じて再読する必要と価値があると思われた。電子書籍化に際して、あとがきも付されている様子なので、買い直しを検討したい。ル=グィン、清水とも、他の著作をもっと読み込んでいきたいと思わされた。

Posted byブクログ

2014/08/15

13.6~7 ☆面白かったところ☆/2 言葉探しの三十年…第4巻「帰還」でテナーが使う言葉は成熟している。男性社会で、主義主張、思想を語る言葉(話し方)が多い中、テナーは違和を感じ、生活に根ざした言葉の使い方をする。清水さんはそういう文体に触れていて、テナーは、男の人が家事を手伝...

13.6~7 ☆面白かったところ☆/2 言葉探しの三十年…第4巻「帰還」でテナーが使う言葉は成熟している。男性社会で、主義主張、思想を語る言葉(話し方)が多い中、テナーは違和を感じ、生活に根ざした言葉の使い方をする。清水さんはそういう文体に触れていて、テナーは、男の人が家事を手伝うことに対し、して「くれる」のよとは言わないだろうとはっとする。/3 意味からこぼれ落ちるもの 「賢治の文学という『眼鏡』をかけて見ると、キノコの生え方にしろ、山の盛り上がり方にしろ、露の置き方にしろ、私たちを取り巻く自然界が本当に鮮やかに私たちの目に飛び込んでくる。(略)『ゲド戦記』もやっぱり、テーマだとか意味だとか、もちろんそれは捨てるわけにいかないし、たしかに大事なのですが、そこから外れるもの、こぼれるものをもっともっと、楽しんでもいいのではないかと思いますね。」←作者自身でさえも意味を語ってしまう。/4 ル・グウィンとともに…ル・グウィン『ファンタジーと言葉』より。小説が幸福を書くと、批評家はその小説を「卑俗で、感傷的で、(言い換えれば)女性向けの作品だと片付けてしまうのである。」しかし、幸福には色んな形、ひずみもあってこそ成り立っているとル・グィンは言っている。トルストイ「不幸には様々な形があるが幸福はみな似ている」への反論(私なりの要約)。清水さんはそれを受けて、子どもの文学も、幸福を書いている、幸せな結末というだけで下に見られるのは違うのではないかと。/研究書も色々発見があるんだけど…。読んでて純粋に楽しめるのは、翻訳なんかで、どっぷり世界に浸かっている人のだなぁと思った。

Posted byブクログ

2012/04/28

「ゲド戦記」自体は4巻までしか読んでいない私ですが、清水さんの翻訳者、教育者としての言葉に触れていると何度もハッとさせられます。見えなかったものが、見えてくるという驚きです。 まず、冒頭の「子どもに一番最初に覚えて欲しい言葉はママやパパでなく、『ノー』という言葉であって欲しい...

「ゲド戦記」自体は4巻までしか読んでいない私ですが、清水さんの翻訳者、教育者としての言葉に触れていると何度もハッとさせられます。見えなかったものが、見えてくるという驚きです。 まず、冒頭の「子どもに一番最初に覚えて欲しい言葉はママやパパでなく、『ノー』という言葉であって欲しいと願っている」というくだり。深い。 人間が私有物を持つ意味を考えるくだりも深い。 ル=グゥインですら、ゲド戦記を通して、「意味」を語ってしまった、つまり、意味からこぼれ落ちるものを感じ取る力を失ってしまっていた、落とし穴。 名作「アンナ・カレーニナ」の冒頭文「幸福な家庭はみな似たり寄ったり」への違和感。 「言葉」との30年にわたる格闘からは、清水さんの仕事に対する誠意を感じました。

Posted byブクログ

2011/07/16

清水さんのゲド戦記への大切な気持ちが伝わってくる。作品に対し、すごく真摯。作品世界に生きて訳されたのだなあ。そして、それを読める私は幸せもの。

Posted byブクログ

2009/10/04

翻訳者・清水真砂子氏が、「ゲド戦記」との出会い、翻訳の苦労と面白さ、各巻の魅力、作者ル=グウィンとの交流を語る。2006年6月に「紀伊国屋サザンセミナー」として行われた講演をもとに、一部加筆のうえ再構成。 【感想】 http://blog.livedoor.jp/nahomar...

翻訳者・清水真砂子氏が、「ゲド戦記」との出会い、翻訳の苦労と面白さ、各巻の魅力、作者ル=グウィンとの交流を語る。2006年6月に「紀伊国屋サザンセミナー」として行われた講演をもとに、一部加筆のうえ再構成。 【感想】 http://blog.livedoor.jp/nahomaru/archives/50786431.html

Posted byブクログ