少女七竃と七人の可愛そうな大人 の商品レビュー
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いんらんの母親を持ってしまった娘の物語かと思いきや、「母と娘」という永遠のテーマで締められて、最後は思わずじんわりきてしまった。 純愛。それぞれに、「一番側にいて欲しい」と心から願う人が、側に居てくれない切なさ。母にかけられた呪い。叶わぬ想い。永遠につきまとう呪縛。かんばせ。 桜庭一樹さんは、作品によってガラリと作風が変わるので楽しい。少女七竃と少年雪風の、丁寧で独特の喋り口調がとても味わい深くて良かった。また、飼い犬ビショップ目線で描かれた章もとても良かった。 「女の人生ってのはね、母をゆるす、ゆるさないの長い旅なのさ。ある瞬間は、ゆるせる気がする。ある瞬間は、まだまだゆるせない気がする。大人の女たちは、だいたい、そうさ」
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青春・恋愛・家族・純文学。 主人公の口調が独特で、不思議な雰囲気を漂わせる。 派手なストーリーがあるわけではないが、少女の成長というか、心に区切りがつく様子を感じる。
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「大変遺憾ながら、美しく生まれてしまった」 川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、 鉄道模型と幼馴染の雪風だけを友として 孤高の青春を送っていた。 だが、かわいそうな大人達は彼女を放っておいてくれない。 実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、 そして出奔を繰り返す母の優奈、、、 誰...
「大変遺憾ながら、美しく生まれてしまった」 川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、 鉄道模型と幼馴染の雪風だけを友として 孤高の青春を送っていた。 だが、かわいそうな大人達は彼女を放っておいてくれない。 実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、 そして出奔を繰り返す母の優奈、、、 誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いていく。 そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化が、、、 雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切で優しい愛の物語。 「辻斬りのように男遊びしたいな、とも思った。ある朝突然に。そして五月雨に打たれるようにぬれそぼってこころのかたちを変えてしまいたいな。」
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気づけてなかっただけで、本当はお互いを必要としていたはずなのに。 彼らの古風な話し方が物語を少し現実と遠ざけているなと感じる
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たしか前に読んだこの作家さんの作品が暗くて陰鬱なお話だったので、違う作品も読んでみたい!と思って借りてみた。 小さな町で目立つ容姿に生まれた少女とその周辺のお話。 語り視点はいろいろなのでそこも楽しめました。 少女がいろいろ吹っ切るために心変わりをしていくお話、かな。
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犬がいい。 軽やかさと軽薄さの区別がいい。 それにやはり、雪や風の描写がとてもいい。 単行本の表紙イラストも、素敵だったな。 美貌が呪いであるという描写が、既にネタバレではある。
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『私の男』がなかなか良かったので同じ作家を読んでみることに。同じ旭川を舞台に、あちらが重く湿った肉をそなえた人々の世界であるのに対して、こちらは、神話めいた美貌の少年少女を中心とする、おとぎ話のような物語だ。 時間がとまったような小さく静かな町の中で眠ったように生きていた少女たち...
『私の男』がなかなか良かったので同じ作家を読んでみることに。同じ旭川を舞台に、あちらが重く湿った肉をそなえた人々の世界であるのに対して、こちらは、神話めいた美貌の少年少女を中心とする、おとぎ話のような物語だ。 時間がとまったような小さく静かな町の中で眠ったように生きていた少女たちは、ある日突然、次のページがめくられたように、あるいは何かが身体の中を通り抜けたように、変化する。どうしても手に入れたいひとりの男を自分の力で見つけだした女は、その日から女の辻斬りとなり、さまよいつづける旅人となる。その娘は、自身の分身と築き上げた美しく精巧な世界を永遠に捨てて、外の世界へと歩きだしていく。静かで小さい安定した町は家族たちの世界であり、その中では「いんらん」の印を刻まれた2人のおんなたちは異形のものとなってしまうのだが、しかし彼女たちに欲望を自覚させ、小さな世界を壊して生き始めさせるものが、それぞれの母親からの解放であったという事実は、これが永遠にすれちがっていく男女の物語であると同時に、母娘に伝わる呪い、そそして解放という贈り物の物語でもあるということを教えている。「七竈」「雪風」という不思議な名前と、古風にジェンダー化された話し言葉が、この物語世界に神話めいた風貌をあたえることに成功している。老犬までが「女というのは可愛いものだ」などと考えていたりするのが愉快で、全体に流れる淋しさ切なさと絶妙なバランスだ。
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雪風がシャッターを切る瞬間が忘れられません。 七竈に標準を合わせて、引き金を引くその瞬間が切なくて愛しくて。 冬に、真っ赤な七竈に真っ白な雪が積もっているのをみると、必ず思い出す一冊です。
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言葉が独特で不思議でつかみどころがなく、ふわふわしていてよかった。 ストーリーは複雑ではなく、登場人物の心情の表現の仕方を楽しむための本。
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お母さんの話は『いんらん』と言われている位だからドロっとしたものがあって。けど、反して七竈が語り出すとサラッとしていて清らか。雪風とのことも、後輩とのことも。純粋な心で語ってくれてるからだと確信。口調が面白い。
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