忘れえぬ人 の商品レビュー

山口瞳【著】

2021/09/02

山口瞳の交遊録風のエッセイ集。
山口瞳の交友範囲が広いことがよく分かる。作家であれば、川端康成や井伏鱒二、少し下って吉行淳之介や色川武大といったレジェンドと言っても良い人々。サントリー時代の開高健や柳原良平といった宣伝部仲間から、経営者の鳥居信治郎まで。将棋界にも顔が広く、このエッセイ集には大山康晴や中原誠が登場する。
私は、山口瞳は小説よりもエッセイが好きだ。特に自分が好きな人のことを書いたエッセイが好きだ。実際にはどうなのかは分からないのだが、私の感覚で言えば、好きな人のことを書くとき、山口瞳は、読者よりも、書かれる相手が喜んでくれるような書き方を、また、相当の時間をかけて書いているように思える。そのようなエッセイを読むのが好きなのである。