花影 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
自らのための備忘録 大岡昇平に興味がある。代表作だけでも『俘虜記』(1949年)、『武蔵野夫人』(1950年)、『野火』(1952年)、『花影』(1961年)、『レイテ戦記』(1971年)、『中原中也』(1974年)、『事件』(1977年)。もちろんスタンダール研究家としての側面も忘れてはならない。 「解説」で小谷野敦が、そもそも大岡昇平がスタンダール研究をしたことが間違いだったと書いているが、私には、あちこち手を出さずにはいられない大岡昇平の性質がなんとなくわかるような気がしてならない。だからこそ大岡昇平に興味がある。 昨日までスタンダールを読んでいた人物がフィリピンの戦場で何を思っていたのか、それは何度も何度も反芻してきたことだった。その大岡昇平が松崎なのか…、私にとってはそこが一番心に響いた。 本書は、坂本睦子について知りたいと思って読み始めた。坂本睦子。その経歴には、直木三十五、青山二郎、坂口安吾、中原中也、菊池寛、小林秀雄、河上徹太郎、そして大岡昇平と燦然と輝くビッグネームが登場する。しかし、結局は彼女の本当の姿は藪の中で、隔靴掻痒感甚だしい。 それにしてもこのビッグネームたちのオンパレードは何事なのだろう。一体彼女にどのような魅力があったのか? それはもちろん美貌に他ならないと思うのだが、写真ではわからない、実物には独特のオーラがあったのかも知れない。 下世話で余計なお世話だと言われそうだけれど、中原中也と小林秀雄は、長谷川泰子も争い、坂本睦子も争ったようだけれど、女性の好みが同じという友人関係はなかなか大変そう。 本書を読んで、勝手に課題図書としてピックアップしたのは、次の三冊。久世光彦著『女神』、窪美澄著『夏日狂想』、白洲正子著『いまなぜ青山二郎なのか』 追々読んでみたい。
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水商売をし、男をてんてんと渡り歩く女の話。死ぬことを生きがいにしている描写に、精神疾患を持つ私としては妙に共感してしまった。また、服毒する前の儀式のような行動にはへんな安寧があって、美しささえあった。これがフィクションなら、「美しい」だけで終わったものの、モデルがいるという解説に...
水商売をし、男をてんてんと渡り歩く女の話。死ぬことを生きがいにしている描写に、精神疾患を持つ私としては妙に共感してしまった。また、服毒する前の儀式のような行動にはへんな安寧があって、美しささえあった。これがフィクションなら、「美しい」だけで終わったものの、モデルがいるという解説には少し胸を締め付けられた。
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あるホステスの生涯と最後を描いた小説。四十近い年齢のヒロインは、やり手でもなくただ男に流されるだけの女性で、「老い」は誇りだった美貌や健康を少しづつむしばんでいて、それらを自覚している。空虚な彼女と取り巻く男性たちのエゴが痛々しい。容赦無い心理描写はヒロインを擁護しておらず、丹念...
あるホステスの生涯と最後を描いた小説。四十近い年齢のヒロインは、やり手でもなくただ男に流されるだけの女性で、「老い」は誇りだった美貌や健康を少しづつむしばんでいて、それらを自覚している。空虚な彼女と取り巻く男性たちのエゴが痛々しい。容赦無い心理描写はヒロインを擁護しておらず、丹念に描かれる自殺の準備と実行。息を飲んで読み続けた。ネットでこの小説を調べるとモデルがいて、大物文学者たちの愛人だったそうで著者もその一人だったと知った。うーむ……
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『花影』の続きを、ラーメン屋で、頼んだ赤味噌ラーメン大盛りが出来上がるまで読んでいたら、まずい、落涙しそうになる。 この小説は、誰にも見られない場所、そう、たとえば、風呂の中だとかで読むべきだった。 体の底深い部分に振動がくる。 反射的に体がビクンと痙攣する。 いかん、い...
『花影』の続きを、ラーメン屋で、頼んだ赤味噌ラーメン大盛りが出来上がるまで読んでいたら、まずい、落涙しそうになる。 この小説は、誰にも見られない場所、そう、たとえば、風呂の中だとかで読むべきだった。 体の底深い部分に振動がくる。 反射的に体がビクンと痙攣する。 いかん、いかん。 葉子に似ている女を、具体的に知っているわけではない。 葉子はそれ自体としては存在しない。 葉子はむしろ、男の感覚器を通して描かれているフシがある。 だから、自分の任意の経験が、容易に投影でき、追体験できる。 ラーメン屋で、まざまざと別れた女の背中が見えるのは、つらいことだ。 「はい、赤味噌大盛り」の声に、現実に返る。 * 強烈に、はかない小説。 * 書かれた当時の女性観に、やや違和感があります。 そこを乗り越えることができれば、味わえます。 いま読むと微妙です。 外国の小説という気分で読む必要がありそうです。 * 『武蔵野夫人』は、いま読むと厳しいけれど、 この小説は生き残ったと言えます。
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【お金が無いので再読】 読みやすかったが、葉子の描写はそんなに実感出来るものでもない。 オンナの衰えを描きこんでるけど寄り添って描いてないから、外側の描写だけっていう感じな点。 さらには葉子の生き方にも賛同出来なかった点。 もちろん女給がどうとかいうレベルの話じゃなくて。 行...
【お金が無いので再読】 読みやすかったが、葉子の描写はそんなに実感出来るものでもない。 オンナの衰えを描きこんでるけど寄り添って描いてないから、外側の描写だけっていう感じな点。 さらには葉子の生き方にも賛同出来なかった点。 もちろん女給がどうとかいうレベルの話じゃなくて。 行動・思考の話で、あたしとは違うなぁと。 オンナを外側からみたら、そうなるかもな、という位。 でもダメダメな感じでもなくまーまーかな。 解説(新潮文庫版)には俘虜記で足らなかった女を書いたとあったけど、以上の理由から花影でも描ききれてはないのは確か。 それに対し、女から見たじじぃの描き方は確かなんじゃないかな、と思った。 そういう観点からは女を描いたとはいえるかな。
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