日本の歴史をよみなおす(全) の商品レビュー
「日本の歴史をよみな…
「日本の歴史をよみなおす」「続・日本の歴史をよみなおす」を一冊に合本したもの。網野日本史入門に最適です。
文庫OFF
日本の歴史を学び直すために 百姓イコール農民ではない 一神教が日本で根付かなかった理由 日本の起こり 婚姻関係、誤解されてきた女性の立ち位置 非人として蔑視されてだと思っていた人たちは近世以前はそこまで差別されていなかった
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「非人」とされたひとをとりまく変化や「百姓」の扱いなど、年号をみているだけではわからない視点から歴史をみていく本。 へぇーと思うことがたくさんで楽しかったです。日本史の授業でこういう話をたくさん聞きたかった。
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図書館で借りた。 ちくま学芸文庫より1冊。タイトルから中高で学ぶ日本史を、よくある教養的に復習できる本かと思ったが、ちょっと見立ては間違っていたようだ。むしろ異なる観点から日本の歴史を見直す、つまり中高で学ぶ日本史はある程度入っていないとこの本は理解できないと感じた。 とは言え、...
図書館で借りた。 ちくま学芸文庫より1冊。タイトルから中高で学ぶ日本史を、よくある教養的に復習できる本かと思ったが、ちょっと見立ては間違っていたようだ。むしろ異なる観点から日本の歴史を見直す、つまり中高で学ぶ日本史はある程度入っていないとこの本は理解できないと感じた。 とは言え、話は深く、非常に面白いと思った。教科書の文章にはあらわれない感覚のようなものが研ぎ澄まされる本と思う。中世日本の識字率であるとか、差別がどのようであったかとか、女性の存在であるなど…。 物事を単純化して捉える能力は必要だが、その弊害として「百姓=農民」であるとか、日本は農業社会であるとかいうレッテル貼りが蔓延してしまっていると思う。それがレッテル貼りであることを気付かせてくれる内容だ。オススメ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
南北朝の動乱を境に、日本の社会は大きく変わった。平安末期から律令制を維持するのは難しくなり、予算が少なくなったことからもとは官庁に属していた職能民たちは独自に集団を作り始めていた。彼らはある種の畏れをもって見られていた聖なる集団だったが、南北朝のあたりから忌避すべきものという見方が強くなる。 貨幣経済の発達が与えた影響も大きい。御家人勢力は農業中心で土地に税を課す農本主義的な立場を取っていたが、北条氏得宗の家臣である御内人は対応してきた商人や金融業者と結びつき、列島外との貿易を発展させる非農本主義的な立場を取っていた。1285年の霜月騒動で農本主義的立場を取る御家人たちの代表であった安達泰盛が内管領の平頼綱に破れたのは、象徴的な出来事である。 北条氏の得宗専制政治は独裁的であったから、悪党や海賊勢力は反抗的であった。後醍醐天皇はこうした勢力を取り込み、非農本主義的立場に立って幕府を滅亡させた。 近世国家は再び農本主義が強くなる。農本主義はすなわち一国の統一を重視する立場、非農本主義は海外とのネットワークを重視する立場と考えればよいだろうか。信長の天下布武や秀吉の検地は、海のネットワークを断ち切って日本国という統一体を重視するものだった。その点から、明治維新を引っ張った薩長土肥は海のネットワークを重視していた藩だったことに言及している。
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講演録なので、読みやすい。 中世の女性の地位。 百姓は、農民とは限らない。当時は廻船が盛んだった。 再読でした。
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その名の通り、教科書で学んだ日本史を読み直す本。 というよりも、やはり教科書で学ぶと、うまく納得いくように辻褄合わせなくてはならず、「日本は農業社会だ」と思う方が理解が楽になってしまうんだろうね、と。 以下、簡単にまとめ 文字→日本の識字率は高い。そこに国家が上から被さるよう...
その名の通り、教科書で学んだ日本史を読み直す本。 というよりも、やはり教科書で学ぶと、うまく納得いくように辻褄合わせなくてはならず、「日本は農業社会だ」と思う方が理解が楽になってしまうんだろうね、と。 以下、簡単にまとめ 文字→日本の識字率は高い。そこに国家が上から被さるように文書至上主義を貫いた。だからこそ今の漢字中心の文体がある。 貨幣と経済→物々交換で成り立っていた社会とは別の文脈。商業者は神の直属民だった。 畏怖と差別→職能としての畏怖。しかし、人間がコントロールできる範囲が増えたことで、差別へ。 女性→律令とは離れた文脈の存在。実は商業者として、大きな存在だったケースもある? 日本の農業社会→実はそうではない。経済的な側面が大きい。様々な海上交通などのネットワークを駆使して、経済社会を作っていた。百姓=農民ではなく、様々な経済活動を担っていた存在だった。 以下、感想 教科書だけでは学べない日本の歴史を読み直すことができた。教科書に習うように組み上げた自分の日本史観を丁寧に解きほぐすことができた。確かに、一つの国家として経済的側面がないとおかしいよね、というのはおっしゃる通り。大学入試で経済史は確かにやったが、流石に古代まではカバーしきれてない。 この本の感想に書くのが適切なのかはどうかはわからないが、巷に流れる、「実は日本はこうだった」みたいななんちゃって歴史本とは一線を画さないといけない。(いや、当然この筆者だから、画すのは当然なんだけど) 何となく自分がそのなんちゃって歴史本とこの本の区別がつけられるような見識、基礎知識(?)を持ち合わせていないから、正直このような文脈でなんちゃって歴史本も面白いと言ってしまいそうで、怖くなってしまった。なんか、純粋に楽しめばいいのに、頭の裏に陰謀論めいた日本史のワードが流れてきて懐疑的になってしまって、、、今の日本の社会が私をこうさせたのでしょうか、、
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学校で習う歴史の授業では知ることが出来ない、日本の中世について、文献や絵画から人々の地位や職業や文化を探る本である。興味深かった。 いろいろな考察があるが、名前や女性や天皇の地位について時代とともにどう変化したかが書かれていた。一番意外だったのは、えた・非人として習った身分制度の...
学校で習う歴史の授業では知ることが出来ない、日本の中世について、文献や絵画から人々の地位や職業や文化を探る本である。興味深かった。 いろいろな考察があるが、名前や女性や天皇の地位について時代とともにどう変化したかが書かれていた。一番意外だったのは、えた・非人として習った身分制度の最下位にいるとされる人たちの仕事や立場である。目からウロコだった。 室町時代以前は、非人と言われた人たちは、穢れを扱う特別な職能として天皇制度とじかにつながっていたというのだ。イメージ的に被差別民というか、乞食のような印象だったのだが、遊女も同様な特別な(必要とされる)職業としてある種の地位を得ていたということも書いてあった。文献を深く研究すると、現在からは想像できない社会構造が見えてくると筆者は書いている。 天皇の位置づけも面白い。政治家たちにお飾りとして祀られているだけではなく、節目節目でそれなりに重要な役割があり、特に後醍醐天皇や北朝・南朝時代にどういう動きがあったかなど、忘れかけていたことを思い出すことが出来た。
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中世の社会の在り方に焦点を当てたエッセイ。百姓と農民はイコールではないというのが目うろこ。コメを中心とした制度建てになってんだけど、実際には商工業や海運業で生計を立てていた人が相当数いたんだね。
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「穢れ」というキーワードは民族学っぽい文脈の本ではよく出てくるが、ここで描かれるケガレ、差別のとらえ方がとても腹落ちする。 他文字や商業、女性、天皇という視点を見ると、その多くが(この本が出版されてかなり経つにも関わらず)一般的な理解とは離れている現実に少し驚く。 後段では、百...
「穢れ」というキーワードは民族学っぽい文脈の本ではよく出てくるが、ここで描かれるケガレ、差別のとらえ方がとても腹落ちする。 他文字や商業、女性、天皇という視点を見ると、その多くが(この本が出版されてかなり経つにも関わらず)一般的な理解とは離れている現実に少し驚く。 後段では、百姓=農民、というなんとなくの積み重ねで漠然と持っているイメージが覆った。 深く考える機会も少なく、なんとなくとらえていた過去の日本人の庶民像の解像度が上がった。 よく考えれば、百姓という言葉の漢字を一つ見ても、農民に限定してしまうことの方が不自然だなあと感じたり。
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