権現の踊り子 の商品レビュー
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んー、なんか、怖いですね。怖いくらいにぶっ飛んでます。禍々しい、っていいますか、世の中ハンパなく憎んでる恨んでる、っていうか。 読んでて、読んでる人をイヤーな気分にさせてくれるミステリー小説の事を「イヤミス」って言うやないですか。この本も、それに近い、気はする。ミステリー小説ではなくて、分類的には普通の?小説、かと思われるので、「イヤミス」ならぬ「イヤノベ」ですかね? この短編小説集を発表した時の、町田さんの精神状態って、、、どうだったんだろうなあ?なんでこんな、不気味な、後味悪い系の、ま、平たく言うと狂った感じの短編ばっかり、なんで書いていたんだろう?不思議だ。不思議でならぬ。 こんなおっとろしい小説を書きつつ、まっとうに社会生活、送ることができていたのか?できていたんだろう、、、なあ?だからこそ、2021年現在でも、町田康という存在は、日本文学界にしっかりと、その存在感を、示している訳ですし。 いやあしかし、ホンマに、禍々しい程になんというか、、、狂ってるよなあ、、、よおこんな作品を、作品として成立させたもんだよなあ、って思う。驚嘆。 「工夫の減さん」 コレ、なんか、好きですね。「くふうのげんさん」と読むのですが「こうふのげんさん」って、最初、読んじゃいました。「工夫」って、「くふう」とも「こうふ」とも読めますやね、って事を改めて教えて貰いました。面白い。 で、このタイトルは、おそらく昔々にアイレムが作ったアーケードゲーム「大工の源さん」(今のご時世では、ほぼ、パチンコの機種としての知名度の方が有名と思われますが)のパロディーですよね?と思うのですが、実際のところは不明です。ってか、町田さん、なんで大工の源さんをパロッたんだろう?謎だ。 物事を普通にこなす → プラマイゼロの損も得もない 物事を工夫してこなす → プラスの行為じゃんか! って発想で、やることなすこと全てに工夫をこらす、減さん。でもその工夫が、ことごとく裏目に出て、全てがマイナスになってしまう。そんな悲しき男、減さん。 うーむ、、、実際に、いそうだ。いそうだぞ。そんな人。悲しきテーマだよなあ、、、なんか、深い。深い、気が、する。このテーマは、、、深い、気が、する。実際のところ、深いのかどうかは、謎ですが。しかし、結末も見事に、もの悲しい。うう、、、辛い話です。 「ふくみ笑い」 抜群に狂ってるなあ、という、なんともおっとろしい話です。いやあ、怖い。なんだか、なんもかんもが見事に狂っている。そしてなんの救いもない。怖いです。この世界観がとにかく怖い。「ふくみ笑い」、、、怖い。なんちゅう怖い笑いなんだ。 「逆江戸」 「水戸黄門」の世界観を、圧倒的に邪悪に皮肉った、これまたなんとも怖い話。いやあ、、、怖い。コレ、本家本元の水戸黄門の原作者の人(そんな人がいるのかどうか不明ですが)に、侮辱罪で訴えられないかどうか心配ですよ?というくらいの、すんげえブラックコメディー。コメディーですらないかも?なんちゅーか、人間の精神の暗黒面って凄いよね、って事を、ヒシヒシと感じます。いやあ、怖い。 町田さんの、なにかのエッセイで、「数年間、ほとんど仕事もしないで毎日時代劇ばかりみて過ごしていた。世の中でどんな事が起ころうとも、時代劇の中では、常に正義が行われ、悪は誅せられ、その世界は平和であった」みたいなエッセイがあった、気がするのです。気がするのです。 その時の町田さんが感じていたのであろう、現実の世界と時代劇中の世界に対するなんらかの違和感、みたいなもんが、こんなドエライ狂った作品を描かせたのかなあ?とか思うのですが、ホンマのところはどうなのでしょうかね? まあ、そんな感じで、間違いなくなんらかの「こりゃ狂ってる」感をヒシヒシと感じる怪作だと思います。いやあ。凄い。面白いか面白くないか、で言うと、個人的には、そんなに面白い、とは思えなかったんですが、なんちゅーか、なんらかの凄みエグみは、ヒシヒシと感じられました。おっとろしいなあもう、って感じ。うむ。凄いですね。それは間違いない。そんな一作でしたね。
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たまに町田氏の描く作品が文学なのかただの悪ふざけの言葉の羅列なのかわからなくなることがあるが、やはりこの短篇集を読んで、これは文学なのだと思った。 地獄から出られそうで出られない、もがけばもがくほど深海にはまりこんでゆく、そこもまた、日常。 この理不尽さが不快過ぎてたまに読むのが辛い。特に「ふくみ笑い」の胸糞の悪さ! 『ゼリーのような感触がして酸と便が混ざったような匂いがしたのも、目の前が白くなったのも一瞬、その一瞬の間に俺は、こんなことになったのも俺がみんなに対してエゴイスティックに振る舞い、仕舞には傷害や殺人をしたからだ。みんな自業自得だ、と思おうとした。俺は納得して死にたかったのだ。納得できなかった。やはり納得できねぇ。なんで俺ばかりがこんな目に。そう思った瞬間虫のねらねらした感触が顔面をおおって息がつまって顔面が赤熱苦しくなったその瞬間後に訪れた虚無すげえ。そのすげえ虚無に響いていた音楽。べらんが、めらん。』 ここまで理不尽な世界においてもやはり人は納得して死にたいのだなぁ。世の中がおかしいのか自分がおかしいのか。この虚無すげえ。
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大好きです。 もうみんな言ってるけど、「ふくみ笑い」がすごい。 「何で俺ばかりがこんな目に」とかゆって。もーねどれ読んでもそんなんばっかりやで。 鶴の壺とか逆水戸もよかった。
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【本の内容】 権現市へ買い物に出かけたところ、うら寂しい祭りの主催者に見込まれ、「権現躑躅踊り」のリハーサルに立ち会う。 踊りは拙劣。 もはや恥辱。 辟易する男の顛末を描いて川端康成文学賞を受賞した表題作や、理不尽な御老公が市中を混乱に陥れる、“水戸黄門”の町田バージョン「逆水戸」など、著者初の短編集。 [ 目次 ] [ POP ] 町田康の小説を読むと、真夏日の炎天下、道に迷っているような気分になる。 頭がぼんやりして思考が空回りし、周囲から聞こえてくる会話はリズムと不快なニュアンスが強調される。 パニックになっている頭がふいに悲しい思い出を引っ張り出してくる……。 町田康はそんな気持ちにさせてくれる。 この短編集所収の「ふくみ笑い」はその最たるものだ。自分と世界とのわずかなズレ、軋みがしだいに大きくなっていく恐怖感。 自分ひとりがズレていき、他の人間はなにごともなくリズムにのっているのに、理解できないでいらだつ気持ち。 私は方向音痴でよく道に迷うのだが、そんな時、世界から取り残される不安感がひゅっと襲ってくる。 そのくせ、何かにいらだっている。 そんな気持ち悪さを表現してくれるのは町田康くらいだ。 表題作は、敗北感あふれる祭りの様子になぜかせつなさを感じた。 全体を通じて、透徹な青さが根底に流れているように思う。 美しい物語にはなりえない世界と、自分の青さとの折り合いがつかない哀しさ。 そんな感覚を味わわせてくれる。 [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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生きるってことは、綺麗ごとじゃない。完全な善人なんていないし、善人ぶった人だって、面の皮の下では、何考えてるかわかりゃしない。何が現実で、どこまでが夢で、虚構との境目はどこか…なんて、実は誰もわからないのかもしれない。町田康作品は初めて。何だかよく分からないけど、引き込まれていく...
生きるってことは、綺麗ごとじゃない。完全な善人なんていないし、善人ぶった人だって、面の皮の下では、何考えてるかわかりゃしない。何が現実で、どこまでが夢で、虚構との境目はどこか…なんて、実は誰もわからないのかもしれない。町田康作品は初めて。何だかよく分からないけど、引き込まれていく。自分の中の悪いものが引き出されそうで、さらけ出してもいいんじゃないかと思いそうで、怖いけど。残念なのは、漢字が難しすぎて、読めない字が多いこと。分からない単語を読み飛ばした英文読解のように、何となく雰囲気で味わった感じだが、町田康、ただならぬことは理解した。
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「鶴の壺」 むかし一緒に暮らしてた女が死にかけてるらしい というので見舞いに出向いたがなんだかんだあって引き返す つるつるの壺はたぶん関係ない 「矢細君のストーン」 テレビ観戦で応援してたボクシング王者の敗北を機に 自らの石信仰をあっさり放棄するエキセントリック友人の話 「工...
「鶴の壺」 むかし一緒に暮らしてた女が死にかけてるらしい というので見舞いに出向いたがなんだかんだあって引き返す つるつるの壺はたぶん関係ない 「矢細君のストーン」 テレビ観戦で応援してたボクシング王者の敗北を機に 自らの石信仰をあっさり放棄するエキセントリック友人の話 「工夫の減さん」 ケチで怠惰な己の性格を満足させるために 様々な工夫を凝らしては たいてい大失敗を繰り返す友人の話 「権現の踊り子」 承認欲求の多い料理店 悲惨な踊りとパワハラを見せられて逃げることができない 「ふくみ笑い」 現実と被害妄想の区別がつかなくなって 気づいたらおそろしい世界にトリップしてる 「逆水戸」 水戸黄門のパロディ ドライな黄門さまご一行が目論む勧善懲悪は現実の前に爆砕される
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町田康ならではの笑える部分よりも ちょっぴり切なく物悲しい気持ちが残る短編集。 工夫の減さん・ふくみ笑い・逆水戸が特に好き。
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古本で購入。 町田康の小説は精神が下向いてるときに読まない方がいい。 「夢とか希望って何ですか?」とでも言うような、湿った、黴臭い、底辺感が滲み出ていてきついのだ。 でも言葉のリズムに乗ってズンドコ読み進んでしまうのはさすが。 書き手のリズムと読み手のリズムが一致したときの感...
古本で購入。 町田康の小説は精神が下向いてるときに読まない方がいい。 「夢とか希望って何ですか?」とでも言うような、湿った、黴臭い、底辺感が滲み出ていてきついのだ。 でも言葉のリズムに乗ってズンドコ読み進んでしまうのはさすが。 書き手のリズムと読み手のリズムが一致したときの感覚はなかなか心地いい。 収録されてる「ふくみ笑い」の終盤、 「半分は嘘。半分は本当、ところが、わははははは。また全員がしらこい虚わらい。あぱぱの踊り、福祉餅」 とかね。 このキチガイじみた感じが実にたまらん。 この「ふくみ笑い」の破滅感と「逆水戸」の狂騒ぶり。ステキだ。
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莫迦(バカ)とか鹿唐(シカト)とか躑躅(つつじ)とか優婆夷(うばい)とか、難しい漢字やら当て字を並べ立て、その合間にぎょんべらむ、とか意味の分からん語句をぶっ込んでくる。相変わらずの町田康。 短編読んだのが久々なせいか、いつもにましてとっ散らかった世界観で、ちょい入り込めない感じはあった。 さんざんかき回して、最後はやけにさっぱり、虚無の中に放置される感覚、毎度おなじみ。 工夫の減さん、ふくみ笑い、逆水戸がツボ。
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『「猫の子をひろったので見に来て下さい。とても可愛い。名前をつけてください。今年の冬は厳しいキツイ、ピース」と書いており、ピースの後に、Vサインをする手の絵が書いてあった。減さんはたったこれだけのことを白紙に書き封筒に入れポストのところまで歩いていって投函したのだ。俺は減さんに電...
『「猫の子をひろったので見に来て下さい。とても可愛い。名前をつけてください。今年の冬は厳しいキツイ、ピース」と書いており、ピースの後に、Vサインをする手の絵が書いてあった。減さんはたったこれだけのことを白紙に書き封筒に入れポストのところまで歩いていって投函したのだ。俺は減さんに電話をかけた。 「別に電話でもいいよ」』 『つまり貯蓄するためにいろいろの工夫をして節約するのだけれどもその工夫が一定の効果を上げぬため、精神が鬱屈・内向、これを散じるために入費がかかり、その入費が工夫によって節約した金高を常に上回っていたのであり、減さんが貧乏をしているのはなまじ貯蓄をしようとしたからであるといえるのである。 しかしそれとて減さんが工夫をせずいま少し地道な手段、方法をとればそんなことにはなっておらず、減さんはいわば工夫によって窮地に追い込まれていっているともいえるが、しかしそれをなんとかしようとして減さんはますます工夫をするのである。』 『減さんは自分が内向した気を散じるために酒場に出掛けている間、子猫が渇死せぬように自動水遣り器を拵えているのだった。おそらく千円かそこいら出せば町でいくらでも購入できるものだろう。けれども減さんはそれを貯蓄に回すために自ら工夫する、失敗する、鬱屈する、飲みに行く、貧乏する。』 『文字や言葉は全部嘘でこういう青空だけが本当なのだ。この焦げ臭さとかね。』 『ワインを飲むというプラスと殴り倒されるというマイナスをどう計算すればよいか。何度か計算をしたところ僅かにプラスになった。俺はどつきまわされてもワインを飲む。腰が砕けても焼酎を飲む。それが俺の生きざまだ。』
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