介護と恋愛 の商品レビュー
かつて著者が同時並行で取り組んでいた父親の介護と彼との恋愛の日々。介護ものというと、苦労話とそこから見えてきた何やらすばらしいものという話になりがちだけど、この本は読みながら笑いを堪えるのに困ってしまうところもあった。遙家おもしろすぎ! 何かをいうと肉を食べたがる、外聞よりも金...
かつて著者が同時並行で取り組んでいた父親の介護と彼との恋愛の日々。介護ものというと、苦労話とそこから見えてきた何やらすばらしいものという話になりがちだけど、この本は読みながら笑いを堪えるのに困ってしまうところもあった。遙家おもしろすぎ! 何かをいうと肉を食べたがる、外聞よりも金こそすべて、往時の父の横暴とそれを耐え忍ぶでもない母の家事放棄ぶり……。大阪の下町の家族っぽい。 正直なところ、それほど介護を深く描いているという感じではない。でも、ヘタにかしこくならずに、いきなり介護に直面した人たちの戸惑いや怒り、混乱、意外と悲惨ではなさそうだったりといった様子がテンポよく書かれている。
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父親の介護をしながら仕事も恋愛もしていた時の記録。 婚約の日の両家顔合わせ時に、痴呆の父親が「おれはこんな話聞いていない」と言い出して、新郎予定者とその家族を激震させるところなど、悲劇なのか気喜劇なのかわからない迫力で、事実は小説より奇なりと呟きたくなります。 恋愛も介護もどち...
父親の介護をしながら仕事も恋愛もしていた時の記録。 婚約の日の両家顔合わせ時に、痴呆の父親が「おれはこんな話聞いていない」と言い出して、新郎予定者とその家族を激震させるところなど、悲劇なのか気喜劇なのかわからない迫力で、事実は小説より奇なりと呟きたくなります。 恋愛も介護もどちらも大事で、どちらも手放せず、どちらも全うできない悲しさは「介護と○○」の○○を抱えている人に共通する悲しさだと思います。 東大で上野千鶴子にフェミニズムを学んだ著者にして、この悲しみは避けられませんでした。自分がその時抱える○○は恋愛ではないと思いますが、せめて、フェミニズムを学んだ著者だから言語化できた経験の数々を忘れずに、自分の問題に当たりたいものです。
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おもしろかった。この本はノンフィクションであり、かつ、きれいごとだけが書いてあるわけではない介護本をはじめて読んだような気さえする。ぼけて寝たきりになった父親を「ぼけさらしよって、元気なときはさんざん迷惑かけたと思ったら、寝たきりになりやがって」などとののしる母親の姿などは、痛烈...
おもしろかった。この本はノンフィクションであり、かつ、きれいごとだけが書いてあるわけではない介護本をはじめて読んだような気さえする。ぼけて寝たきりになった父親を「ぼけさらしよって、元気なときはさんざん迷惑かけたと思ったら、寝たきりになりやがって」などとののしる母親の姿などは、痛烈であるが、現実はそんなもんなんだろうなあと思う。そして、まだまだ介護は女が仕事を辞めてでもやるもの、嫁の仕事といった決めつけの強さについても言及がある。恋愛というきれいごとと介護という現実を同時におこなうのは至難の業だ。結局のところ、遙さんの中では現実が勝ってしまった。現実が勝ってしまうところが、彼女の賢さであり、いわゆる「女の幸せ」から遠ざかってしまうところであろうが、もうしょうがないというか、それはそれで幸せということでしょう。
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私の人生を変えた1冊。気持ちが折れそうになった時、何度も読み返し、自分自身の人生をきちんと生きたいと力づけてくれる&自分を肯定してくれる本。
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実体験を書いたもの。 痴呆だが一見元気な父親の介護という大問題。 兄嫁から電話がかかっては駆けつける状況で、恋愛も同時に始まっていたのでした。 たたき上げの強烈な父親は、なかなかお洒落で実力もあるが、暴力的で酒を飲むと最低男に。筆者は中学生の頃に売春婦とののしられて髪をつかんで引...
実体験を書いたもの。 痴呆だが一見元気な父親の介護という大問題。 兄嫁から電話がかかっては駆けつける状況で、恋愛も同時に始まっていたのでした。 たたき上げの強烈な父親は、なかなかお洒落で実力もあるが、暴力的で酒を飲むと最低男に。筆者は中学生の頃に売春婦とののしられて髪をつかんで引きずり回されたこともあるという。ブラジャーが欲しいと言っただけで。 その父に新婚の頃から酷い目に遭わされたために介護はしようとしない母親。 6人兄弟がいるというと実は仲がいいんでしょうと思われがちだが、暴力の果てのセックスだとは強烈。 兄弟も多く、6人兄弟と妻たちで介護できるのは今時ではかなり特殊ではありますが… 交代で世話をするにしても、週に一度の休日がつぶれ続けたら、かなりしんどいですよね。 遊んでいても罪悪感にかられて気が休まらず、結婚を考える相手とのデートでも、親を放っておいているという気がしてくるとは。 介護の重さという点では共通したものもあると感じました。 もともと家はなにが起こるかわからない場で、父は人格が崩壊していたから、別人のように痴呆になるというショックは受けずに済んだとか。 仕事と恋愛と介護とは。金とセックスと道徳だというのが何とも。ぐいぐいと強い筆致で書かれています。 爆笑エピソードも。 紳士的で優しいのが良かった恋人のただし。大阪の仲間にはおかまかと言われたという。 恋は介護と共に去りぬというのがまた何とも。
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遥洋子を知ったのは、 『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』 という著書が出てからだった。 上野千鶴子のファンである私は 興味を持って本書を読んだのだが、 これはかなり面白かった。 『介護と恋愛』も きっと面白いだろうと思って、 e-bookoffで見つけて購入。 語り口が軽薄...
遥洋子を知ったのは、 『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』 という著書が出てからだった。 上野千鶴子のファンである私は 興味を持って本書を読んだのだが、 これはかなり面白かった。 『介護と恋愛』も きっと面白いだろうと思って、 e-bookoffで見つけて購入。 語り口が軽薄すぎる部分は あんまり好みじゃなかったりするのだが、 文章力はともかくとして なかなか迫力に満ちた本。 「父の介護」と、 同時期に発生した「恋愛」がテーマなのだが、 著者の個人史的な部分も大いにあり、 ひきこまれる。
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「わたしはずっと以前、医者をしている友人からいただいた手紙を大事に取っておいた。 ――― 「お父さんに優しくしてあげてください。それが、将来のあなたの心の支えにきっとなりますから……」 ――― でも、父を見送った後には、同じ言葉が辛かった。 それは「優しくできた」...
「わたしはずっと以前、医者をしている友人からいただいた手紙を大事に取っておいた。 ――― 「お父さんに優しくしてあげてください。それが、将来のあなたの心の支えにきっとなりますから……」 ――― でも、父を見送った後には、同じ言葉が辛かった。 それは「優しくできた」と、自覚できるもののみが獲得できる心の支えだったから。 ――― 壊れたことを嘆ける人には、前は壊れていなかったという前提がある。 父の場合、最初から壊れていた。 その性格や言動など、世間で言う理想や尊敬できる父、というイメージからはほど遠かった。だから、わたしは父が壊れていくさまを見ても、意表をつく痛みや衝撃は覚えずにすんだ。 ――― 逃げたよ、いろんなことから。でもね、一番逃げたかったのは、糞尿の匂いのする家でも、介護でも、親や兄嫁の苦しむ顔でもないんだ。 自分で自分を責める不愉快さから逃げたかったんだ。 介護をどれくらいやったかって? そんなの知らない。やったって言えばやったし、やったうちに入らないと言えば、その通り。それを誰が決めるかって、私じゃないんだ。介護をやってない人間が決めるんだよ。 ――― 介護をやった人間にとっては、介護は、どれほどやっても、やってないんだ。 仕事の合間にすれば、ああ仕事の時はできてない、って自分を責めるんだ。 ――― 「自分」と言葉にしたとたん、矛盾した二つの自分が立ち現れる。 だから、自分らしくあろうとするほど、爽快感とか快適とかじゃなくて、いつも責めと迷いが待っている。 私は介護から逃げたのではない。 自分を責める自分から逃げたのでもない。 私は、自分から、逃げた。 自分と言う存在の不愉快さから逃げようとして、そして逃げ切れなかった。」
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