ラストシネマ の商品レビュー
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哲太少年と町に戻ってきて入院している田村雄治をめぐるラストシネマと中村正太郎さんのことの二編。 ラストシネマははいゆうをめざして東京に出たが、あきらめて戻ってきた雄治と映画好きの哲太は映画の話でつながっているが、哲太は、雄治がかつて一度だけセリフをもらったという映画を探して、雄治に見てもらおうとする話。年の離れた哲太の雄治のためにという思いと、支える周囲の人々の助けに心あたためられる。
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シンプルに良い話ではあるが、主人公が小学校3年の時の記憶の回想にしては人間観察や状態描写が普通に大人で、違和感あり過ぎだった。
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捨てたはずの故郷だった。 夢破れ、最後を迎えようとしていた"男"。 少年は偶然見つけた。 スクリーンの中に"男"の姿を。 少年の想いに理屈なんて存在しない。 その想いを受け止めてくれた大人たち・・・・ 諸々がベタな...
捨てたはずの故郷だった。 夢破れ、最後を迎えようとしていた"男"。 少年は偶然見つけた。 スクリーンの中に"男"の姿を。 少年の想いに理屈なんて存在しない。 その想いを受け止めてくれた大人たち・・・・ 諸々がベタな訳。 それでも必要以上に涙腺決壊してしまう。 それは作者の目線、その優しさだと思う。 そこにはあざとさの一片も無いです。
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雄さんに観せようというその気持ちだけで、第2スカラ座まで映画を観に通う哲太が素敵。 あとは、哲太の父さんが生と死について語る場面がすごく印象に残った。
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寡作で良質の作品を私たちに与えてくれる辻内氏。表題作も併録作もじわじわっと心に染み入る物語だ。 「ラストシネマ」は主人公の父親が個性的でかっこいい。真似したくても出来ない。本当の男の姿を見た。 「中村正太郎さんのこと」は、何気ない中年男の一日も早くを描きながらも、奥行き深い傑作だ...
寡作で良質の作品を私たちに与えてくれる辻内氏。表題作も併録作もじわじわっと心に染み入る物語だ。 「ラストシネマ」は主人公の父親が個性的でかっこいい。真似したくても出来ない。本当の男の姿を見た。 「中村正太郎さんのこと」は、何気ない中年男の一日も早くを描きながらも、奥行き深い傑作だ。背中で語る男ってこういう人を言うのだろう。
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主人公が小学生の頃、癌に侵されて東京から帰ってきた雄さん。その雄さんが一度だけ端役で出た映画を最期にもう一度見せてあげたい。 淡々したペースで進んでいくものの、ストーリーの空気感が独特で一気に読んでしまった。 最後に主人公が語る、悪人を書けない理由、自分の書きたい物語のくだりがとても、とても良かった。 このラストシネマは正にその通りの物語になっているし、私はそういう話を探しているんだなと思った。 語り手の主人公含めた登場人物すべてが、読んでる人の気持ちを暖かくしてくれる名作。
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再読了。 7年振りに新作が出るので、おさらいと云う意味で読み直しました。 ~その間(2009年)に、「草風夏五郎」という変名で一冊、出しているのですが・・。 悪い人が出てこない作品は安心して読めます。 善人・・、とまではいかなくても普通の人だけで、悪人を出さずに物語を描ける...
再読了。 7年振りに新作が出るので、おさらいと云う意味で読み直しました。 ~その間(2009年)に、「草風夏五郎」という変名で一冊、出しているのですが・・。 悪い人が出てこない作品は安心して読めます。 善人・・、とまではいかなくても普通の人だけで、悪人を出さずに物語を描ける数少ない作家さんの作品です。 軽妙な文章の中で、相変わらず人生を語っています。 「小学校三年生のお前に、これだけを言っておこう。このせかいの、見えないものを見る目を持て、そうすりゃ人生は、多少はマシなものになる」 本作はエピローグが不要のようにも思えます。 ・・ですが、そのエピローグの中で、脚本家の主人公の言葉として「悪人を書く能力はない」、「そろそろ、この稼業から足を洗おうかと思っている」などと言わせ、これは辻内さんの思いなのではないか、もう書いてくれないのではないかと、ファンとして気を揉んだりしたものです。
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(Amazonより) この世の生を終えるとき、人はその向こう側へ何を持っていくのだろうか。 昭和40年代のH市、にほど近い田舎町。少年は東京で映画の仕事をしていた雄さんという男性に出会う。雄さんはがんに全身を冒され、町の病院に入院していた。見舞いに行く少年に、雄さんは東京の話や、...
(Amazonより) この世の生を終えるとき、人はその向こう側へ何を持っていくのだろうか。 昭和40年代のH市、にほど近い田舎町。少年は東京で映画の仕事をしていた雄さんという男性に出会う。雄さんはがんに全身を冒され、町の病院に入院していた。見舞いに行く少年に、雄さんは東京の話や、映画の話を聞かせてくれる。 ふとした会話から少年は雄さんがかつて映画に出演し、台詞のある役をもらっていたことを知る。 雄さんが死ぬ前にどうしてもその映画を見せたい。 題名も知らないその映画を、少年は探そうと決心した――。 映画への情熱と、生きることの意味・大切さを ちりばめた物語です。 昔、映画に出演し、セリフのある役をもらったことのある「雄」さん、 小学3年生の主人公の男の子。 一風変わった少年の無職の父親、純ちゃん。 同級生の民江。 父親の元同級生で、有楽座という映画館を経営しているおじさん。少年の通う小学校の先生の和子先生。 登場人物の中に固有名詞で語られない人物がいたり、 あだ名や下の名前だけだったりという設定が ちょっとおとぎ話のような不思議な気持ちになります。 そして、映画を観る方法がまだ映画館しかなかった頃の ワクワク感が伝わってきて、自分がその時代を知らないことが 惜しまれるような気持ちになりました。 人の生死についての考え方について独特な指南をする 主人公のお父さん。 もしこの映画が映画化したら、このお父さん役はとても重要ですね。 なんともいえない魅力にあふれた人物ですので。 いいお話です。 気に入りました。
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「他のすべてを失ってでも愛したいものが、そこに、ひとつでも有ったか、ってことなんじゃないかしら」 作中より抜粋
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哀しく美しい物語。 この人の作品は、どれも美しい。登場するのは善意の人ばかり。 悪く言えば「奇麗事」であり、またストーリーそのものも「紋切り型」であることが多い。でも私は惹かれてしまう。 この作品のエピローグに、本編で9歳だった少年が、47歳の脚本家になってつぶやく言葉がある...
哀しく美しい物語。 この人の作品は、どれも美しい。登場するのは善意の人ばかり。 悪く言えば「奇麗事」であり、またストーリーそのものも「紋切り型」であることが多い。でも私は惹かれてしまう。 この作品のエピローグに、本編で9歳だった少年が、47歳の脚本家になってつぶやく言葉がある。少し長いが引用してみる。 ===== キミは悪人が書けないね。 或る大物プロデューサーからそんな事を言われたことがある。(中略) そうかも知れないと、自分でも思う。 と言って<悪人を書けるようにナロー!>などという目標を書いて机の前に貼る気も無い。(中略) 父に似たのか、どこかヘソ曲がりな所のある私は、例えば今の世の中が、のほほんと、平和で、穏やか過ぎるくらいに穏やかなものであるなら、もし今がそんな時代であってくれるなら、そこに人間の持つおぞましさの一つでも放り込んでやりたい気分に多分なるのだろうと思う。(中略) けれどこんな、うんざりするほどリアルにおぞましさが氾濫し、日々その潮位が増していくような時代の中で、そこにわざわざ人間の悪を創作するという事に、私は余り興味が持てない。大火の前で一本のマッチを擦ってみせるような虚しさを覚える。私はただ、かつて私を育んでくれた映画たちのようなーーうまく言えないがーー小さくても、そこに何かしら心の匂いがするような、そんな物語を書きたいとだけ思っている。 ===== 多分、この主人公は辻内さんの分身なのだと思います。
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