海潮音 の商品レビュー
文学史でも重要な詩集…
文学史でも重要な詩集「海潮音」。翻訳詩の良さをしみじみと感じました。
文庫OFF
【まとめ】 ・訳詩の特徴: 七五調の適用 ・翻訳の目的: 翻訳をつうじた国文学の改善、文学に対する日本人の啓蒙 ・本書の歴史的な意義: 日本の詩壇にはじめて象徴詩をもたらした 【感想】 日本の近代詩にひとつの画期をもたらした点で重要な作品なのだろうとは思う。でもあいにく私は古語...
【まとめ】 ・訳詩の特徴: 七五調の適用 ・翻訳の目的: 翻訳をつうじた国文学の改善、文学に対する日本人の啓蒙 ・本書の歴史的な意義: 日本の詩壇にはじめて象徴詩をもたらした 【感想】 日本の近代詩にひとつの画期をもたらした点で重要な作品なのだろうとは思う。でもあいにく私は古語の感性に乏しく、現代語の枠内でしか鑑賞できないので、この訳詩集の特徴である、西欧近代詩が日本の七五調にあわさる響きの妙をうまく味わえず、読んでも字面が素通りするだけだった。高校の古文が好きな人ならもっと感動があるのかな、と思った。
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美しい言葉というのは、時が経っても美しい。もちろん全部がお気に入りになったわけではないけれど。短い甘美な抒情詩に、はっとなる名訳が多い気がする。不思議なことに、漢詩を書き下して訳した名文と同じ匂いがするのは何故か。もっと現代語でも良い訳はあるだろうのに。それでも。 『秋の日の』...
美しい言葉というのは、時が経っても美しい。もちろん全部がお気に入りになったわけではないけれど。短い甘美な抒情詩に、はっとなる名訳が多い気がする。不思議なことに、漢詩を書き下して訳した名文と同じ匂いがするのは何故か。もっと現代語でも良い訳はあるだろうのに。それでも。 『秋の日の』 『心も空に奪はれて』 読んでしまったら、これ以上の訳があるかいと思ってしまう。これは詩集なのだから、全部分かる必要もない。分かっても好きかどうかが大事で、この薄い瀟洒な本の中に、美しいなと思う詩がひとつでもあって、愛誦できればそれでいいのだ。少なくとも、一生あと何日生きるか知らぬが、キラキラしたこの言葉が、胸で光っていればいい。 日本史の教科書で習う、事績としての『海潮音』でなく手に取れる書物として実感が持てたのは、ちょっと遅いが、やはりいいことだ。小難しいかなって心配をするより、読んでその絢爛たる詩に触れてみれば、きれいなものだな、哀愁零れんばかりの世界だな、と酔えるだろう。そこから先、好きか嫌いかは、訳文が旧いからと言うより、これは相性だと思う。刺さるか、そうでないか。遠い異国から打ち寄せる波の如き浪漫。 なるほど、『海潮音』と名づくるはずだ。当時は波濤を越えてゆくしか路はなく、島国日本で読むがゆえに、行けそうな、遠くて叶わなさそうな、遥かな異国の書物であったのだもの。上田敏の知性と抒情のバランスと鋭さには、敬服した。読んでみてよかったと思う。
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お恥ずかしながら「山のあなた」しか知りませんでした・・・ 上田敏て明治の文筆家だったんだな・・・ どうりでこの・・・文語調・・・
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ここからとられたアンソロジーで、いくつかの詩にはなじみがあったが、全文を読むのは初めて。「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し」と詠った朔太郎は、この詩集を読んで何を想っただろうか。ルコント・ドゥ・リイルなど、高踏派の詩人たちの訳詩は、あまりにも大時代だが、ボード...
ここからとられたアンソロジーで、いくつかの詩にはなじみがあったが、全文を読むのは初めて。「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し」と詠った朔太郎は、この詩集を読んで何を想っただろうか。ルコント・ドゥ・リイルなど、高踏派の詩人たちの訳詩は、あまりにも大時代だが、ボードレールやヴェルレーヌ等の象徴派の詩は、今も切々とうったえかけてくるものがある。ことにマラルメの『嗟嘆(といき)』の浪漫的な象徴性は、白秋や朔太郎の詩にその面影を求めることができる。「淡白き吹上の水のごと、空へ走りぬ」。
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翻訳物とは思えないほどの、美文。 古語の美しさ、語数の奏でるリズム、原詩が持つであろう言葉の響きとイメージを最大限に日本語に移しかえたその心意気。上田敏自身はオリジナルの詩をほとんど書かなかったそうだけれど、これはこれで一つの大きな才能だと思う。 そして私は、序文にある、象徴詩の...
翻訳物とは思えないほどの、美文。 古語の美しさ、語数の奏でるリズム、原詩が持つであろう言葉の響きとイメージを最大限に日本語に移しかえたその心意気。上田敏自身はオリジナルの詩をほとんど書かなかったそうだけれど、これはこれで一つの大きな才能だと思う。 そして私は、序文にある、象徴詩の何たるかについての記述に感じ入った。
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山のあなたの空遠く、 「幸」住むと人のいふ。 ああ、われひとと尋めゆきて、 涙さしぐみ、かへりきぬ。 山のあなたになほ遠く、 「幸」住むと人のいふ。 『山のあなた』 カール・ブッセ(上田敏訳) 若い頃に聞いて、耳に残っていた詩だか、恥ずかしながら最近、訳詩であることを知り...
山のあなたの空遠く、 「幸」住むと人のいふ。 ああ、われひとと尋めゆきて、 涙さしぐみ、かへりきぬ。 山のあなたになほ遠く、 「幸」住むと人のいふ。 『山のあなた』 カール・ブッセ(上田敏訳) 若い頃に聞いて、耳に残っていた詩だか、恥ずかしながら最近、訳詩であることを知り、「海潮音 上田敏訳詩集」を購入。 日本語の豊かな音楽性を味わえる。 至福の詩(うた)に出会える。
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この訳ははっきり好みわかれそうだな。私は良いリズムだと思ったけど。 フランソア・コペエの「礼拝」がとにかく圧倒的で。重い。 あとガブリエレ・ダンヌンチオの「燕の歌」好き。 ルコント・ドゥ・リイルもよかった。 とりあえず一読した印象で感想書いておく。
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「西の善き魔女」第3巻での使われ方が美しくて美しくて。 当時図書館でがんばって探したなぁ。 新潮文庫版は置いてなかったから、「日本の詩歌全集」みたいなのを漁って、気に入った詩を一生懸命ノートに書き写していた。 懐かしい。ずっと手元に置いておきたい詩集。
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日本語の美しさを端的にあらわした名訳。 中学・高校の教科書で出会ってから○○年。ようやく読了。 良い物は時代が変わっても輝きを失わない。その証明です。 やはり『山のあなた』の響きが好きですね。
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