銀のロバ の商品レビュー
日本ではロバが出てくるお話は然程多くはないと思いますが、ヨーロッパや中東では、愚鈍で愚か者、そして頑固で怠け者の象徴として登場するようです。 しかしロバは粗食に耐え、飼い主に従順な性格で、どのような辛い荷の運搬にも黙々と働いてくれる使役として、古代より人の側にいたそうです。 『 ...
日本ではロバが出てくるお話は然程多くはないと思いますが、ヨーロッパや中東では、愚鈍で愚か者、そして頑固で怠け者の象徴として登場するようです。 しかしロバは粗食に耐え、飼い主に従順な性格で、どのような辛い荷の運搬にも黙々と働いてくれる使役として、古代より人の側にいたそうです。 『 銀のロバ 』では、とても賢い従順なロバの話が4話綴られていました。 時代は第一次世界大戦、フランスの海岸沿いの町に住む10歳のマルセルと8歳のココ姉妹は、森の中で視力を失った兵士が倒れているのを見つけます。 その兵士シェパード・チューイは脱走兵なのですが、姉妹は彼を見つけた事を秘め事として興奮し、二人して彼を助けようと食糧を親に隠れて運びます。 チューイも姉妹の助けたいとの純粋な気持ちに感謝しつつ、徐々に3人は打ち解けていきます。 そしてチューイが大切に持っていた小さな銀製のロバにココは関心を示し、兵士はロバにまつわる話を姉妹に聞かせることになります。
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題名にまず惹かれ、表紙の絵を見て、絶対にこれは読もうと思った。表紙の絵も字も、配色も艶感も、全て見惚れる。 戦場から逃げてきた目が見えなくなった兵士さんを森で見つけた女の子のマルセル。妹のココや兄のパスカールも一緒に、兵士さんを助け、仲良くなり、故郷に帰してあげる計画を練る。 ...
題名にまず惹かれ、表紙の絵を見て、絶対にこれは読もうと思った。表紙の絵も字も、配色も艶感も、全て見惚れる。 戦場から逃げてきた目が見えなくなった兵士さんを森で見つけた女の子のマルセル。妹のココや兄のパスカールも一緒に、兵士さんを助け、仲良くなり、故郷に帰してあげる計画を練る。 兵士さんはとても優しく穏やかで、ポケットに銀のロバのお守りを持っている。時々、子供達にロバにまつわるお話をしてくれる。そのお話には、悲惨な戦争の体験もあった。語られるお話では、動物も人も沢山死ぬ。児童書でこんなに沢山の死をしっかりと書くのは珍しい気もする。でも、それが戦争の実態である。 人を助けるために動物が犠牲になる、という話はよくあり、この本にも出てくる。どうして人のためなら動物が犠牲になっていいという発想になるのかさっぱり理解できないし、しかも、動物も使命感や優しさを持ってそうしているみたいに描く人間のエゴに呆れる。しかし、やはりこの本を読むと、ロバの健気な行動に深く感動してしまう自分がいて、申し訳ない気になる。 訳者のあとがきに、「一見シンプルなストーリーの中に、様々な味わいが隠されている」と書かれていた。読み終わって、何が書かれていたか思い返すと、確かに一つ大きな物ではなく、多岐にわたる色々があり、あまりはっきりと思い出せない。ただ、ロバのおまもりのイメージが心に頭に深く刻まれている。おまもりは、兵士さんが持ったままでいて欲しかったな。
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フランスの海沿いの小さな村に住む幼いマルセルとココの姉妹は、森で倒れている目の見えない兵隊さんを見つける。 兵隊さんは「シェパード・チューイ(中尉)」という名前で、病気の弟に会うために軍隊を離れて海の向こうのイギリスに帰ろうとしているんだって。兵隊さんは幸運のお守りを見せてくれた...
フランスの海沿いの小さな村に住む幼いマルセルとココの姉妹は、森で倒れている目の見えない兵隊さんを見つける。 兵隊さんは「シェパード・チューイ(中尉)」という名前で、病気の弟に会うために軍隊を離れて海の向こうのイギリスに帰ろうとしているんだって。兵隊さんは幸運のお守りを見せてくれた。 手のひらに入るくらいの銀のロバ。 ほっそりと立った耳、ぼさぼさのたてがみ、丸っこい鼻面、細くて丈夫な足、尻尾の先は丸くなっている。 ココは銀のロバに夢中なる。そのまま駆け出しそう。私を乗せて、兵隊さんを乗せて。 マルセルとココは、兵隊さんのことは秘密にすること、食べ物や必要なものをこっそり持ってくることを約束する。 でも兵隊さんを海の向こうのイギリスに返してあげるには、子供の自分たちだけでは力が足りない。 二人は兄のパスカールに知らせる。 パスカールは小さい妹たちをいつもからかう。でも私達の内緒の兵隊さんを助けるためには仕方がない。 どうやってここまできたの?そのロバはどこで見つけたの?戦争ってどんなこと?人を撃ったことはある? そんな三人の子どもたちに、シェパード中尉はロバにまつわるお話を聞かせる。 身重のマリアを、そして産まれた幼子イエスを運んだロバ。 空が地上の人間や動物に腹を立て、もう雨を降せないと決めたときに空の心を動かしたロバ。 戦場で衛生兵に寄り添い負傷兵を運び続けたロバ。 そしてシェパード中尉の素晴らしい弟が見つけた、この銀のロバ。 この銀のロバは、信頼できる、勇敢な人が持っているものなんだ。 シェパード中尉は自分の経験した戦争を語らない。それはとても残酷で酷いものをたくさん見た。自分が戦場で役に立てると思った気持ちを吹き飛ばすくらいに。 だから家に帰ることにした。誰も気が付かない、シェパード中尉の部下が死んだことも、シェパード中尉が姿を消したことも。もうこの世を見たくないと思ったシェパード中尉の目は、歩くうちに見えなくなっていった。 <この戦争は人間同士の戦いではなく、目に見えない、恐ろしい力を持つ神や悪魔が人間を兵器代わりに使って戦っているのではないか。そうした神や悪魔はやりたい放題だ。(中略)人間を大切に扱おうなんて考えもせず、壊れたりなくしたりても、魔法で元に戻せると思っている。P100> 兄妹は、兵隊さんを逃がすためにもうひとり、大人の協力者を頼むことにした。足に障害を抱えるファブリーズだ。 自分自身に不甲斐ない思いを抱えるファブリーズは、シェパード中尉が脱走兵だと承知した上で協力を申し出る。 <思いきって勇敢なことができるチャンスなんて、人生でそう幾度もあるもんじゃない。金だなんて野暮なことを言って、おれのチャンスを台無しにしないでくれよ! P142> シェパード中尉が出発した翌日、ココは一人で森に行く。 兵隊さん、どうして行っちゃったの。寂しいよ。 そして銀のロバ、本当に誠実で信頼できて勇気がある人が持っているといったあのロバは? ココは、地面のくぼみを掘ってみる… === 非常に心に沁みる良いお話です。 穏やかな森で、穏やかなシェパード中尉ですが、彼の思い出す戦争はとても悲惨。英雄に憧れるパスカールは戦争の話を聞きたがるけれど、シェパード中尉はロバの話をします。 ヨーロッパではマヌケでノロマ者に例えられるロバですが、シェパード中尉のお話では、目立たないものこそ勇敢な心を持ち自分のできることをする、その行為一つ一つがこの世をいいものにしている、という象徴になります。 静かで穏やかで、とても芯の強いお話です。 <わたしは苦しみを知っています。でもだからこそ、みんなが苦しむのを見るのは耐えられないんです(中略) 自分の代わりに世界じゅうが苦しんでいるのを見るくらいなら、いっそ自分が苦しみに耐えるほうがましです。(中略)P87〜抜粋> <この世界には、一生かかっても情を持って正しく生きることのできない連中がいる、その一方で必ず、孤独で、怯えていて、虐げられ、途方に暮れる者たちがいる。だが、そうした者たちが苦しみという重荷を背負っている限り、せめて彼らの目を楽しませるために、私はこの世界を美しく保つことを約束しよう。(中略) 雨は、何もかもを欲しがる者たちのためではなく、ほとんどなにも欲しがらない者たちのために降っているのだ。P88〜抜粋>
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読んでいるうちにだんだんと惹き込まれました。 世界各地で起こってる紛争、戦争、物語の舞台の100年前と変わらない状況が繰り返されてることをひしひしと感じました。
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学生の頃に何度も読み返していた本です。 ストーリーの中で、兵士が子どもたちに話を聞かせるという形で、いくつかロバに関係する短編が出てくるのですが、どれもロバが聡明で心優しい動物として描かれており、ロバの魅力が伝わってきます。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
第一次大戦中、フランスの海沿いにある町の森の中で、マルセルとココは兵士が倒れているのを見つける。 それは脱走兵なのだが、10歳と8歳の少女は彼を助けるため、毎日家から食料などを持って森へ通う。 病気の弟に会うためにイギリスの家に帰るのだという兵士のため、マルセルは考える。 自分とココだけでは何もできないので、兄のパスカールに相談する。 パスカールは大人の手が必要であると、大人の友人ファブリースに声を掛ける。 脱走兵をイギリスに返すことに協力してもらうため。 まず自分の限界をする。 そのうえで、何が足りなくて、どうそれを補えばいいのかを考える。 これを繰り返して、最初は不可能と思われた、盲目の兵士をイギリスへ帰すことが可能となった。 マルセルやココが持って来たものを食べながら、兵士はロバにまつわるお話をする。 自分の身を顧みず、他者のために力を尽くすそれらのロバの話は、子どもたちにいろいろなことを考えさせる。 日本ではあまりなじみのないロバだけれど、欧米ではマヌケや頑固者の代名詞だったり、重い荷物を背負わされて、倒れるまで働かされたりする存在だ。 そのロバが人を助けることの意味。 兵が持っていた幸運のお守りは、最後、子どもの喜びそうな方法で譲られるけど、それはどうなんだろう。 物自体を渡さなくても、銀のロバの意味を知ったことで幸運のお守りはみんなに渡ったとは言えないだろうか。 元気なココは探検家になるのかもしれない。 戦争の現実を聞いてもなお、英雄に憧れるパスカールは本物の英雄になるかもしれない。 けれど、いつも兵士のために何ができるだろうと考えていたマルセルは、きっと人を助ける人(看護師とか)になれると思う。 目立たなかったけれど、私は彼女が一番好きだった。
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すごく雰囲気のあるお話。悲惨な戦場と、穏やかな村の森の中との対比がいいです。最後の数ページはみんなの計画がうまくいくのか、どきどきしながら読みました。
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あるひんやりした春の朝、イギリス海峡を臨む森の中で、マルセルとココ、ふたりの幼い姉妹は盲目の兵士に出会った。 彼は「シェパード・チューイ」。 海峡を越えた先にある故郷、家に帰りたい一心で軍を脱走しここまで歩き続けてきたものの、なにが原因か分からないまま視力が徐々に失われ、ついに目...
あるひんやりした春の朝、イギリス海峡を臨む森の中で、マルセルとココ、ふたりの幼い姉妹は盲目の兵士に出会った。 彼は「シェパード・チューイ」。 海峡を越えた先にある故郷、家に帰りたい一心で軍を脱走しここまで歩き続けてきたものの、なにが原因か分からないまま視力が徐々に失われ、ついに目が見えなくなって森の中に座り込み、途方に暮れているしかなかったという。 大人にこのことが知れたら、彼は軍に連れ戻されてしまう。 マルセルとココは彼の存在をふたりだけの秘密にして、チューイに僅かな食料を運び、かわりにチューイはふたりにせがまれるまま、ロバにまつわる4つの物語を聞かせた。 やがて「自分たちだけではチューイを家に帰してあげることはできない」と判断したマルセルは、兄のパスカールに秘密を打ち明ける。 賢いパスカールはすぐにチューイを助ける方法を考え出す。 それは兄妹たちにとって、かけがえのない冒険のはじまりだった――。 明言されていませんが、作中のチューイ(中尉)の回想のなかでノーマンズランドという言葉が出たことと後書きから、舞台は第一次世界大戦中のヨーロッパ、フランスではないかと思われます。 幼い姉妹が失明して行き場を失った脱走兵を無事に逃がそうとする本筋のストーリーと、その兵士が子供たちに聞かせるロバにまつわるおとぎ話が絡み合い、戦時下が舞台ながら心の温まる、勇気と優しさの物語になっています。
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第一次世界大戦、西部戦線のころをイメージしたらしい、フランスが舞台の小説。 といっても戦争のドンパチがメインじゃない。戦争のある時代の日常のお話。 幼い姉妹が、ある日森の中で目の見えない兵隊さんをみつけ、故郷のイギリスへ帰してあげようとする。 子供にとっては「スタンドバイミー」...
第一次世界大戦、西部戦線のころをイメージしたらしい、フランスが舞台の小説。 といっても戦争のドンパチがメインじゃない。戦争のある時代の日常のお話。 幼い姉妹が、ある日森の中で目の見えない兵隊さんをみつけ、故郷のイギリスへ帰してあげようとする。 子供にとっては「スタンドバイミー」的な大冒険。 大人にとっては切実で命がけの綱渡りな「千一夜物語」。 兵隊さんがしてくれた四つの「ロバの話」を挟んで、おだやかな森の中と戦争のある外の世界が交差する。 子供らしさと若者らしさとリアルな世界のバランスがいい。 文章に森の空気や土のにおいがする。 「真夜中の動物園」はちょっとクドく感じたけれどこちらは違和感なく美しい。 妹が「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」と呼んでいるのが気になる。 一度だけ「マルシーに~」というセリフが出てくるけどこれはマルセルの愛称…だよな? いきなり出てくるから誰かと思った。
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本は装丁重視で選ぶことが多く、 この本はまさに表紙に惹かれて手に取ったものです。 なぜわたしはこんなにロバの表紙にわくわくしてしまうの...? 以前も「プラテーロとわたし」という本を表紙で衝動読み? したという経験があり。。。 今回もはずれなくおもしろかった! お話の中に出て...
本は装丁重視で選ぶことが多く、 この本はまさに表紙に惹かれて手に取ったものです。 なぜわたしはこんなにロバの表紙にわくわくしてしまうの...? 以前も「プラテーロとわたし」という本を表紙で衝動読み? したという経験があり。。。 今回もはずれなくおもしろかった! お話の中に出てくる二人の姉妹がとてもかわいい。 生真面目でしっかりものの姉と 奔放で心やさしい妹。 どちらも大好きにならずにはいられないキャラクターです。 「となりのトトロ」の姉妹に雰囲気が似てるかも。 物語の中で、兵士の語るお話が4つ。 そのどれもがロバを主題にしたお話なのですが、 どれもぐっと心にしみます。 情景が目に浮かぶような語り口もよかったです。 自分が幼いころに持っていた、 秘密を共有するドキドキ、わくわくの心や 誰かのために何かをしてあげたい!という無償のやさしさみたいなものを 思い出させてくれました。
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