M色のS景 の商品レビュー
短編4作品を収録しています。 「M色のS景」と「オクトパ・バイブレーション」は、ひろい意味での性愛関係をテーマにした作品ですが、どちらも対立する二人の人物がみずからの存在を賭けて議論を交わし、畳みかけるような冗語で埋め尽くされていく点が目を引きます。ことばを武器にしてくりひろげ...
短編4作品を収録しています。 「M色のS景」と「オクトパ・バイブレーション」は、ひろい意味での性愛関係をテーマにした作品ですが、どちらも対立する二人の人物がみずからの存在を賭けて議論を交わし、畳みかけるような冗語で埋め尽くされていく点が目を引きます。ことばを武器にしてくりひろげられる彼らの戦いそのものが、アブノーマルな愛のかたちを「浮き彫りにする」し、それによって極限的な愛がかたどられています。 「これは餡パンではない」は、ルネ・マグリットの作品をもじったタイトルから予想されるとおり、かつての「読売アンデパンダン展」に代表されるエロ・グロ・ナンセンスに満ち満ちた一部の前衛芸術作品の「くだらなさ」を風刺するというしかたでストーリーが展開していきます。ポロック、ニューマン、ロスコに代表される芸術家たちの活動は、「芸術」という枠組みそのものへの問いなおすという側面を含んでいますが、そうしたメタ的な視点を作品そのもののうちに取り込むことは、文学においてこそむしろ十全になしうるというべきでしょう。しかしそうであるならば、本作はそうした芸術家たちの試みを受け継ぐ、いわゆる「前衛芸術」の「陳腐さ」を浮き彫りにしていると同時に、まさしくそのようなしかたで「浮き彫りにする」ことの「陳腐さ」をも暴露しているということができるのではないかと考えます。
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