白仏 の商品レビュー
辻仁成氏が祖父をモデルに、筑後川の最下流、有明海に接する河口の島・大野島を舞台に描いた大河小説。 「何のために生きるのか」、「死とは何か」という生きていく中で誰もが必ず行き当たる命題を絶えず考え続けた主人公・鉄砲屋稔の人生が、淡々とした文章で彩られていく。 地味だけど退屈じゃな...
辻仁成氏が祖父をモデルに、筑後川の最下流、有明海に接する河口の島・大野島を舞台に描いた大河小説。 「何のために生きるのか」、「死とは何か」という生きていく中で誰もが必ず行き当たる命題を絶えず考え続けた主人公・鉄砲屋稔の人生が、淡々とした文章で彩られていく。 地味だけど退屈じゃない、一人の人間の生き様がそこに在る。 戦争で敵を殺したことに悩み続け、愛する者たちを失った先にたどり着いた、遺骨で仏を作るという試み。実際に大野島にそれがあるのですね。画像を検索して見たら、白くて綺麗な仏様でした。 作中で稔が至った死の境地、 「死とは常にそばに在ることだと思うとです。生きたもんのそばに在ること、それが安らかな死だと思うとです」という言葉に深く感じ入りました。 死が絶望なら生きる意味はあるのか?という彼の一生の命題に対する答えだったのでしょう。 穏やかで満ち足りた読後感を味わえる作品でした。
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自らの祖父鉄砲屋をモデルにして、生と死、魂について書き上げた作品。 子供ん頃は死が分からんために恐ろしくて仕方なかったとです。ばってん今は違う。短かろうが長かろうが生を全うしたところに死という入り口があるとです。 死とは常にそばに在ることだと思うとです。生きたもんのそばに在るこ...
自らの祖父鉄砲屋をモデルにして、生と死、魂について書き上げた作品。 子供ん頃は死が分からんために恐ろしくて仕方なかったとです。ばってん今は違う。短かろうが長かろうが生を全うしたところに死という入り口があるとです。 死とは常にそばに在ることだと思うとです。生きたもんのそばに在ること、それが安らかな死だとおもうとです。
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辻仁成さんの作品を読むのは芥川賞受賞作「海峡の光」含め7冊めとなりますがこちらの作品が一番好きでした。 終始、面白く一気に読み終えました。
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作者が自らのルーツを探るため、鉄砲屋であった祖父をモデルとして“肉体と魂と死”を描いた作品。 筑後川に浮かぶ大野島の刀鍛冶屋に生まれた主人公の稔は、少年の頃から家族や友人、初恋の人の死に出会い、生涯を通して「死とは何か」を考え続ける。 場面場面がこわいほどリアルな映像となって読者...
作者が自らのルーツを探るため、鉄砲屋であった祖父をモデルとして“肉体と魂と死”を描いた作品。 筑後川に浮かぶ大野島の刀鍛冶屋に生まれた主人公の稔は、少年の頃から家族や友人、初恋の人の死に出会い、生涯を通して「死とは何か」を考え続ける。 場面場面がこわいほどリアルな映像となって読者に訴えかけてくる。そのためか、テーマが観念的でありながら非常に印象深い作品だ。民俗学的な側面が強いために海外の人の興味をひいて賞を受賞したのかも、と思った。 ☆仏フェミナ賞
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辻仁成、私的には五冊目。 デビュー当時の鼻に付く表現は、ぐっと影を潜めた。感情表現が、煩わしくなく、でも、ストレートに伝わってきた。 先入観なく(というかほぼ情報がない状態で)読みはじめたけれど、死を出発に生を思う主人公の人生に引き込まれた。 辻仁成は、角度を変えながら、生を語っ...
辻仁成、私的には五冊目。 デビュー当時の鼻に付く表現は、ぐっと影を潜めた。感情表現が、煩わしくなく、でも、ストレートに伝わってきた。 先入観なく(というかほぼ情報がない状態で)読みはじめたけれど、死を出発に生を思う主人公の人生に引き込まれた。 辻仁成は、角度を変えながら、生を語っているのかもしれない。 ただな、少し前に読んだ『右岸』とかぶるんだよな。だから、読むのは時々にしよ。生きることを真面目に考えたい時に(^^)
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「死とはなにか?」「残された者はどう生きたらいいのか?」を真摯に問い続けた男の一生。著者からの限りない尊敬が貫かれている。宗教臭さがまったくないのに、読後は祈りの気持ちになる。「作品の紹介」は的外れ。
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彼のお薦め、構想や視点が面白かった。一度読み終えてすぐに「最初はなんだったかな」って戻って読んでしまう本って、巧いなって思うんだけど‥そんな本だった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
著者の祖父をモデルにした小説。 物語の舞台の九州弁を交えながら、戦前・戦中の九州の小さな島での出来事がつぶさに描写されている。 著者は戦後生まれであり、また九州にも長くは住んでいなかった(と思う)ので、情報収集、時代考証がハンパないと感じた。 本当によくここまで徹底してできたなぁ。と感心する。個人的には、戦前・戦中の日本の生活とはどういう生活だったのか・・・今まで知る機会がなかったので、色々と衝撃を受けるところもあった。 また、物語の中では生と死について考えさせられる場面が多々あった。 今ではそんなこと考えなくたって、普通に生活していけるのに、ほんの2世代前くらいまではサバイバルな生活を強いられていた事実を改めて感じた。結局最後に主人公は島中の墓の骨を集めて、寺に白仏を造ろうとする。 埋葬されたお墓を掘り返して・・・しかもその骨を材料にして白仏を作るなんて、何て罰あたりな!と感じる住民がほとんどだったが、次第に主人公の熱意に押されてこの一大プロジェクトは成功したようだった。(物語では完成するとこまでいかないんだけど) 今の世の中でも相当突飛と思われる発想。これは物語中のことだけだと思っていたけど、これは実話に即した話らしく、福岡県大川市大野島の勝楽寺というお寺に実際に白仏があるとのこと。 これは・・・一度見に行くしかないでしょう!!!生と死について考えることもほとんどないうえ、死後のことについては考えも及ばなかったが、死んだあとに残された家族、供養する人たち、される人たち・・・色々と考えさせられた。 自分が死んだあとは、供養してくれる人はいるのかな?とか。 子供は供養してくれたとしても、孫はしてくれるのかな?墓石なんてそのうちちびてきて、誰のお墓かわからなくなってしまうだろうな。それどころか、お墓だったってことも分からなくなるんだろうな。とか。 そう考えるとちょっと淋しい、ちょっと不安な気持ちになりました。辻仁成氏は作家としても素晴らしいですが、その他の分野でも活躍するマルチな才能の持ち主です。 祖父ゆずりの血がそうさせるのかもしれない、と思いました。
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