誘拐 の商品レビュー
「誘拐」G・ガルシア=マルケス著・旦敬介訳、角川春樹事務所、1997.12.08 p356 ¥2,940 C0097 (2024.10.20読了)(1998.01.09購入) ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』が文庫になり、なんとベストセラーになって話題になっていま...
「誘拐」G・ガルシア=マルケス著・旦敬介訳、角川春樹事務所、1997.12.08 p356 ¥2,940 C0097 (2024.10.20読了)(1998.01.09購入) ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』が文庫になり、なんとベストセラーになって話題になっています。『百年の孤独』は、既読なので、積読中のこの本をこの機会に読んでしまうことにしました。 【目次】(なし) 謝辞 誘拐 1~11 エピローグ 訳者あとがき ☆関連図書(既読) 「百年の狐独」G・ガルシア=マルケス著・鼓直訳、新潮社、1972.05.10 「ママ・グランデの葬儀」G・ガルシア=マルケス著・桑名一博訳、国書刊行会、1979.04.30 「短編集 落葉」G・ガルシア=マルケス著・高見英一訳、新潮社、1980.01.25 「悪い時」G・ガルシア=マルケス著・高見英一訳、新潮社、1982.09.15 「ママ・グランデの葬儀」G・ガルシア=マルケス著・桑名一博訳、集英社文庫、1982.12.10 「ある遭難者の物語」G・ガルシア=マルケス著・堀内研二訳、風の薔薇、1982.12.15 「予告された殺人の記録」G・ガルシア=マルケス著・野谷文昭訳、新潮社、1983.04.05 「族長の秋」G・ガルシア=マルケス著・鼓直訳、集英社、1983.06.08 「エレンディラ」G・ガルシア=マルケス著・鼓直訳、サンリオ文庫、1983.10.30 「戒厳令下チリ潜入記」G・ガルシア=マルケス著・後藤政子訳、岩波新書、1986.12.19 「青い犬の目」G・ガルシア=マルケス著・井上義一訳、福武書店、1990.10.25 「幸福な無名時代」G・ガルシア=マルケス著・旦敬介訳、筑摩書房、1991.01.20 「ジャーナリズム作品集」G・ガルシア=マルケス著・鼓直・柳沼孝一郎訳、現代企画室、1991.04.30 「迷宮の将軍」G・ガルシア=マルケス著・木村栄一訳、新潮社、1991.08.25 「十二の遍歴の物語」G・ガルシア=マルケス著・旦敬介訳、新潮社、1994.12.10 「愛その他の悪霊について」G・ガルシア=マルケス著・旦敬介訳、新潮社、1996.05.30 「百年の孤独を歩く」田村さと子著、河出書房新社、2011.04.30 (「BOOK」データベースより) 政府・マスコミの要人を狙った連続誘拐事件を繋ぐ一本の糸とは?ノーベル賞作家の著者が、綿密な取材をもとに現代コロンビア社会の暗部を鋭くえぐる。
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1990年から91年にかけてコロンビア国内で多数のジャーナリストや政治家の家族がコカインの密売組織メデジンカルテルによって誘拐された事件を題材としたノンフィクション。
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しばらく柔らかいものばかり読んでいたので、久しぶりに骨のあるものが読みたくなったのと、更に、昨年のノーベル平和賞がらみのニュースのあれこれがよく理解できなかったので何かコロンビア情勢を知るとっかかりになる読み物がほしいなぁと思った、という2つの理由からこの本を手にとりました。 ...
しばらく柔らかいものばかり読んでいたので、久しぶりに骨のあるものが読みたくなったのと、更に、昨年のノーベル平和賞がらみのニュースのあれこれがよく理解できなかったので何かコロンビア情勢を知るとっかかりになる読み物がほしいなぁと思った、という2つの理由からこの本を手にとりました。 コロンビアについては、一時熱心に見ていたテレノベラと呼ばれる情熱的なドラマしか思い浮かばないくらい何も知りません。正直、地図上の位置もあやふや。よその国とごっちゃになっていて、「内戦でものすごい数の民間人が殺されて埋められていて、今も身元確認作業が続いている国じゃなかった? あ、それはベネズエラ?」みたいなレベルです。 結果から言えば、読む前とあまりそのへんの無知は変わっていません。そもそもこの本は、平和賞とからんでいるFARCについて書かれているわけでもありませんし。 しかし、そんな無知な私をも、似たような名前のオンパレードなのに混乱することなく最後まで読ませてしまい、当時のコロンビアの状況や、大統領を始めとした政治家たちが何に苦悩し、何を目指そうとしていたのか、世論はどうだったのか、ということが、それなりに理解できた、というのはすごい筆力だな、と思います。 こんなにたくさんの登場人物、出来事、素材を扱ってまとめあげたこの作家の体力にまず驚かされます。 ただ、この作品そのものの評価としては、物語のどこに、あるいは誰にフォーカスしていいのか私には最後まで分からず、読んでいて最初から最後まで感情的に混乱したままだった、というのが正直な感想です。 明確に主人公と呼べる人間がいないせいか、何が正しいのか何一つ分からず(私にはむしろ何もかもが間違っているように見えた)、結局ただ起こっている事象を追いかけるだけで、その意味については理解できないまま物語が終わってしまいました。 私としては、ガビリア大統領に一番共感し、最も心ひかれたのですが、ガビリア大統領目線で読むのはなかなか難しい話なので、余計に混乱したのかもしれません。 ところで、話の本筋とは関係のない部分で、非常に興味深かったことがいくつかありました。 まず、教育のレベルと子供の頃の生活環境の違いが、対人関係を築く能力に驚くくらい明確に現れるんだということ。見張り番たちの描写を読みながら、改めて、教育と環境の大切さを、彼らへの同情という小さな痛みとともに思い知らされました。 もうひとつ印象的だったのは、占い師の存在です。 ほんの一瞬しか出てこないのですが、鮮烈な印象を残しています。 人の自由意思っていうのは、どこまで許されていて、運命というのはどこまで決まっているものなのだろう、と常々疑問に思っていたので、『このころ、事態が実は収束に向かう直前にあることを確信していた人間は、占星術師マウリシオ・プエルタただひとりだったのではないだろうか』という文章にはビックリしました。 星占いなどに振り回されたくないと思っている人間ですが、こんなエピソードを読んでしまうと、どういうロジックの学問なのか一度は学んでみたい、と好奇心が刺激されます。 更に、パチョ・サントスって、平和賞のサントス大統領か?と無知すぎるために一瞬思いましたが、本人ではなく、いとこだかなんだかみたいで、彼自身は後に副大統領を務めた、と読み終ってから知りました。 彼の人質時の待遇と生還は偶然と幸運が重なっているように思え、私には「天に生かされた人」という風に見えました。なので、彼がその後、副大統領としてどんなことをしたのか気になりました。 最後に、訳者のあとがきが素晴らしかったです。ここを読んで初めて「ああなるほど、そういうことだったのか」とやっと理解できたこともいくつかありました。 サブテキストとして必読と言ってもいいかも。 文庫化にあたって、タイトルを原題のとおりに直されたようですが、原題はともかく、日本語タイトルとしては「誘拐」で悪くないし、そちらの方がむしろ内容にふさわしいような気がするのに、なぜ変えたのかしらと素朴に疑問に思いました。
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百年の孤独を飲んでみようじゃなくて読んでみようと思ったが高い。変わりに古本屋で見つけたのがこの本で90年から91年にかけてメデジンカルテルを作った麻薬王パブロ・エスコバルが自らの投降の条件として国外(特にアメリカ)への引き渡しをさせないための条件逃走として多数のジャーナリストを誘...
百年の孤独を飲んでみようじゃなくて読んでみようと思ったが高い。変わりに古本屋で見つけたのがこの本で90年から91年にかけてメデジンカルテルを作った麻薬王パブロ・エスコバルが自らの投降の条件として国外(特にアメリカ)への引き渡しをさせないための条件逃走として多数のジャーナリストを誘拐した話が元になっている。 誘拐されたマルーハ・パチョンと人質解放の交渉に当たったアルベルト・ビヤミサル夫妻が93年にガルシア=マルケスに書籍化を持ちかけた。当時のコロンビアは殺人件数が世界最悪、誘拐も世界の2/3がコロンビアで起こっていた。 主に人質と政府関係者の視点で話は進むのだがパブロ・エスコバルが悪く書かれていないのは誘拐され警察が踏み込んだ際に死亡したジャーナリストが元大統領の娘だったり、新聞社のオーナーの息子が編集長だったりとジャーナリストを権力構造の一部と見ているからかもしれない。 パブロ・エスコバルは当時世界有数の大富豪になっておりサッカーのアトレチコ・ナシオナルのオーナーでもあった。この本の最後で投降するが貸し切りの刑務所はホテル・エスコバルと呼ばれ自由で豪華な生活を続けていたが、所内での殺人のため他の刑務所に移送される際に逃走というか普通に歩いて逃げ、93年に発見され射殺されている。アトレチコ所属の同名のコロンビア代表アンドレス・エスコバルがWCアメリカ戦のオウンゴールが元でメデジンで射殺されたエスコバルの悲劇が起こったのが翌94年。この本を読むと当時のコロンビアの状況がよくわかる。 投降の交渉においてある神父が活躍するのだが犯罪者も神父には敬意を払い祝福を受けようとするあたり不思議な感じがする。また誘拐された人質と犯人側の下っ端の見張りの間で人間的な交流が見られるのもストックホルム症候群と言う感じではなく、誘拐された側が下っ端を更正するのに協力しようとしている。
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1990年、コロンビア都市で実際に起こった10件の誘拐事件を追った物語。誘拐されたのはいずれもジャーナリストや政府関係者。要求されているのは麻薬犯罪人らの外国引渡し協定の停止だった。 誘拐という極限の状態に置かれた被害者は、可哀想などと軽々しく言ってしまうのも申し訳なくなるほど...
1990年、コロンビア都市で実際に起こった10件の誘拐事件を追った物語。誘拐されたのはいずれもジャーナリストや政府関係者。要求されているのは麻薬犯罪人らの外国引渡し協定の停止だった。 誘拐という極限の状態に置かれた被害者は、可哀想などと軽々しく言ってしまうのも申し訳なくなるほど悲惨。政治の駒として命を奪われる人間がいるという事実に憤りを感じるし、犯人らの残虐さを疑う。しかし、物語の複雑さがあらわしているように、もう一人の命は「警察と犯人との銃撃戦」の最中に殺され、犯人はどちら側なのか不明である。犯罪人らを追い詰めるという大義のもとに振りかざされる公的な暴力の存在は見逃すべきではない。また被害者の見張り番を命じられた組織の下っ端たちの多くも「いつ死ぬか」という恐怖を抱えている。軽々しく組織に身を投じた者もいれば行き場のない放浪の末だった者もあり、その暴力的な振る舞いや社会への罵りに、矛盾しているようにもうつるがたまに見せる被害者への情にも、彼らをそこへ連れてきたのは果たして何だったのかを考えずにいられない。もう一つ訳者あとがきで付け加えられていることだが、誘拐された10人のほとんどが特権階級で、血の繋がりもあり、誘拐犯へのアクセスを許された存在であったことを、ガルシア・マルケスは全体を通して示唆している。これも重要な視点である。現在も続く多くの誘拐ビジネスでは身代金も払えず交渉もできない一般市民が巻き添えにされている現状を鑑みても、この物語自体は特異な「事件」であったことを感じられるだろう。 それにしてもコロンビア荒れてるなあ。これはあとがきでも指摘されてたんだけど、エスコバルのカリスマ性やオチョア家の族長の書き方なんかは、まるでガルシア・マルケスの物語に出てくる神秘の世界の人みたい。ほんとに映画ばりに権力と交渉と政治の世界なんだなあ。でも、引渡し協定についてはまだよくわからんから勉強しなきゃばあ。ていうか麻薬マフィアってちょう怖い。マフィアってちょう怖い。乱暴はやだよう。
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さすが元新聞記者・・・ノンフィクション作品。 「百年の孤独」みたくおばあちゃんの語り口をヒントに書いた話とは全く違う作風。 貧困→麻薬組織→降伏する条件をつり上げるための著名人の誘拐、犯罪。 コロンビアの現実ってこんななんだ・・・って平和ボケしている頭で必死で考えてでもやっ...
さすが元新聞記者・・・ノンフィクション作品。 「百年の孤独」みたくおばあちゃんの語り口をヒントに書いた話とは全く違う作風。 貧困→麻薬組織→降伏する条件をつり上げるための著名人の誘拐、犯罪。 コロンビアの現実ってこんななんだ・・・って平和ボケしている頭で必死で考えてでもやっぱり話のなかの緊迫した状況をなかなか理解できないでいた。こんな現実があるなんて。 誘拐されて何か月も監禁されている人の心理に同調しちゃって解放されたとき心から良かった、と思った。 こんな無生産で悲しいことは早くなくなればいいのに。 こういうノンフィクション読むの苦手で大変だったけど新しく知りたいことが増えたので良かった。
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