中島敦全集(2) の商品レビュー
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『西遊記』関連で、「悟浄出世」「悟浄歎異」を読んだ(『荘子』『列子』などのの引用がいっぱいある)。けっこう実存主義だなと思った。それから「盈虚」「牛人」は春秋時代もので、どす黒い人間が書かれている。『山月記』などもそうだが、中島敦は案外「怖い」作家なのかもしれないと思った。
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悟浄出世 悟浄が教えをこう妖怪たちの思想の下敷きが分かればより面白いのだろうが、生憎、教養~…… 「我」に疑問を抱き、それを知るため多くの妖怪のもとを訪ね歩くも、それが「執念深く自己の幸福を探していた」ことに気付き、失敗を恐れず試みようという想いに至る、これだけでも爽やかな気持ちになれる。 悟浄嘆異 悟浄が悟空を中心に三蔵一行を誉めちぎる。 面映ゆい…… 出世に対して一人称なのもあるかもしれないがだいぶ読みやすい。 日記 パラオ滞在中の日記。 現地で購入した石鹸で体を洗ったら魚臭くなって難儀した、というようなことも書かれていて面白い。 手紙 ・昭和11年、関西では男の日傘が流行っていた(敦的にはかっこ悪い)。 ・宿の朝は番茶と梅干しの時代、長崎ではコーヒーとゆで卵。 ・南洋からたかさんへのお手紙、家族の夕食の席でその日の出来事を話して聞かせるようであったかいな。
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「南島譚」や「環礁」の平易でユーモアーに富んだ文章は、それまでの中島敦の印象を大きく変えてくれた。南洋の風物や人々の暮らしに触れた中島の驚きや好奇心が素直な筆致から伝わってくる。日記や書簡についても中島の意識の方向が感じられて興味深い。 「わが西遊記」を読んだ後は、万城目学の「...
「南島譚」や「環礁」の平易でユーモアーに富んだ文章は、それまでの中島敦の印象を大きく変えてくれた。南洋の風物や人々の暮らしに触れた中島の驚きや好奇心が素直な筆致から伝わってくる。日記や書簡についても中島の意識の方向が感じられて興味深い。 「わが西遊記」を読んだ後は、万城目学の「悟浄出立」も読むことをお薦めする。
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2012 1/13「盈虚」のみ読了。青空文庫で読んだ。 青空文庫のデータをガラケーで表示しつつ読了。 衛国の太子の興隆を描く話。 ラストの戎人の台詞が決まっている。
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「南島譚」「環礁」 南洋の空と海の碧が・長閑と倦怠の異郷情緒が・憧憬を誘う。エキゾティシズム。 「わが西遊記」 近代的な自己意識の苦悶――無限の反省作用・対象化作用――に陥った悟浄の精神的遍歴。悟空の如き自己意識の超越或いは無化がこの苦悩を解く道であることが示唆されている...
「南島譚」「環礁」 南洋の空と海の碧が・長閑と倦怠の異郷情緒が・憧憬を誘う。エキゾティシズム。 「わが西遊記」 近代的な自己意識の苦悶――無限の反省作用・対象化作用――に陥った悟浄の精神的遍歴。悟空の如き自己意識の超越或いは無化がこの苦悩を解く道であることが示唆されているが、しかし自己意識の自己意識たる所以はその原理的な超越不可能性にあると思う。それを捨てることは決してできないのだ。それにしても、やはり中島敦は、近代の苦悩を描いた近代の作家である。 「過去帳」 自己と世界との間に懸隔を感じざるを得ない虚無感・無常観に苛まれる形而上学的苦悩の形式を、僕も共有する。世俗に馴染めぬ自己に苦しむ一方で、俗人とは交わらぬという自尊心――しかしその実、世俗へ降り立つことで自己の超越性が脅かされることを極度に恐れる"臆病な自尊心"。その自己は、軽蔑する当の俗世の喝采を密かに求めてはいるのではないか。世俗に対する冷笑は、その喝采を獲得する為の実人生上の能力を欠いた自己が何とか維持しようとする自尊心の、裏返された顕れではないか。世俗を求めながら世俗を得られぬ者の、随分と分かり易く屈折した俗物性ではないか。超俗を偽装するのは常に俗物そのものではなかったか。自意識の形而上学的懊悩に自己を摩滅し、その徹底性ゆえに自己否定を止め得なかった中島の無限の苦しみ。
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西遊記からのスピンオフ「悟浄出世」と「悟浄歎異」。悟浄はもちろん悟空や八戒、三蔵の人物像が西遊記の世界にやけにリアリティを与えてくれます。
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中島敦は漢文調の文体がな……と敬遠してしまっている人にオススメ。読み易い短篇ばかりなので、中島敦のエッセンスを知るのにかなり入り易いかと。「自意識」について日々考えている人にとっては、特に興味深いテーマとなっているかもしれません。
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