幻想展覧会(1) の商品レビュー
過去のゴシック作家は、人間の魂の荒涼とした面を浮かびあがらせようとして芸術的ビジョンを創造したが、その精神は今も生き続けている。ゴシック精神の後継者達、ニュー・ゴシックのアンソロジー。パトリック・マグラアとブラッドフォード・モローによる編。 特に心に残った2篇だけ感想を。 「展...
過去のゴシック作家は、人間の魂の荒涼とした面を浮かびあがらせようとして芸術的ビジョンを創造したが、その精神は今も生き続けている。ゴシック精神の後継者達、ニュー・ゴシックのアンソロジー。パトリック・マグラアとブラッドフォード・モローによる編。 特に心に残った2篇だけ感想を。 「展覧会のカタログ」スティーブン・ミルハウザー 展覧会のカタログの体裁を取り、ある芸術家とその妹、そして友人兄妹の物語が展開される。わたしが彼の作品を好むのは、精密で精巧な虚構を美しく描くから。この幻想はある種の薄気味悪さと愛おしさを抱えていて、まるで麻薬のように一度知ったら手放せない。 「ニュートン」ジャネット・ウィンターソン ウィンターソンにものすごく興味がわいた。すっごく面白かった。行き過ぎた役割演技と、アイロニーと、不気味さがありえないくらい上手く描かれている。大好き。 風間賢二が解説で、<断片>と<非終結性>を特徴としたゴシック・ロマンスを、ポストモダンと結びつけていたことが印象的。意味の相対化をはかり、読者の認識を惑乱させることを目的とする。ゴシック・ロマンにおける幻想や背徳を、「差異の消滅」としていて、とても興味深かった。
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