岡本かの子 の商品レビュー
仏教的で耽美的、豪華…
仏教的で耽美的、豪華絢爛な世界観は流石です。
文庫OFF
金魚繚乱を読んだ。恐るべし岡本かの子の心理描写。 金魚の養殖を通して主人公の人間性を徹底的に描写する。叶わない恋の対象を神格化し、その代替となる新品種の作出に狂っていく主人公。爽やかな交際への嫌悪ともちろんその裏にある羨望。「俺にはあんな中途半端な交際はできない。するなら征服か...
金魚繚乱を読んだ。恐るべし岡本かの子の心理描写。 金魚の養殖を通して主人公の人間性を徹底的に描写する。叶わない恋の対象を神格化し、その代替となる新品種の作出に狂っていく主人公。爽やかな交際への嫌悪ともちろんその裏にある羨望。「俺にはあんな中途半端な交際はできない。するなら征服か被征服だ」なんて思うくせに、田舎娘に好かれてもきちんと向き合えもしない。かと思えば数回であろう交わりを自慢してプライドを保っている。廃人同様になるまでに心血を注いだ品種交配も成功しないが、最後には偶然生まれたであろう一匹に、理想を超えた美を見いだす。 最後に見た一匹は、夢か現実かも定かではないだろう。彼の心の中では、そうだったということだ。 女神のような恋の対象も、あくまで彼の中でそうであるだけだ。ほとんど徹底的に主人公からの視点で書かれているため彼女が実際どんな人間なのかは見えづらい。しかし終盤に一瞬だけある彼女とその友人との会話シーンからは、彼女もきっと相応にずる賢く、また俗な面もあると伺い知れる。人間なのだから良い面と悪い面とがあって当然だが主人公がそれを知ることは無い。 根暗で夢見がちで頑固で凝り性な主人公は、ついに本質を掴めない。全て自分の中で解釈し、妄想し、完結させてしまうからだ。狙いに狙った品種改良も外れ、幼なじみの人間性も知らないままだ。 きっと奇跡も幸せも自分の中ではなく外にあるものだ。根暗で夢見がちで頑固で凝り性な私、書を捨てよ。外に出よう!
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鯉魚 / 渾沌未分 / 金魚撩乱 / みちのく / 鮨 / 家霊 / 老妓抄 / 河明り / 雛妓 / 短歌〈かろきねたみより 愛のなやみより 浴身より わが最終歌集より〉 / 太郎への手紙より
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この全集はセレクションがいい。「魚」の連作(『金魚繚乱』『鮨』)に「舞妓」物を対にするとこも憎いし(『老妓抄』と『雛妓』)、おまけで太郎への手紙を入れてるのも嬉しい。 林芙美子なんかと比べると、岡本かの子は徹底して芸術至上主義である。瀬戸内寂聴が「芸術家は、芸術家は」とやたら言...
この全集はセレクションがいい。「魚」の連作(『金魚繚乱』『鮨』)に「舞妓」物を対にするとこも憎いし(『老妓抄』と『雛妓』)、おまけで太郎への手紙を入れてるのも嬉しい。 林芙美子なんかと比べると、岡本かの子は徹底して芸術至上主義である。瀬戸内寂聴が「芸術家は、芸術家は」とやたら言うのは、岡本家の「家霊」に曲りなりにも祟られたからだろう。ところで『河明り』というのは、代表作として有名らしいが、よくわからない小説だ。小説を腹案中の小説家を主人公にしたり、物語の途中で作者が介入してきたり、モダニズム小説みたいなことをやろうとしたのか。太郎への手紙のなかに「アンドレ・ジイド」のことがやたら出てくるのも気になる。『贋金づくり』の向こうを張ったか。
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どの作品も秀逸。「鮨」「家霊」「老妓抄」「河明り」「雛妓」全体的に昭和初期の香りがたっぷり漂っているのに加え、今は使われていない古い語句の美しさも十分堪能できた。
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自伝的な小説が、やたらと情熱的っていうか猪突猛進でおもしろかった。短編の「鮨」は昔中学の試験問題で出たことがありました。お母さんが息子のために鮨を握る場面がいいです。
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