嵯峨野明月記 の商品レビュー
信長・光秀・秀吉・家康への権力の移行期に本阿弥光悦、俵屋宗達、角倉素庵という美を追求した3人の文化人の心の内面が語られる。そのゆえに現代に生きる芸術家のような親近性を感じるのが不思議。3人は別々の語りをしながら、彼らの書・絵・そして装丁の才能が美しい本の実現に結びついていくお洒落...
信長・光秀・秀吉・家康への権力の移行期に本阿弥光悦、俵屋宗達、角倉素庵という美を追求した3人の文化人の心の内面が語られる。そのゆえに現代に生きる芸術家のような親近性を感じるのが不思議。3人は別々の語りをしながら、彼らの書・絵・そして装丁の才能が美しい本の実現に結びついていくお洒落な作品である。京の人々の権力に対する恐れが噂を通してリアリティに富む。光悦が月の明るさに誘われて池の畔で出会った土岐民部の妻、そして光悦自身の妻が魅力的。彼女たちの描写に日本語の美しさを堪能する。
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10年くらい前に一度トライして読了できず、そのまま忘れていたのに 10年後また偶然にも手に取っていた不思議な本。 すっごい面白いんだけどすっごい時間かかる。 本を開くとすぐに言葉のひとつひとつに引き込まれるのに 盛り込まれてる歴史的事件・ひとりひとりの気持ちが重くてなのか 4ページぐらいずつしか集中力が続かなかった。 一の声・本阿弥光悦が人の世の興廃にたとえる加賀の海の波のうねりは ちょうどボストン博物館展で見た尾形光琳作『松島図屏風』を思い浮かべながら読んだ。(時代違うけど) また積読したい。
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同じ時代を生きた3人が、それぞれに感じる苦悩や喜びを、互いに重なりあるいは離れた場所、時間で語る形式ですが、私には「沁みる」という表現しかできません。芸術や技能、事業といったそれぞれの分野において、高いレベルにあるとは言えない自分が登場人物の内面まで理解できるのかといえば、分かり...
同じ時代を生きた3人が、それぞれに感じる苦悩や喜びを、互いに重なりあるいは離れた場所、時間で語る形式ですが、私には「沁みる」という表現しかできません。芸術や技能、事業といったそれぞれの分野において、高いレベルにあるとは言えない自分が登場人物の内面まで理解できるのかといえば、分かりえないのかもしれませんが。 辻邦生の作品は、大げさな技巧などは使わないのに、繰り返して読みたくなる魅力があると思います。
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俵屋宗達、角倉、本阿弥光悦の3人の語りが織り成す群像劇。戦国から江戸政権の成立までの激動の時代を生きた3人がそれぞれの立場でそれぞれを語り、時には重なり合い、同じことを別の視点から語る。同じ出来事を別々の視点で語る藪の中とは違い、人生の一部においてそれぞれが共に過ごした時があり、...
俵屋宗達、角倉、本阿弥光悦の3人の語りが織り成す群像劇。戦国から江戸政権の成立までの激動の時代を生きた3人がそれぞれの立場でそれぞれを語り、時には重なり合い、同じことを別の視点から語る。同じ出来事を別々の視点で語る藪の中とは違い、人生の一部においてそれぞれが共に過ごした時があり、その人生の一部として語られる。 辻邦夫は何度再読しても味わいが深い。
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