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重力が衰えるとき の商品レビュー

3.8

16件のお客様レビュー

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2024/08/06

猥雑な歓楽街を舞台にしたハードボイルドなイスラミック・サイバーパンク。アラブの常套句や言い回し、ラマダンなどのイスラム要素が織り込まれた中東味溢れる世界観に、サイバーパンクガジェットが見事に融合する様が秀逸。面白すぎて読むのが止まらず、久々の一気読みでした! 主人公マリードはフ...

猥雑な歓楽街を舞台にしたハードボイルドなイスラミック・サイバーパンク。アラブの常套句や言い回し、ラマダンなどのイスラム要素が織り込まれた中東味溢れる世界観に、サイバーパンクガジェットが見事に融合する様が秀逸。面白すぎて読むのが止まらず、久々の一気読みでした! 主人公マリードはフリーで探偵業を営むアラブ人青年で、行きつけの店を転々とハシゴする典型的な夜の街の住人。格好付けようにもどうにも上手くいかないコミカルなヌケ具合と、意外に良い奴で友達想いなのが好感度大。恋人はMTFトランスの美女(プレイボーイでどうやら男も純女もいけるらしい)、そして性懲りもないジャンキー。キャラ設定的にこのアンチヒーローっぷりは、DCコミックのオカルト探偵ジョン・コンスタンティンを彷彿とさせます(ちなみに話ズレますが、キアヌ・リーヴス主演の映画化作品『コンスタンティン』の続編がやっと完成したらしい。日本では2025年上映予定とのこと。待ち遠しい)。周囲の友人たちは民族、人種、ジェンダー、セクシュアリティ入り乱れる多様性の境地で、若干自分の交友関係と似通った絵面とやりとりに既視感…和みますけど、作者は確実にこっち側の住人ですねw 依頼人を筆頭に次々と人が殺され凄惨極まる猟奇殺人の趣を呈してくる中、街を牛耳るギャングのボスの思惑にハメられ電脳化手術を受ける羽目になり、殺人兵器にされてしまうマリード。 ソフトから別人格をインストールしたり、体の感覚を遮断することが出来るようになったものの、せっかく苦悶と苦痛の末に手に入れた機能をあまり活用できていないという、煮え切らない展開がもどかしい。後半は予想に反して肉体派なハードボイルド・クライムサスペンスであっという間に大団円を迎え、割とあっさり目の肉弾戦で呆気なく終焉。 今作でイマイチ本領発揮した感のない電脳化、もしかすると続編の『太陽の炎』では機能を駆使して活躍してくれるんじゃないかと期待が高まります。 キャラ立ちしまくりの雑多な登場人物たちとの絡みや、アラブの礼儀作法とコーランの文言が飛び交うエキゾチックな世界観が他に類のない圧倒的な魅力を放っている本作は、マリード・シリーズ第一作目。ここから『太陽の炎』『電脳砂漠』『Budayeen Nights(未邦訳/短編集)』の3冊へと続いていきます。まだまだしばらくはこの世界に浸れそうで楽しみ。インシャラー。

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2023/06/12

めちゃくちゃ面白かった、サイバーパンク、ハードボイルド、ドラッグ、性転換、イスラム文化、、、などなど。最高の混沌。

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2022/09/19

SF。ミステリ。電脳×ハードボイルド。 近未来・イスラム文化・SF・探偵という組み合わせが素晴らしい。 SF的に、珍しいアイディアというわけではないが、作品全体の雰囲気は、完全に初めて感じた世界観。 自分の知らない世界に触れる、という点が、個人的にSF小説に一番求めるポイントなの...

SF。ミステリ。電脳×ハードボイルド。 近未来・イスラム文化・SF・探偵という組み合わせが素晴らしい。 SF的に、珍しいアイディアというわけではないが、作品全体の雰囲気は、完全に初めて感じた世界観。 自分の知らない世界に触れる、という点が、個人的にSF小説に一番求めるポイントなので、この作品はまさに理想的な作品。 最初から最後まで夢中で読んだ。 傑作だと思う。

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2017/03/23

題名やカバー絵を見て、宇宙を舞台にしたSFだと勘違いしていた。この作品のジャンルははミステリーだ。脳に直接作用するデバイスなど、SF的なガジェットがたくさん登場するからSF作品として成り立っているが、根底に流れるストーリーはミステリーであり、ハードボイルドである。決して本作をけな...

題名やカバー絵を見て、宇宙を舞台にしたSFだと勘違いしていた。この作品のジャンルははミステリーだ。脳に直接作用するデバイスなど、SF的なガジェットがたくさん登場するからSF作品として成り立っているが、根底に流れるストーリーはミステリーであり、ハードボイルドである。決して本作をけなしているのではない。誉めている。また、SF的なガジェットだけでなく、イスラーム圏を舞台にした物語は、私のような無宗教の人間には非日常的な舞台だ。私は非日常を楽しむことがSF作品の楽しみ方の一つだと思っている。本作で、残酷な殺人事件やイスラムの風習などが多く描かれることで、自分の日常では経験できないことを読ませてくれた。 翻訳も読みやすかったし、後半のスリリングな展開には、ミステリーファンも楽しめるのではないだろうか。一点、不満があるとすれば、物語の展開が少し古く感じるところだ。コテコテのSFファンは既視感を感じるかもしれない。ミステリーファンにとっては、事件の解決法など、少し卑怯な展開に思うかもしれない。普通のミステリでは登場しないSFガジェットがあるから仕方ないのだけれど。

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2017/03/17

サイバーパンクと一人称ハードボイルドは相性がいいが、 そこにイスラムをまぜるとエキゾチックな味になる イスラムの風習は千夜一夜を彷彿とさせるが登場人物はあれよりすれている

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2016/07/07

イスラム世界を舞台に描く電脳ハードボイルドSF(解説) 表紙   7点ひろき 真冬 展開   6点1987年著作 文章   6点 内容 600点 合計 619点

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2015/11/14

ジョージ・アレック・エフィンジャー『重力が衰えるとき』(早川書房、1989) SFの道具立てに満ちた近未来サスペンス スマホのようなものを持ち歩き、外科手術で脳にソケット差込口を設置した人々は人格もスキルも自由に入れ替えができ、舞台となるスラムであっても非合法人格モジュールは簡...

ジョージ・アレック・エフィンジャー『重力が衰えるとき』(早川書房、1989) SFの道具立てに満ちた近未来サスペンス スマホのようなものを持ち歩き、外科手術で脳にソケット差込口を設置した人々は人格もスキルも自由に入れ替えができ、舞台となるスラムであっても非合法人格モジュールは簡単に手に入る。 アラブの犯罪都市ブーダイーン、分裂したアメリカ、ロシア。 「一匹狼」を自称する主人公マリードはロシア人富豪から人探しの依頼を受けるが、交渉の席上で依頼者は殺されてしまい、、 真相に迫ろうともがくうち、マリードは町の有力者「パパ」のために働くはめに。 イスラム文化の描写、マリードの破戒スタイルが興味深く読ませます。 【本文より】 ◯「わるいがね、わたしはアルコールを摂らない」 「ご心配なく」おれはキリガに向き直った。「この人にもおなじものを」自分のグラスをさしあげた。 「しかし ー」ボガティレフが抗議しかける。 「だいじょうぶ、おごりですよ。おれが金を払う。当然だ ー おれが飲むんだから」 ◯ヤースミーンは、外から中まで、肉体も精神もすっかり修正されている。彼女の肉体は、例の完璧なカタログ注文の製品だ。クリニックの係員に相談にいくと、むこうがカタログを見せる。こっちが、「このおっぱいは?」ときくと、むこうが値段をいい、「このウエストは?」と聞くと、骨盤を割ってはめなおす費用の概算を答えてくれる。 ◯このブーダイーンでは ー いや、おそらく全世界どこへいってもそうだろうが ー 人間は二種類しかいない。ぺてん師とカモだ。だますか、だまされるかだ。上品ぶってニコニコ笑い、わたしはサイドラインで見物します、というわけにはいかない。 ◯クスリはきみの友人だ。敬意をもって扱え。きみは自分の友人を屑かごに捨てたりするか。トイレへ流したりするか。友人やクスリをそんなふうに扱うやつは、どちらも持つ資格がない。

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2015/05/23

ハードボイルド×サイバーパンク!な本書は、舞台がイスラム社会となかなか奇抜な作品です(SFに限らずイスラム社会が舞台の作品を読んだのは初めてかも)。 ハードボイルドという割りに、主人公はそんなに強靭ではなく、最終的に権力に屈してしまったりします。さらに、サイバーパンクとしてもそこ...

ハードボイルド×サイバーパンク!な本書は、舞台がイスラム社会となかなか奇抜な作品です(SFに限らずイスラム社会が舞台の作品を読んだのは初めてかも)。 ハードボイルドという割りに、主人公はそんなに強靭ではなく、最終的に権力に屈してしまったりします。さらに、サイバーパンクとしてもそこまで複雑ではなく、ときに深みがない印象を受けたりします。 だから面白くないのかと問われれば、決してそうではなく、荒々しくて泥臭い主人公は、(個人的には)ハードボイルドの一翼を担うと思うし、わかりやすい電脳社会はサイバーパンクの入門作品として十分かと思います。なによりイスラム社会独特の文化やしきたりは、サイバーパンクのエキセントリックな性質と相まり、新鮮さに溢れて、かなーり刺激的。 ただ、作中で登場する「ボンド」との決着はちょっといただけない。あんな行き当たりばったりな形ではなく、もう少し意味のある場面での決着として欲しかった。個人的には。

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2015/04/30

ここで紹介されている書影に驚きました。 自分が読んだのは、ひろき真冬さんのイラストでしたので。 サイバーパンク最盛期の傑作シリーズだと思います。

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2015/01/29

一気にファンになってしまった。散りばめられたガジェットもいいが、絞り出すような乱れた思いがハードボイルドという触れ込みとは思えないほど溢れてた。続編読みたい!

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