鏡花短篇集 の商品レビュー
「竜潭譚」「薬草取」…
「竜潭譚」「薬草取」「二、三羽―十二、三羽」「雛がたり」「七宝の柱」「若菜のうち」「栃の実」「貝の穴に河童のいる事」「国貞えがく」を収録。美麗なだけでなくユーモラスな作品もあります。
文庫OFF
一般的にはあまり知ら…
一般的にはあまり知られていない短編を収録した短編集。少年が登場し、母親的な女性が自己犠牲に斃れます。
文庫OFF
初めて鏡花の作品に触れた。難読。だけど鏡花の表現する女性、花、鳥の美しさは素晴らしかった。特に、必ず登場する女性のその妖艶なこと。 どの程度の言葉を知っていれば、一つ一つのことを丁寧に奥行きを持って表現できるのだろう。到底、凡人の頭では想像さえできない。 一度目を通しただけで...
初めて鏡花の作品に触れた。難読。だけど鏡花の表現する女性、花、鳥の美しさは素晴らしかった。特に、必ず登場する女性のその妖艶なこと。 どの程度の言葉を知っていれば、一つ一つのことを丁寧に奥行きを持って表現できるのだろう。到底、凡人の頭では想像さえできない。 一度目を通しただけでは理解しがたい表現や内容が盛り沢山なので、長編ものへの挑戦は気合いが必要だな、と思いながらも、鏡花が長編ものでどんな女性を描いているのか、気にせずにはいられない自分もいる。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
目次 ・竜潭譚 ・薬草取 ・二、三羽――十二、三羽 ・雛がたり ・七宝の柱 ・若菜のうち ・栃の実 ・貝の穴に河童のいる事 ・国貞えがく 小説と短い紀行文が収められている。 やはり鏡花といえば、この世ならざる物の気配を感じさせる小説を期待してしまうので、正直紀行文か…と思わないでもなかったけれど、意外やこれが興深く読めた。 『七宝の柱』は、毛越寺(もうつじ)から中尊寺を見てまわるのだけれど、ちょうど数年前に行ったことがあるので、当時気づけなかった事柄の描写を読むにつれ、自身の浅学を残念に思う。 ガイド付きの団体旅行ではなかったのでしょうがないのだけれど。 鏡花は何処かの寺でいやな思いをしたのか、この旅で出会うつつましやかな寺の若僧(にゃくそう)を見てこう書いている。 ”世に、緋、紫、緞子を装うて、伽藍に処すること、高家諸侯(こうけだいみょう)の如く、あるいは仏菩薩の玄関番として、衆俗(しゅぞく)を、受附で威張って追払うようなのが少なくない。 そんなのは、僧侶なんど、われらと、仏神の中を妨ぐる、姑だ、小姑だ、受附だ、三太夫だ、邪魔ものである。 衆生は、きゃつばらを追払って、仏にも、祖師にも、天女にも、直接(じか)にお目にかかって話すがいい。” 絶対何か嫌な思いしてるね。笑 『薬草取』の女が好きだな。 幼い頃に母と死に別れた鏡花は、多分にマザコン。 男の大切な女性の命を救うために手助けしてくれる女って、しかも見返りを求めないって、それは理想の母だよ。 でも、そこがいいんだなあ。 山賊が死美女を担いで逃げるっていうのは、坂口安吾を思い出してしまうけれど、昔は割とよくあることだったのでしょうか。 『貝の穴に河童のいる事』は、人間に大けがさせられた河童が地元の姫神様に復讐してくれと頼むのだけど、さすが神様は河童の気持を汲みつつ無血解決。 熟年の夫婦と姪でしょうか、3人の、今でいうところの観光客に、ついとひょうきんな舞を舞わせるのである。 人間たちはなぜそんなことをしたのかわからない。 そもそも河童を怪我させたことにも気づいていない。 自然に対して鈍いのである。 けれど動物たちや、河童までもその踊りがあまりに愉快で、隠れて一緒に踊ってしまう。 姫神に「三人を堪忍してやりや」と言われた河童は笑いながら「踊って喧嘩はなりませぬ」と言う。 帰途につく河童に姫神は鴉を見送りにつけるのである。 この辺も母性を感じるね。 『二、三羽――十二、三羽』の雀たちの様子や、『若菜のうち』の、香樹にかぶりつく幼子の姿など、小さきものへのまなざしの優しさや描写の繊細さに、なんだかホロリとしてしまった。
Posted by
ときに、雅文調の形容と、唐突にも思える句読点は、それが何を表現しているのかも判然としない箇所がいくつかあった。それも含めて、面妖な、官能的な得も言われぬ世界を醸し出している小品集である。
Posted by
男鏡太郎、性癖爆発!いやはや最初から最後まで貫き通されていてここまでくると笑えてしまった。肌が白く、黒髪で、乳房が豊かな女...それが語り手(=鏡花)を無条件に慈しみ、守り、乳を含ませ...いや乳を含ませていたのは最初の方の短編だけだったかな。中盤でおっ雀にまつわる癒し系エッセイ...
男鏡太郎、性癖爆発!いやはや最初から最後まで貫き通されていてここまでくると笑えてしまった。肌が白く、黒髪で、乳房が豊かな女...それが語り手(=鏡花)を無条件に慈しみ、守り、乳を含ませ...いや乳を含ませていたのは最初の方の短編だけだったかな。中盤でおっ雀にまつわる癒し系エッセイか?と思わせておいてからの美人の柔肌。何につけても美人の裸である。そんなモロ出しの性癖も、鏡花の手にかかれば繊細かつ流麗な文章に早変わり。どんな性癖だって本気で語れば文学になるんだ...!鏡花には本当に本来の意味における「昇華」という言葉が相応しいと感じた。
Posted by
鏡花の文章の美しさの秘密を知りたいー そう思っているうちにもストーリーは煌めいて、 気づけば終わっている。 決して手の届かない宝石のようで、ため息が出るばかり。 この遠さは近代化される以前の世界を結晶化しているためか、 この近さは自分が同じ日本の風土に育ったからか。 そんなこ...
鏡花の文章の美しさの秘密を知りたいー そう思っているうちにもストーリーは煌めいて、 気づけば終わっている。 決して手の届かない宝石のようで、ため息が出るばかり。 この遠さは近代化される以前の世界を結晶化しているためか、 この近さは自分が同じ日本の風土に育ったからか。 そんなことを思っても、やっぱり届かない。
Posted by
情の深さ強さを思う本。怪異、と、現在では一括りに呼ばれかねないものへの尊敬がよく表れている作品集。愛すべき一冊。
Posted by
泉鏡花の本はこれで3冊目。 鏡花の書く物語は妖しい魅惑に満ちていると改めて感じました。 文章そのものも美しく、うっかりしていると、その言葉の渦の中に吸い込まれてしまいそう・・・ 解説にも「鏡花の文章には魔力がひそんでいる」とありましたが、まさにその通りだなと。 個人的には妖しい...
泉鏡花の本はこれで3冊目。 鏡花の書く物語は妖しい魅惑に満ちていると改めて感じました。 文章そのものも美しく、うっかりしていると、その言葉の渦の中に吸い込まれてしまいそう・・・ 解説にも「鏡花の文章には魔力がひそんでいる」とありましたが、まさにその通りだなと。 個人的には妖しいけれども優しくもある妖異が登場する『竜潭譚』と日常を書いたエッセイ風でありながら、意外な方向に展開していく『二、三羽ー十二、三羽』が好きかな♪
Posted by
鏡花の本を読んでいると、この世とあの世の境目の「美しくも妖しい幻覚」のようなものを見ているような気がする。 幻想的なだけではない。気を許すと異世界に引きずりこまれてしまうような、そういう空恐ろしいほどの美がある。 この短編集の白眉は「雛語り」である。 きらびやかで華やか...
鏡花の本を読んでいると、この世とあの世の境目の「美しくも妖しい幻覚」のようなものを見ているような気がする。 幻想的なだけではない。気を許すと異世界に引きずりこまれてしまうような、そういう空恐ろしいほどの美がある。 この短編集の白眉は「雛語り」である。 きらびやかで華やかな雛たちが、鏡花の魔法の掌から流れ出でる。鏡花は言葉の贅をつくし、読み手を幻惑させる。 雛 夫婦雛は言うもさらなり。桜雛、柳雛、花菜の雛、桃の花雛、白と緋と、紫の色の菫雛・・・。 鏡花の文章は、桜や紅葉を混ぜた美しい錦絵や繊細優美な螺鈿細工を思わせる。 また、この短編の「貝の穴に河童のいる事」も面白い。 なんともけったいな河童が主人公である。鏡花は妖怪というか「人にあらざる」異界の住人を好んで描く。時として、生身の人間より生き生きとして魅力的である。 また、登場する姫神も物語全編を照らし尽くすかのように艶やかでコケティシュな魅力に富んでいる。 (夜叉が池、天守物語、多神教などの作品を鑑みても、美の化身としての姫神たちの存在は突出している。) 非現実という異界のベールを纏う時、登場人物たちは底知れぬ魔力を発揮する。その妖しい世界に翻弄されるのも心地の良いものである。
Posted by
- 1
- 2