次郎物語(上) の商品レビュー
この作品は小学生の頃、祖母から借りて毎日寝る前に少しずつ読み進めた思い出の大作。主人公の次郎と同じくらいの年齢だったので、感情移入が強く働いた。 特にイジメっ子と取っ組み合って共に川に転落し、それ以来一目置かれるようになるくだりには随分と勇気をもらった。 いま再読したが、忘れてい...
この作品は小学生の頃、祖母から借りて毎日寝る前に少しずつ読み進めた思い出の大作。主人公の次郎と同じくらいの年齢だったので、感情移入が強く働いた。 特にイジメっ子と取っ組み合って共に川に転落し、それ以来一目置かれるようになるくだりには随分と勇気をもらった。 いま再読したが、忘れていたディテールを鮮明に思い出し胸がいっぱいになった。 自身の少年時代にタイムスリップしたような感覚。子供のころの読書がいかに大切かを思い知らされた。
Posted by
#886「次郎物語 上」 中学生時代に読んで以来の再読。当時は全五部(未完だが)で各一冊、全五巻でした。著者の自伝的要素が含まれますので、里子に出された事情や、実母・祖母との確執、里親への愛情など、リアルに描かれてゐます。子供だからといつって、別に純粋無垢だつたりする訳ぢやない...
#886「次郎物語 上」 中学生時代に読んで以来の再読。当時は全五部(未完だが)で各一冊、全五巻でした。著者の自伝的要素が含まれますので、里子に出された事情や、実母・祖母との確執、里親への愛情など、リアルに描かれてゐます。子供だからといつって、別に純粋無垢だつたりする訳ぢやない。打算的で、厭らしい側面も遠慮なく描かれてゐます。ルナアル「にんじん」を連想しました。 次郎には常に信頼すべき精神的支柱が存在しますが、この巻では何といつても父の俊亮でせう。羅針盤とするべき大人がゐるかどうかが、その後の成長にも影響すると申せませう。 それから、死を間近にして漸く分かり合へる母子に、少しほつとする思ひでした。
Posted by
主人公、次郎の気持ちがとても丁寧に正直に描かれている。子供って、こんな風にきかん気だったり泣き虫だったり、勝手気ままだったり繊細だったり、そしてとても傷つきやすいということを思い出した。次郎が人間関係に悩みながら少しずつ成長していく様子を、見守っている気持ちになった。 久し振り...
主人公、次郎の気持ちがとても丁寧に正直に描かれている。子供って、こんな風にきかん気だったり泣き虫だったり、勝手気ままだったり繊細だったり、そしてとても傷つきやすいということを思い出した。次郎が人間関係に悩みながら少しずつ成長していく様子を、見守っている気持ちになった。 久し振りに良い読書の時間を持てた。
Posted by
人格に最も影響するものは何か? 次郎は周りから見るとひねこびた、こずるい、乱暴者に見えるかもしれない。 しかし、その内面は繊細で柔らかい。 というか、そりゃひねくれるでしょうよ!わざとやってんのか!という境遇。 次郎が本物のこずるい少年にならなくてすんだのは、何故か? 血?遺伝?...
人格に最も影響するものは何か? 次郎は周りから見るとひねこびた、こずるい、乱暴者に見えるかもしれない。 しかし、その内面は繊細で柔らかい。 というか、そりゃひねくれるでしょうよ!わざとやってんのか!という境遇。 次郎が本物のこずるい少年にならなくてすんだのは、何故か? 血?遺伝?環境? ものを考える子供かどうか、なのかなと私は思った。
Posted by
全巻を通したメモです。初めて読書に開眼した本です。小学校の国語の先生が教師になったきっかけとして紹介されたことを覚えていて、大学の卒業旅行に持参しました。貧乏旅行で電車に揺られながら泣いてしまいました。読書で泣いたのが初めてで、自分でも驚きました。論語物語の入口になりました。
Posted by
路傍の石と同時期に書かれた成長小説です。 前半はけっこう暗い感じでしたが、第一部の最後の母の会話は非常に感動的でした。 次郎の母は、教育家で厳しい面が強く、次郎は無条件の愛を提供する乳母と比較し、母に反抗することが多かった。けれど、母は病気になり次郎が居候している母の実家に...
路傍の石と同時期に書かれた成長小説です。 前半はけっこう暗い感じでしたが、第一部の最後の母の会話は非常に感動的でした。 次郎の母は、教育家で厳しい面が強く、次郎は無条件の愛を提供する乳母と比較し、母に反抗することが多かった。けれど、母は病気になり次郎が居候している母の実家に、母が療養のために一緒に住むことになる。次郎を含めた3人兄弟の次郎以外は家に戻るが、次郎は母の周りの世話をすることになる。最初は周囲への評価が気になり、一生懸命身の周りのお世話をするが、次第に彼と母の心は変わってくる。その最後、母は次郎が愛してやまない乳母を呼び、乳母に語る。 「子供って、ただかわいがってやりさえすればいいのね。」 この言葉は非常に感動的でした。切り文句では伝わらないかもしれませんが。 また、 「『世の中にはね――』 と、先生は次郎の頭から手をはずして、ゆっくり言葉をついだ。 『たくさんの幸福にめぐまれながら、たった一つの不幸のために、自分を非常に不幸な人間だと思っている人もあるし、……それかと思うと、不幸だらけの人間でありながら、自分で何かの幸福を見つけだして、勇ましく戦っていく人もある。……わかるかね。……よく考えてみるんだ。』」 人には、それぞれの人生の成長や転機があるものですが、それぞれに教訓を与えてくれるものがあると思います。一つ一つのエピソードをあげたらそれこそ、無限といえるでしょう。そういうことは、いろんな人から聞くことは多いです。でも、ひとつひとつのエピソードを単発で学ぶことではなく、小説で一人の人間の成長をおっていき、その主人公に影響を与えた教訓、年長者からの指導を自分も学んでいくことで、また違った感覚で自分の中に入る気がします。 筆者は「この本を世の親たちに読んでもらいたい」と語っています。子供はまだいませんが、いないうちに読めてよかったです。 昭和初期に書かれたものでも、時代を超えた感動を伝えるものだと思います。
Posted by
子どもの頃の心の動きを見事なくらい繊細に文章として表した作品。作品の背景上、戦後設定がないのが惜しい気もします。
Posted by
次郎物語(上)(中)(下)を通して読みました。長かったけど読み応えあり。 幼少時代から青年期までの次郎の成長物語。次郎の心情や葛藤などが丁寧に描かれている。男の子ってこんな感じなんだなぁと思ったり。 時代背景とともに状況は変化していき、第5部までが書かれていて、読み終わってもその...
次郎物語(上)(中)(下)を通して読みました。長かったけど読み応えあり。 幼少時代から青年期までの次郎の成長物語。次郎の心情や葛藤などが丁寧に描かれている。男の子ってこんな感じなんだなぁと思ったり。 時代背景とともに状況は変化していき、第5部までが書かれていて、読み終わってもその先の続きを読みたくなった。戦時中、そして戦後の時代を次郎がどう生きたのか、読めないのが残念。
Posted by
幼き日、父より「読め」と渡された『次郎物語 上・中・下』(児童版)… 面白さがさっぱりわからず、上巻の半分にすら至らずにこっそり手放した3冊だったけれども、時を経て今や50代。 父への鎮魂を込め、改めて本元の方の『次郎物語』を手に取ったらば… なんちゅう面白さ! 今や絶滅危惧種に...
幼き日、父より「読め」と渡された『次郎物語 上・中・下』(児童版)… 面白さがさっぱりわからず、上巻の半分にすら至らずにこっそり手放した3冊だったけれども、時を経て今や50代。 父への鎮魂を込め、改めて本元の方の『次郎物語』を手に取ったらば… なんちゅう面白さ! 今や絶滅危惧種になるかと危ぶまれる“男の子”を存分に味わえる上巻は、“育児書”としても絶品なり。
Posted by
2月からずっと読み続けていたけど、途中震災やら引っ越しやらがあって止まった時期があった。 けどなんとか読了。 早い段階で気が付いたけど、名作。次郎の心理が深く描写されていて、登場人物もキチンと人間性が描かれている。そしてこの物語の中には悪人が一人もいない。誰かにとって悪だったりす...
2月からずっと読み続けていたけど、途中震災やら引っ越しやらがあって止まった時期があった。 けどなんとか読了。 早い段階で気が付いたけど、名作。次郎の心理が深く描写されていて、登場人物もキチンと人間性が描かれている。そしてこの物語の中には悪人が一人もいない。誰かにとって悪だったりすることはあっても、万人に対しての悪役がいない。これが素晴らしい。間違ったり諭したりし省みたりしながら、みんな一生懸命それぞれと向き合っている。 次郎は自分のことを醜く浅ましいと思っているようだが、私はそうは思わなかった。下村氏自身も幼少の頃里子に出ており当時の経験を基に書いたらしい。だからだろうか、書き方が次郎の心理により気味なのは。下村氏自身が次郎に同化するあまり、醜く浅ましいと感じる部分を客観的に書けなくなったのかもしれない。 児童文学としても評価が高いとどこかで書いてあるのを読んだけど、児童には難しいんではないだろうか。 惜しむらくは未完であること。完結していたら名を残す程の名作になっていたに違いない。
Posted by
- 1
- 2