世界史上の聖徳太子 の商品レビュー
聖徳太子の研究で知られる著者が、インドや朝鮮半島、中国、チベットなどを訪ねて、聖徳太子の精神とのつながりをとらえなおす試みをおこなっている本です。 玉虫厨子の捨身飼虎図に魅かれて聖徳太子の研究にみちびかれたと、さまざまな著作のなかで語っている著者は、聖徳太子の精神の源流を追い求...
聖徳太子の研究で知られる著者が、インドや朝鮮半島、中国、チベットなどを訪ねて、聖徳太子の精神とのつながりをとらえなおす試みをおこなっている本です。 玉虫厨子の捨身飼虎図に魅かれて聖徳太子の研究にみちびかれたと、さまざまな著作のなかで語っている著者は、聖徳太子の精神の源流を追い求めてインドへ向かい、また聖徳太子の師である高句麗僧の慧慈の故郷を訪ねて北朝鮮にわたります。さらに中国では、遣隋使の派遣が東アジアの国際関係のなかでどのような意義をもっていたのかということを論じるとともに、煬帝との仏教を通じたつながりをあらためて見なおそうとしています。 著者は、名著『斑鳩の白い道のうえに』(講談社学術文庫)において、聖徳太子の「人間」にせまるというアプローチをおこないましたが、本書では聖徳太子の精神をひろく世界とのかかわりのなかで考えなおそうという姿勢が強く打ち出されています。ただ、その二つのアプローチのいわば中間に存在しているはずの、社会史的な観点が抜け落ちているようにも感じてしまいました。
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聖徳太子の当時の東アジア外交に関する「危機意識」について、本著は(鳩山的に)もっぱら「平和外交」との視点を外していない。隋も「開かれた国」であったそうだ。ともかく、著者は一昔前の教養主義的ヒューマニズムと戦後民主主義から外れることなく、見事に戦後日本的聖徳太子像を作り上げていく。...
聖徳太子の当時の東アジア外交に関する「危機意識」について、本著は(鳩山的に)もっぱら「平和外交」との視点を外していない。隋も「開かれた国」であったそうだ。ともかく、著者は一昔前の教養主義的ヒューマニズムと戦後民主主義から外れることなく、見事に戦後日本的聖徳太子像を作り上げていく。何よりも、85年に平壌訪問の際の一文はその著者の真面目であろう。かの「将軍さま」を「宗教的指導者ともいうべき天性」を感じるというからすごい。それもこれも平山大画伯の恩恵か?
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