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進化と人間行動 の商品レビュー

4.4

10件のお客様レビュー

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2022/02/05

では、配偶者防衛に端を発する、女性の行動のコントロールをしようとする傾向は、進化によって形成された男性の心理なのでしょうか? それは、わかりません。このような資源の独占と富の蓄積、男性間の繁殖の不平等がヒトの配偶システムを特徴づけるものとなったのは、少なくとも農耕と牧畜の発明以降...

では、配偶者防衛に端を発する、女性の行動のコントロールをしようとする傾向は、進化によって形成された男性の心理なのでしょうか? それは、わかりません。このような資源の独占と富の蓄積、男性間の繁殖の不平等がヒトの配偶システムを特徴づけるものとなったのは、少なくとも農耕と牧畜の発明以降であり、せいぜいここ1万年のことです。この1万年の間に、権力欲や配偶者防衛欲がどれほどであるかに関して、男性間につねに強い淘汰が働き、男性の脳の構造やホルモンの分泌のパターンが、権力欲や配偶者防衛欲に優れるように変わってしまっていたなら、遺伝的基盤のある心理と言えます。 しかし、「女性は多数の男性と性関係を持ちたがらない」という通念と同様に、家父長制的文化のもとで作り上げられているものにすぎないかもしれません。権力欲が強く、男性どうしで連合を組み、女性の行動をコントロールする男性が成功するという社会が長く続けば、男性は、毎世代、学習によってそのようなジェンダー・イデオロギーを身に着けるかもしれませんが、それが遺伝的な変化までは引き起こしていないかもしれません。いまのところ、これはどちらとも言えないでしょう。

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2020/04/05

適応行動論(履修してない)の教科書。人生トップレベルに面白かった本かもしれない。トンデモ理論や似非科学に惑わされない進化の捉え方を教えてくれる。メインとしては人間の知性も行動もまた進化の産物であるという視点に立って人間を説明していくパート。わかっていることもわかっていないこともあ...

適応行動論(履修してない)の教科書。人生トップレベルに面白かった本かもしれない。トンデモ理論や似非科学に惑わされない進化の捉え方を教えてくれる。メインとしては人間の知性も行動もまた進化の産物であるという視点に立って人間を説明していくパート。わかっていることもわかっていないこともあって面白い。また、人間研究は数多くの学術分野に関連して成り立っているんだなあと深く感じた。生物学と文化人類学・社会科学の対立が描かれたりもしてた。以下関連する分野を自分の思うままに挙げる。包含関係はあるけど面倒なので描かない。生物学、進化学、遺伝学、動物行動学、生態学、分子生物学、脳科学、心理学、認知科学はもちろん、文化人類学、社会科学、社会心理学、行動経済学、メディア論や言語学まで色々。教養という感じ。

Posted byブクログ

2018/12/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

学んだこと 適応度や、父親の不確実性など 不倫に関するダブルスタンダード 人間は遺伝子によって操られる? 遺伝子的には男は一夫多妻を望み、女は一夫一妻を望む。 それは、子供を残す適応力の違いからおこる。 しかし、一夫多妻となると、男性に不平等が生まれる。 現代社会では、女性が社会進出したが故に、女性が自ら生活することができるようになった。 また、男性は富の不平等がなくなったわけではないが、制度的には一夫一妻制なので、現代社会では性差が消えていくのは不思議ではない。 男が体が大きいのは女を支配するためではなく、男同士での闘いを勝ち抜くためである。 など 本について 少し学術的で読みにくいところもあるが、 内容はとても興味深く、面白かった。

Posted byブクログ

2018/10/13

これも古いけどよい教科書だな。社会生物学(論争)についてのパーソナルな視点からのコメントも多数あって参考になる。

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2022/05/16

人間行動の基盤に進化論が示唆する遺伝子的要素があるとは。行き過ぎた文化至上主義に対して、認識を改めてくれる。学術書であるため、気軽に読める本ではないが、噛みしめながら読み進めることで得られるものは多い。特に性差に関して。 ・文化には何でもあるというミードの研究は信頼性が低かった...

人間行動の基盤に進化論が示唆する遺伝子的要素があるとは。行き過ぎた文化至上主義に対して、認識を改めてくれる。学術書であるため、気軽に読める本ではないが、噛みしめながら読み進めることで得られるものは多い。特に性差に関して。 ・文化には何でもあるというミードの研究は信頼性が低かった。 ・「種」の保存の曖昧さ ・日本の家族のきょうだいと同じくらい、キブツの子ども同士はなじみが深くなる。近親婚回避の進化メカニズムから、キブツ出身者同士の結婚率は低い。 ・継子は実子に比べて、子殺しに合う危険性が最大40倍も高い。 ・一般に男性の免疫系は女性のそれより低い。男性ホルモンのテストステロンが免疫を阻害するから。 ・長子は他の順位の者より年代にして70年分、新理論の受容に保守的だった。現代の政治思想に対してもそうだ。※これは女性よりも男性の方がさらに顕著だろうな。 ・好き嫌いの感情は、互恵的なシステムが出現した後に、そのシステムを調整する上で重要な方法として進化した。 ・性淘汰の強さを決めるものは、親の投資(子育ての労力)と潜在的繁殖速度。 ・配偶者防衛 ・一夫多妻の傾向が強いほど、雄同士の争いが激しくなり、身体が雌に比べて大きくなる。 ・ヒトにおいて、ある程度の精子間競争が存在していた。 ・極端な形の一夫多妻制は、農業や牧畜の発明後、富の蓄積と分配の不平等が生じるようになったとに出てきたもので、ここ1万年の間の現象だと推測される。 ・生涯繁殖成功度の最大数は男性の方が大きく、ばらつきも大きく、生涯に一人も子を持たない確率は男性の方が高い。 ・進化心理学的にいえば、そもそもなぜ男性が権力を得たがるかの進化的理由は、それが繁殖成功度の増大に寄与したから。 ・少子化は人間行動生態学の大きな謎。 ・初潮年齢が低いほど、生涯出産数が増える。処女の高い評価は父性の確実性と関係。 ・自己主張しない女性がよいのも、男性から見た配偶者防衛の一つ。 ・いずれの国でも、男性は女性よりも性的関係に対して(父性の確実性)、女性は男性よりも心変わりに対して(親の投資)、強い苦悩を感じる。 ・生物の進化の歴史を考慮し、それぞれの生物がどんな問題解決をせねば生存して繁殖することができなかったかを考えれば、学習のメカニズムには異なるものがあり、それが行動ごとに、そして生物ごとに異なるのは当然。 ・言語には音声コミュニケーションという側面と、世界の認知という側面の二つがある。

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2015/06/20

動物の行動を、遺伝子進化論の立場から解説した本。 講義形式で様々な事象を解説。人間行動にまで踏み込んでいる点も非常に興味深い

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2018/11/25

進化は遺伝子の変化 進化は何によって起こるのか?自然淘汰 科学の理論は、どれも究極的には仮説であり、絶対に正しいと断言できるものなどない 行動は、からだの生理学的・生化学的反応と神経系の制御によって生じ、これらの反応の生成や、神経系の伝達の方向づけと速度、刺激に対する感受性...

進化は遺伝子の変化 進化は何によって起こるのか?自然淘汰 科学の理論は、どれも究極的には仮説であり、絶対に正しいと断言できるものなどない 行動は、からだの生理学的・生化学的反応と神経系の制御によって生じ、これらの反応の生成や、神経系の伝達の方向づけと速度、刺激に対する感受性の高さなどは、関与するタンパク質の種類と量によって変化する。その違いが、行動の違いを引き起こす。 行動も自然淘汰によって進化する 行動には、利益と同時になんらかの損失が伴うもの 安易に「種の保存」というような群淘汰を考えては道を誤る ヒトの心の進化を考える上では、先史学や人類学に加えて、他の動物との連続性を調べるアプローチが重要 葛藤状況が殺人にまで至るようなことは、主に非血縁者どうしで生じ、葛藤があったとしても、血縁者どうしが殺し合うことは実際には少ない ニホンザルやチンパンジー、ハトにも人間と同じ授乳に関する「おっぱい戦争」がある、つまり親と子の葛藤状況がある 日本では他の文化より血縁者を殺すことが多い 特に母親による嬰児殺し 日本の文化は母親に対して悪く作用する要素が多いため 親子の葛藤や出生順位が人格形成に影響を及ぼす可能性はそれなりにある どの文化でも程度の差はあれ、男性は女性よりも、権力に固執したり暴力的に振る舞ったりする傾向が強い 進化モデルと標準社会科学モデルがうまく統合できれば、新しい地図が出来あがるはず

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2012/03/23

 進化心理学の入門書。人間と他の生物とを比較しながら論じている。「生物の中のヒト(人間)」という一貫したスタイルを通しているようであった。著者の語り口が優しく、進化心理学、延いては生き物の素晴らしさ、神秘を伝えようとする熱意が感じられ、読めば読むほど惹きこまれていった。  進化心...

 進化心理学の入門書。人間と他の生物とを比較しながら論じている。「生物の中のヒト(人間)」という一貫したスタイルを通しているようであった。著者の語り口が優しく、進化心理学、延いては生き物の素晴らしさ、神秘を伝えようとする熱意が感じられ、読めば読むほど惹きこまれていった。  進化心理学の本は初めてだったこともあるが、本書を読んだことで世界観が大きく変わった。

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2010/02/17

教科書として購入。進化という視点から動物や人間の行動・心理について説明。とくに人間社会についての部分は面白い。わかりやすく解説してあるので、特に生物学の予備知識はいらないと思う。

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2009/10/04

かなり教科書的な本。 でも、進化心理学に興味があればそんなに頑張らなくても楽しく読める。 <メモ> ・進化=集団中の遺伝子頻度が時間とともに変化すること ・自然淘汰=偶然にランダムに生じてくるさまざまな変異のうえに、生き残るための競争が働いた結果、より環境に適した形質が残され、...

かなり教科書的な本。 でも、進化心理学に興味があればそんなに頑張らなくても楽しく読める。 <メモ> ・進化=集団中の遺伝子頻度が時間とともに変化すること ・自然淘汰=偶然にランダムに生じてくるさまざまな変異のうえに、生き残るための競争が働いた結果、より環境に適した形質が残され、そのような形質が集団中に広まるプロセス。 ・自然淘汰に目的はない ・進化は進歩ではない

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