定家明月記私抄 の商品レビュー
藤原定家の日記「明月記」の解釈本。熊野御幸について、定家の行動を参考にしようとしている。訓読本だけでは理解できないところがあり参考にしようと手に取ったが、残念ながらあまり参考にはならず。ただ定家の貧乏公家としての暮らしと、雅な歌とは別世界であるとの話は理解できた。
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気難しそうな定家の一生を、何気ない日常の繰返しから現代に蘇らせた著者の力を感じた。文章の力が平成、令和にときめく作家とは段違いに力強い。
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定家と堀田のズレが気になる。紅旗征戎非吾事と定家は述べるが、どれほど実際にせまっていたのだろうか。承久の乱ののちの言だとすれば、尚更である。定家は関係性の網目の中にいたはずである。紅旗も征戎も定家にとって吾が事であるはずである。後鳥羽院も院近臣も身近な存在である。単に戦乱の影響を...
定家と堀田のズレが気になる。紅旗征戎非吾事と定家は述べるが、どれほど実際にせまっていたのだろうか。承久の乱ののちの言だとすれば、尚更である。定家は関係性の網目の中にいたはずである。紅旗も征戎も定家にとって吾が事であるはずである。後鳥羽院も院近臣も身近な存在である。単に戦乱の影響を最小限に通り過ぎてきたに過ぎない。 堀田は戦時中に明月記と出会い、紅旗征戎非吾事の屹立に感銘を受けた。現実とのギャップに苦悩した。しかし、紅旗征戎非吾事は定家にとってすら、希望であったのではないかと思えてならない。紅旗征戎非吾事という理想を巡って定家と堀田が二方向から視線をむけている。決して二人は視線を向ける向けられるの関係ではかい。だからズレが気になるのだ。
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このタイトル、そして著者から想像するのは、普通は格調高い文学の香りがする内容だろう!見事に裏切り後鳥羽上皇の時代の実に乱脈極まりない{文化}が真面目に表現されているのだ。俊成・定家親子も数多くの女性と関係を持ち、30人近く子供がいて、後鳥羽もまた。フリーセックスのパーティーに狂乱...
このタイトル、そして著者から想像するのは、普通は格調高い文学の香りがする内容だろう!見事に裏切り後鳥羽上皇の時代の実に乱脈極まりない{文化}が真面目に表現されているのだ。俊成・定家親子も数多くの女性と関係を持ち、30人近く子供がいて、後鳥羽もまた。フリーセックスのパーティーに狂乱する帝王・後鳥羽。ビックリポン。これは白河、後白河もそうだった。なんと後白河の男妾だった関白藤原基通。それが別に乱れと認識されず、「好きもの」が普通だった時代。それからようやく鎌倉時代には真面目な時代へ移っていったそうだ。定家や当時の貴族たちの日記に描かれているのはそのような内容だった。そういった環境でも新古今の2000首を全て暗誦していたという後鳥羽は実に偉大!定家もまたしたたかな人物。
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前に枢密院議長のを読んだときも思ったけど,やっぱり日記(文学)とても楽しいなあ,というのを実感した一冊でした。今回の場合は,時代が離れていてそれに関する解説が随所にあったこと,平安〜鎌倉あたりの比較的好きな時代の話であったことも影響しているかもしれない。 ともかく楽しかったので,...
前に枢密院議長のを読んだときも思ったけど,やっぱり日記(文学)とても楽しいなあ,というのを実感した一冊でした。今回の場合は,時代が離れていてそれに関する解説が随所にあったこと,平安〜鎌倉あたりの比較的好きな時代の話であったことも影響しているかもしれない。 ともかく楽しかったので,続きの巻もまた読もうと思う。
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藤原定家の日記『明月記』を辿りながら、定家自身の鬱屈や葛藤、その周辺で起きた様々な出来事や事件、そして平安末から鎌倉時代にいたる激動の時代のうねりを堀田善衛が定家氏に寄り添いながら生き生きと、まさにその息吹が伝わってくるかのように描いた秀作。堀田善衛の書きっぷりが軽妙でとても読み...
藤原定家の日記『明月記』を辿りながら、定家自身の鬱屈や葛藤、その周辺で起きた様々な出来事や事件、そして平安末から鎌倉時代にいたる激動の時代のうねりを堀田善衛が定家氏に寄り添いながら生き生きと、まさにその息吹が伝わってくるかのように描いた秀作。堀田善衛の書きっぷりが軽妙でとても読みやすく面白かった。 日記中の有名な一節「世上乱逆追討耳ニ満ツト雖モ、之ヲ注セズ。紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ。」(世の中では反乱・追討の話ばかりが聞こえてくるけれど、あえてこれを記載しない。軍隊がどこに出征しようと私の知ったことではない。)を、堀田自らの大戦時の心境になぞらえ、戦争という時代背景と出征の予感におののきながらも文学追求の想いを重ね合わせたという。 実際、日記を辿る中で、遅々として進まない昇進への羨望と落胆、新古今和歌集編纂という文学最高峰への携わりと後鳥羽上皇からの面倒くさい口出し、最高峰へ達したが故に迫る大衆化というデカダンスとの距離意識、後鳥羽の精力的な乱痴気騒ぎや主家である九条家の(定家にとっての)無策ぶり、荘園横領などによる貴族としての貧乏生活、そして定家自身の様々な病気での苦しみなど、定家の嘆息と憤慨が明らかにされてくるにつれ、定家自身の狷介な性格とともに庶民とも上流貴族ともかけ離れた中流貴族の悲哀を見事に現代のわれわれに伝えてくれている。 定家が関わった西行や鴨長明論、それにリアル感がない故に美麗で、また往古の和歌の本歌取りを多分に取り込んだという新古今の芸術論をところどころに散りばめながら、堀田の芸術評論の書としても興味深かった。 本書では、定家19歳で源平争乱の口火を切る治承四年から48歳の承元元年までを取り上げる。
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明月記本文を触れている貴重な本。 時々作者の体験とかが前に出て来て、その項数を明月記に割いてくれって言いたくなる事がしばしばあった。
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漢文体で書かれていて、読むのが難解な明月記を、逐一解説。 載っている和歌の文学的解説、書かれている記事の歴史的背景も幅広く解説してくれる一冊。 続編もどうぞ。
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手に取る前はお堅い本かと思っていたら、 著者自身も言うように 「平安時代の週刊誌」のよう。 日記の部分を声に出して読むと、気分倍増。
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