ミルクシャワー の商品レビュー
まだ絵も話も発展途上な2作目
全6話(8編)の短編に嗜虐性を誘われる被虐的な巻頭カラー(4頁)と巻末モノクロ(6頁)のイラストという構成の本作は、前作にしてデビュー作『サディスト』に比べて設定やストーリー展開に一定の方向性、その兆しが見え始めた内容である。冒頭の【10年目の告白】と【その年の夏】は、ノスタルジ...
全6話(8編)の短編に嗜虐性を誘われる被虐的な巻頭カラー(4頁)と巻末モノクロ(6頁)のイラストという構成の本作は、前作にしてデビュー作『サディスト』に比べて設定やストーリー展開に一定の方向性、その兆しが見え始めた内容である。冒頭の【10年目の告白】と【その年の夏】は、ノスタルジックな雰囲気漂う片田舎を舞台に、過去の出来事から今を見つめるヒロインや主人公の物語になっている良作である。深い想いをぶつけ合う激しい情交シーンがあるのだが、費やされた頁が少なく、割合あっさり終えてしまうのが残念である。サンタクロースも人手不足ということで派遣された少年サンタがショタコンな姉と失恋したばかりの妹の元へやって来たばかりにイタズラされてしまう【クリスマスプレゼント】は珍しいコメディ作品。少年サンタのムスコがご立派過ぎるあり得なさはご愛敬。ここまでの比較的優しい作品とは打って変わって次の【奈落(前後編)】は、タイトル通りの絶望的で無慈悲で救いの無い話である。夫の性癖に我慢出来ず手にかけてしまったヒロインが、夫の弟からも同様に酷く嬲り者にされる展開で、その結末は「1人も2人も同じ」という破滅的なものである。さて、ここで本作が特徴的なのは、グリム童話で有名な『シンデレラ』と『赤ずきん』をそれぞれシリアスで淫猥な物語に仕立て直した作品があること。シンデレラの王子様が物凄い悪役だったり、赤ずきんを襲う狼がまんま狼男だったりと、原作の設定を旨く歪めて面白い話にしている。ただし、本作全体として、まだ発展途上な画風と情交描写の演出不足によりイマイチ盛り上がりに欠けるのが残念でならない。
DSK
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