無面目・太公望伝 の商品レビュー
人生で一番回数読んだマンガじゃないのかな。なぜ繰り返し読んでしまうのかはわからない。諸星先生だったらもっとおもしろいのは他にあるような気はするのに。
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この本には『無面目』と『太公望伝』という二つの作品が収録されている。 僕は、少し前に読んだ、宮崎哲弥と呉智英の対談本『知的唯仏論』の中で『無面目』の話題が出てきたので興味を持って購入してみた。 もともと諸星大二郎ファンで以前は本が出るそばから買っていたのだが、ここ最近はご無沙...
この本には『無面目』と『太公望伝』という二つの作品が収録されている。 僕は、少し前に読んだ、宮崎哲弥と呉智英の対談本『知的唯仏論』の中で『無面目』の話題が出てきたので興味を持って購入してみた。 もともと諸星大二郎ファンで以前は本が出るそばから買っていたのだが、ここ最近はご無沙汰だった。 諸星氏による中国に題材を取った作品は、好きなものもあるが、どちらかというと面白みよりも小難しさの方が気になってこれまで敬遠しがちだった。 だから本作もこれまで手を出さずにいたのだけれど、読んだ今となってはなんて馬鹿なことをしちまったんだと後悔しまくりだ。 『無面目』は、のっぺらぼうの思索の神さまである混沌がとある仙人に目、鼻、口、耳を描かれたことで顔を得て、そのせいで欲や死への恐怖といった神とは本来無縁な人間的感情を持ってしまうというお話。 もともとの題材は『莊子』の中にあるごく短い話でそれを諸星流に膨らませたものだという。 呉智英氏も指摘していたが、『莊子』中の題材でありながら、どういうわけか釈迦の教えの一番根幹に当たるようなところをズバッと突いた話になっている。 図らずも、なのか、図ったのかはわからないが、こういうところが諸星大二郎の面白さのひとつだろう。 『太公望伝』はもともと購入の目当てではなかったのだけれども、結果的にはこちらの方が好みだった。 僕だけでなくおそらくほとんどの人にとってここに描かれた太公望の姿は自分自身として読めるものだと思う。 ここに描かれているのは後に太公望と呼ばれることになる呂尚が、自由を求めて放浪する物語だ。 いったい呂尚は何から自由になろうとしているのか。 最近『007』を撮ったサム・メンデスの代表作『アメリカン・ビューティー』もそうだったが、人が最終的に望む自由とは自分自身の欲望からの自由なのだ。 この物語は呂尚が太公望として社会的成功を得る直前で終わってしまう。 しかし、それも道理で、自分自身の欲から自由になった呂尚にとって成功などどうでもいいことなのだ。 これもまた仏教の深いところに共通することだと思う。
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諸星大二郎の2つの中編「無面目」と「太公望伝」を収録。 どちらの作品も古代中国の時代を扱っている。 「無面目」は天窮山で思索に耽って瞑想する混沌(宇宙の智の象徴)が瞑想から目覚め、人間界に干渉しはじめたことから起こる混乱を描く。 この作品の読みどころは、悠久の時を瞑想に費やし...
諸星大二郎の2つの中編「無面目」と「太公望伝」を収録。 どちらの作品も古代中国の時代を扱っている。 「無面目」は天窮山で思索に耽って瞑想する混沌(宇宙の智の象徴)が瞑想から目覚め、人間界に干渉しはじめたことから起こる混乱を描く。 この作品の読みどころは、悠久の時を瞑想に費やしていた混沌が、人間界に降り立つことで、様々な欲に染まっていく下り。 食欲・性欲・支配欲など、無垢な仙人が人間界のあらゆる欲とであっていくあたりがコミカルに描かれる。 この、混沌が、当時の最高権力者である、漢の武帝に仕えたあたりから、物語は急展開。 欲にまみれた権力闘争の中で、仙人であった混沌が干渉しはじめることで争いの炎が大きくなり、混乱を深めていく。。。 人間の欲が、世界の智の一部である混沌をも狂わせてしまうあたりで、象徴的に表しているのが、中国皇帝の統治における正当性である。 中国の皇帝は天から支配される権限を与えられた役職であるから、天の意思を反映しているともいえる。 この天から委任された皇帝の前に於いては、宇宙の智を司る混沌をもってしても抑えられないばかりか、宇宙の智自体の軸がゆがみ、あらゆる混乱を招くという世界観が興味深かった。 また、古代中国王朝周の時代を描いた「太公望伝」は、若い頃に奴隷であった時代から晩年までを描いた力作。 この作品では、太公望は「羌族」出身者であったと描かれており、中国の多彩な民族ドラマの一端を垣間見させている。 釣りによって、斉の国を釣ったと言われる太公望であったが、その精神世界に何があったかをドラマチックに描いているのがこの作品である。 若き日の太公望は、釣りの途中龍を釣る夢を見る。 この龍を釣ったという手応えが、太公望の人生を変える契機となる。 もう一度龍を釣るために、世界を巡り龍と出会う旅にでるのであった。 太公望を漂泊のヒーローとして捉えているあたりが、非常に素晴らしかった。 この物語の読みどころは、ラストにあります。 それは、太公望の釣った龍は、なんだったのか?という一点に尽きるのです。 世界の大意か? 自分の運命を変える契機か? それとも捉えきれていない自分自身か?。。。。。 一気に駆け抜ける壮絶のラストスパートは、物語の垣根を取り払い、読み手を風速50m級の物語の嵐へと巻き込んで行きます。 絵的に好き嫌いのある作家だとは思いますが、どちらの作品ものめり込んで一気読みできました。 久々に読んだ漫画ではありましたが、かなり充実した読書体験でした。
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北方「史記武帝紀 一」を読了した勢いで何度目かの読み直し。 諸星作品の中でも最も好きな作品の一つです。 北方史記ではまだ若々しい武帝も「無面目」では年老いて猜疑心の虜。 衛青の一族もこういうオチになるのね・・・。 皇帝言うのはエライもんですなあ〜良くも悪くも・・・。
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「無面目」は「荘子」の一寓話で、「太公望伝」は呂尚の話。いずれも時代考証が大変だっただろうなぁと思わせる作品。
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