紅い花(文庫版) の商品レビュー
やはり『紅い花』に魅せられます。また、本書はノスタルジックな短編が多く、個人的に好きな話がギュッとまとまっている印象を受けました。『ほんやら洞のべんさん』なんか特に好きです。なにかが起こりそうな適度な緊張がありながら、ゆったりと着地する最後の一コマの情趣がすばらしいです。芥川龍之...
やはり『紅い花』に魅せられます。また、本書はノスタルジックな短編が多く、個人的に好きな話がギュッとまとまっている印象を受けました。『ほんやら洞のべんさん』なんか特に好きです。なにかが起こりそうな適度な緊張がありながら、ゆったりと着地する最後の一コマの情趣がすばらしいです。芥川龍之介の『蜃気楼』あたりを思い出します。あとやっぱり梶井基次郎。
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紅い花の叙情的で郷愁を誘うその世界は、何とも言えない独特な感情を呼び起こさせる。それは暖かく、優しく、そして悲しい、そんな気持ちにいつもさせてくれる、私にとって大切な作品です。
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代表作とされる「紅い花」「李さん一家」「もっきり屋の少女」を含む13編を収録。 ’影’の表現が素晴らしい。 直接的に感情を口にする場面はほとんど見られないが、陰影や微妙な表情のゆらぎ、情景で心模様を描き分けている。 表題作「紅い花」は夏の陽が注ぐ深緑、川や滝の流水音・蝉...
代表作とされる「紅い花」「李さん一家」「もっきり屋の少女」を含む13編を収録。 ’影’の表現が素晴らしい。 直接的に感情を口にする場面はほとんど見られないが、陰影や微妙な表情のゆらぎ、情景で心模様を描き分けている。 表題作「紅い花」は夏の陽が注ぐ深緑、川や滝の流水音・蝉の声が耳目に鮮やか。そして現れる紅い花。初潮を迎えたサヨコと、それを目の当たりにしたシンデンのマサジの心の変化が描かれる。 「李さん一家」はただただ怖い。どこからともなく鳥語を話せる李さんが現れ、いつの間にか家の二階に住み着き、特に何をするでもなくそこにいる。最終的にどうなるかと言えば「実はまだ二階にいるのです」で終わり。いや、怖すぎる。 「通夜」はブラックジョークと不謹慎の塊のような作品。死んでしまったら尊厳も何もない、おしまい。という事かな。 「海辺の叙景」は大人の男女のささやかな恋模様を表情・情景と影の表現で描いた作品。心情を直接的にはセリフに一切出さずとも繊細な心の揺れまでが伝わってくる。ボート小屋の対比で恋の始まりの予感と終息の気配を。ラストシーンの曇天、雨の中暗い海で泳ぐ男の表情は伺えないが、別れに落胆する寂しさを見開きの構図で描写。女の「いい 感じよ」というセリフが余韻を残す。 「西部田村事件」「ニ岐渓谷」「ほんやら洞のべんさん」は旅先の土地で暮らす人々の風土・習俗を生き生きと描いている。 続く「女忍」は一転、時代劇。復讐の緊張感や昏さ、忍びの動きが余す所なく活写されている。 50〜60年代の学生青春劇「古本と少女」。主人公があれこれ悩む様子を俯瞰・バックショット等多彩なカメラワークで捉えている。 「もっきり屋の少女」は貧しい農村に暮らす「みじめ」な少女・チヨジの姿があんまりにも切なすぎる。闇に吸い込まれる男のエールも虚しい。 「やなぎや主人」「庶民御宿」は闇が濃い作品。人間の業や欲を抉る。どちらかと言えば後期の作品か。 「近所の景色」には画風や線にはっきりと変化が見られる。今ひとつテーマがとらえにくいが、時代の移ろい・街並みの変化により「貧しげでいずれは朽ち果ててしまいそうだが、自然のぬくもりが感じられ」(p292)た風景が失われていくことへの述懐のような気持ちが込められているのではないか。 読み応えがすごい。 濃密かつ風化知らずの名作品集。 26刷 2021.9.18
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つげ義春氏の作品『紅い花』を読了。 前々から気になってた漫画家さんです。 台詞と漫画の描写が芸術的だなー。 特に大好きなストーリーは・・”海辺の叙景”がGood!!
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『海辺の叙景』のラストの見開きにしびれた。薄暗い海を背景に、やみくもにどこまでも泳いでいけるような全能感(恋をしたときのようなそれ)を書いて表現してしまえる才能よ。『ねじ式』を読んだときより、収録された各短編の出来の差を感じた。(あくまで個人的な感性によるものだが。)ほどよく官能...
『海辺の叙景』のラストの見開きにしびれた。薄暗い海を背景に、やみくもにどこまでも泳いでいけるような全能感(恋をしたときのようなそれ)を書いて表現してしまえる才能よ。『ねじ式』を読んだときより、収録された各短編の出来の差を感じた。(あくまで個人的な感性によるものだが。)ほどよく官能的であるのも、いうまでもなく素晴らしい。
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つげ義春は外れなく全短編がよいなー。 特に「海辺の叙景」は解説で糸井重里が絶賛するとおり、大傑作。 言葉で語られることのない「愛」や「恋」や「憧れ」が、まさに絵で、漫画で、描かれていた。 またそれとは逆に、好色な男女(特に顔つきや太めの体)を描かせると天下一だ、とも改めて思...
つげ義春は外れなく全短編がよいなー。 特に「海辺の叙景」は解説で糸井重里が絶賛するとおり、大傑作。 言葉で語られることのない「愛」や「恋」や「憧れ」が、まさに絵で、漫画で、描かれていた。 またそれとは逆に、好色な男女(特に顔つきや太めの体)を描かせると天下一だ、とも改めて思う。 つげ義春って実は色ものではなくものすごく絵が巧いのではないか、と今回にしてようやく気付く。 ▼第1話/紅い花▼第2話/李さん一家▼第3話/通夜▼第4話/海辺の叙景▼第5話/西部田村殺人事件▼第6話/二岐渓谷▼第7話/ほんやら洞のべんさん▼第8話/女忍▼第9話/古本と少女▼第10話/もっきり屋の少女▼第11話/やなぎや主人▼第12話/庶民御宿▼第13話/近所の景色
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約20年振りに買い直しました。 数年に一度位で読み直したくなるのが、つげ義春作品。特に探していたという程ではないが、安価で落ちていたので、購入。 思春期の少年少女を描いた、表題作「紅い花」はとにかく大好物。次いでは「もっきり屋の少女」。ホッコリ系「古本と少女」もイイ。 全体...
約20年振りに買い直しました。 数年に一度位で読み直したくなるのが、つげ義春作品。特に探していたという程ではないが、安価で落ちていたので、購入。 思春期の少年少女を描いた、表題作「紅い花」はとにかく大好物。次いでは「もっきり屋の少女」。ホッコリ系「古本と少女」もイイ。 全体的にはお得意の旅情モノ多目。ソコに「李さん一家」「女忍」等々の変化球をおりまぜた印象。 様々な意味での、ココに流れてるユルい、でも、遡れない時間感覚。ソレを欲した時に、また開くんだろうなぁ……。
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色が思い出せない。 夕べみた<夢>みたいに、全てが曖昧で、 でも、 曖昧じゃない、ってどういう事なのか。 それすら良くわからなくなってくる。 モノトーン色の濃いつげさんの作品は、 このじっとりと絡んで来る世界感がたまらない。 影の中に身を潜めて、 読み終わったら、また夢を見...
色が思い出せない。 夕べみた<夢>みたいに、全てが曖昧で、 でも、 曖昧じゃない、ってどういう事なのか。 それすら良くわからなくなってくる。 モノトーン色の濃いつげさんの作品は、 このじっとりと絡んで来る世界感がたまらない。 影の中に身を潜めて、 読み終わったら、また夢を見る為だけに眠りたい。そんな感じ。 『紅い花』の収録作品は、 古い写真に写っている子供の、『今はおじいさんだけど』 正体はとりあえず、わかる作品が多い。 (こんな表現も曖昧すぎではありますが…。)
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短編集。いい。最高。 物語に絶妙に紛れ込ませてある嘘に柔いところをこっそり切られているようだ。 「じめじめ」「うじうじ」ではなく「こそこそ」「ひっそり」しているのがつげ義春の良いところだなあと思う。どの話も内省的で秘密に満ちみちていて強烈に惹きつけられる。これから何が起きるの...
短編集。いい。最高。 物語に絶妙に紛れ込ませてある嘘に柔いところをこっそり切られているようだ。 「じめじめ」「うじうじ」ではなく「こそこそ」「ひっそり」しているのがつげ義春の良いところだなあと思う。どの話も内省的で秘密に満ちみちていて強烈に惹きつけられる。これから何が起きるのか本当に楽しみになる。 旅シリーズも好きだが、ガロ的な空気が濃密な『海辺の叙景』や『やなぎや主人』などが特に気に入った。『やなぎや主人』の始まり方なんてもう最高じゃないか。
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話の切り取り方がとてもよい。人物の描写もよい。地方の宿の主がよくでてくるのだけど、老婆だったり宗教にはまった女房の実家から鯉を盗む男だったり… 全体的になんか諦めが漂うような、でも絶望的ではないような。
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